ニューヨークフィルムアカデミーの撮影プロジェクト7 同時録音ワークショップ(Workshop)

ニューヨークフィルムアカデミーの撮影プロジェクト7
同時録音ワークショップ(Workshop)

ここではニューヨークフィルムアカデミーの撮影プロジェクト、同時録音ワークショップ(Workshop)について紹介します。

このワークショップではいよいよ同時録音の撮影の練習をします。1月から始まったFilmmakingコースの3月上旬です。

セリフや音楽などの音声は多くの場合、映像と同様に映像作品の重要な要素ですが、最初のうちの練習プロジェクトではあえてセリフや初期の頃は音楽さえ使わないでストーリーを表現してきました。映画はビジュアルメディアであり、ストーリーはキャラクターの行動を通して見せるべきで、セリフで説明してしまうと途端につまらなくなります(経験済み)。

そのため、映像で伝えることから始めるのは映画学校のカリキュラムとして重要だと思います。また、セリフの録音はそれなりの技術が必要なため、撮影の難易度の面でも音声なしの練習から徐々に難易度を上げていくのは適切だと思います。

 

今回はいつものグループと異なり、6人ずつの2チームに分かれます。同時録音をするためにより多くの人数が必要になるためだと思います。

ユニバーサルスタジオのバックロットで、自分達を被写体に、自分達で考えたストーリーを撮影します。今回はインストラクターがつきます。

カメラはPanasonic HMCで、HDサイズ、カラーで撮影します。道具類は三脚、ACキット、マイクです。マイクはブームポールと呼ばれる棒の先端に取り付け、担当者がブームポールを持ち、マイクが映らないギリギリの位置に保持して声、セリフを録音します。後のプロジェクトではレコーダーを使うようになりますが、今回はマイクはカメラに接続して録音します。

照明器具は使いません。屋外ロケーションの練習プロジェクトのためだと思います。ロサンゼルスは天気のいい日が多いため撮影がしやすく、これはハリウッド(ロサンゼルス)で映画産業が発展した理由の一つです。

 

しかし実のところ音声の録音に関しては、ロサンゼルスはあまりいい環境ではありません。

普段の生活では聞く必要のあることに脳が勝手に集中しているため気にしていませんが、旅行でも日常でもカメラで何か映像を撮影したときの音声をヘッドフォンで確認してみると、場所に関わらず実は普段から様々な環境ノイズに囲まれていることに改めて気付きます。風の音、人の声、車の音、電車の音、飛行機の音、エアコンや冷蔵庫の音などです。映画の場合観客は映画館でなくても小さい音も聞くため、ロサンゼルスの街中や通常の屋内(アパートなど)で撮影する場合はかなり気を使うことになります。車社会のため屋外はもちろん屋内でも場所によっては頻繁に車の音が聞こえ、飛行機だけでなくヘリコプターもしばしば飛んでいるためです。それらを気にしつつ、飛行機、ヘリコプター、バイク、大型車などの通るときは、通り過ぎるのを待って撮影します。

また、撮影は比較的大人数であることが多く照明器具は熱を持ちます。ロサンゼルスは気候がよく気温も高めで特に夏は屋内であれば窓を開けるかエアコンをつけることになりますが、実際の撮影中はノイズ対策で窓を閉めエアコンを止める必要があるため、室温が上がり劣悪な環境になる場合があります。

そうやって苦労して撮影してもノイズはあるので、編集時にノイズリダクションしたり、余分な音は丁寧に消していく必要があります。余分な部分だけ音を消してしまうとそこだけ全くの無音になり違和感が出ることがあるため、各ロケーションの撮影時、通常はシーンを撮影後に役者やクルーに音を出さないでもらい、数十秒間ルームトーンと呼ばれるその場所の環境音を録音しておきます。編集時に余分な音を消す時は、その前後の環境音だけの部分かルームトーンの録音音声から環境音を一部コピーしてはめ込み、前後となじませ違和感をなくします。

後半のプロジェクトになれば撮影時にルームトーンは撮っておきますが、実際に音声の編集まで丁寧にやるかどうかは学生次第です。

MFA Filmmakingコースの概要はこちらの投稿をご覧ください。