ドキュメンタリー風ホラー映画『THE 4TH KIND フォース・カインド』の感想(ネタバレあり)

実話か作り話か? ドキュメンタリー風ホラー映画『THE 4TH KIND フォース・カインド』の感想と考察(ネタバレあり)

ここでは、実話か作り話か不明で非常に怖いドキュメンタリー風ホラー映画『THE 4TH KIND フォース・カインド』(2009)に関して、フォースカインドの意味、この映画が実話か作り話かについて、そして感想を書こうと思います。

『THE 4TH KIND フォース・カインド』のストーリー(あらすじ)

心理学者の女が、奇妙な睡眠障害をもつ患者に催眠療法でその時の様子を思い出させるが、ある人は恐怖でパニックを起こす。彼女自身の録音テープから、自分も同じ経験をしていることを知り異星人による接触や拉致ではないかと思い始める一方、警察からは逆に催眠が原因ではないかと疑われ監視下に置かれるが、警官が監視する家から娘が失踪する。

ストーリー(やや詳細版)
アラスカの都市ノームに住む、同業の夫を自殺で亡くしたが殺されたと思っている心理学者の女が、睡眠障害と奇妙でおぼろげな記憶を持つ患者が複数いるため催眠療法でその時の様子を思い出させるが、ある人は恐怖でパニックを起こし、その後家族を巻き込んで自殺してしまう。彼女自身の録音テープにも記憶にない自分の悲鳴と謎の言葉を話す自分以外の声も入っており、異星人による接触や拉致ではないかと思い始めシュメール文明の専門家の協力を得る一方、警察からは逆に一連の事件は催眠が原因ではないかと疑われ監視下に置かれるが、警官が監視する家から娘が失踪する。

フォースカインドの意味

「フォースカインド」は第四種接近遭遇の意味で使われています。

映画中で、以下のように説明されます。
第一種接近遭遇は、UFOの目撃
第二種接近遭遇は、UFOの痕跡の目撃
第三種接近遭遇は、異星人との接触
第四種接近遭遇は、異星人による拉致

第一種から第三種までの接近遭遇の分類は、天文学者でありアメリカ空軍とのUFO調査計画に参画したジョーゼフ・アレン・ハイネック博士の1972年の書籍、The UFO Experience: A Scientific Inquiryでの分類によるもので、第四種以降は他の人の手によって定義されているとのことです。(ウィキペディアより) 

UFOなどに関心があったり上記の分類を知っている人は、この映画が「異星人による拉致」の話だとタイトルからわかるわけですね。

『THE 4TH KIND フォース・カインド』は実話か作り話か?

この映画はドキュメンタリー風に作られています。

実際の出来事に基づいているとして、ところどころ「実際の映像」と演技の映像を並べています。

「実際の映像」として、この映画の監督がアメリカのチャップマン大学でこの映画の主人公である心理学者の女性へインタビューをしたとする映像と、彼女が患者へ催眠療法を行っている時に撮影したとする、患者に起こった衝撃的な異変の様子がノイズ混じりで記録されている映像が使われています。

 

しかしネット上にはこの映画はフィクションだとする情報が見られます。

テロップで示されているチャップマン大学は実在し、チャップマン大学を構成する大学の1つであるドッジ映画メディア芸術大学(Dodge College of Film and Media Arts)は、『THE 4TH KIND フォース・カインド』の監督であるオラトゥンデ オスンサンミの出身校です。大学側はこの映画がフィクションであると認識した上で、この映画内で大学の名前(ロゴ)を使うことを許可したとのことです。

チャップマン大学のコミュニケーションディレクターへのこの件の取材記事
https://www.ocweekly.com/news-how-chapman-universitys-logo-got-a-cameo-in-the-fourth-kind-6469077/

また、この映画の製作会社であるユニバーサル・ピクチャーズは、映画の宣伝のためにフェイクニュースを流したことを認めたとのことです。(ウィキペディアより)しかしウィキペディアのこの記述の参照先の記事は削除されているようです。

 

一方、主演のミラ・ジョボビッチは、関係者に実際に会うことはできなかったものの、これが真実であると信じているようです。

参照記事(2009)
https://eiga.com/movie/53917/interview/

真偽はさておき謎の失踪エリアとしてはバミューダトライアングルが有名ですが、アラスカもたくさんの人が失踪しているエリアとして有名なようです。

アラスカ州のウエブサイトにはアラスカ内で報告された行方不明者の事件を追跡をする部門のページがあります。
https://dps.alaska.gov/AST/ABI/MissingPerson

実際FBIも失踪事件の捜査をしたようですが、アルコールと極寒の気温が原因であると判断したとのことで、ノーム市長によると、この映画がSFスリラーだと認識すべきと考えているようです。

参照記事
https://edition.cnn.com/2009/SHOWBIZ/Movies/11/06/fourth.kind.real/

 

仮にこの「実際の映像」が作り物だったとしたら、そこに写っている当人その他の人物は役者ということになりますが、その演技はメインの役者達をしのぐほどです。

2020年にアメリカ国防総省が、過去にアメリカ海軍の航空機が撮影した不審な飛行物体の映像を、正体は未確認だとして正式に公開して話題になりました。その後アメリカ政府は、これらが宇宙人の乗り物だとする証拠はないと発表したとのことですが、いずれ、地球外の生命の存在について明らかになっていくかもしれませんね。

批評家の評価は低く、観客の評価も低めだが個人的には面白かった

映画やテレビドラマなどについて批評家と観客の評価とレビューを掲載しているウエブサイトRotten Tomatoesによると、この映画の批評家の評価は低く観客の評価も低めですが、個人的には面白かったです。

オカルトホラーの代表作ともいえる『エクソシスト』は批評家の評価も観客の評価も高いのですが、私は『THE 4TH KIND フォース・カインド』の方がよくできている面があると感じました。

▶︎オカルトホラー映画の代表作『エクソシスト』の感想についてはこちらの投稿をご覧ください。

事実に基づいているとして「実際の映像」を並べる手法をとっていて、これが真実である前提で見ていることに影響されていると思いますが、内容が怖いだけでなく、映画としても面白いです。

ストーリーが明確で、登場人物の役割も明確です。

心理学者であるアビーは恐怖体験の当事者になる中で警察からは逆に疑われ、自分の精神科医としてのアイデンティティや、母親としての信頼を脅かされるうえに、娘が失踪してしまう苦悩がうまく表現されています。

仕事仲間は、彼女を心配しつつも、そこで起きていることが真実とすることには懐疑的でなかなか受け入れられず、その複雑な心境がうまく表現されていると思います。

警察の視点では、失踪など不可解な事件を解決できないでいる中、アビーが催眠療法をした人物が家族を巻き込み自殺をしたり、麻痺状態になったりしており、催眠療法がきっかけになっているのは間違いないため、アビーに疑いをかけ、それをやめさせようとするのは自然で、その様子がうまく表現されていると思います。

「実際の映像」を並べずに作り話として映画を作ったとしても十分面白い、怖いストーリーだと思います。

むしろ、批評家や観客の低評価は、映画内やマーケティング上で、これが「実際の出来事に基づいている」という演出をしたことにあるのかもしれません。