『トップガン マーヴェリック』の監督にジョセフ・コシンスキーが起用された理由の考察

『トップガン マーヴェリック』の監督にジョセフ・コシンスキーが起用された理由の考察

『トップガン マーヴェリック』は、海軍エリートパイロット養成学校「トップガン」の優秀だが無鉄砲な若いパイロットの功名心と挫折、友情や恋を描いた『トップガン』(1986)の36年ごしの続編で、様々な面で見どころにあふれた映画だと思います。

▶︎『トップガン マーヴェリック』の見どころと感想についてはこちらの投稿をご覧ください。

ここでは『トップガン マーヴェリック』の監督にジョセフ・コシンスキーが起用された理由について考察したいと思います。

ジョセフ・コシンスキー監督が起用された理由

『トップガン・マーヴェリック』の監督がジョセフ・コシンスキーだと知ったとき、少し驚きました。実力のある監督ですが、テイストが違うように感じたからです。しかしよくよく考えると、このキャスティングには理由があり、それは成功したと感じます。

私の想像ですが、ジョセフ・コシンスキー監督起用の理由は以下の点です。


●過去に初監督作で、28年ぶりの「続編」を興行的に成功させた

●過去にトム・クルーズ主演で乗り物の飛行シーンがある作品を興行的に成功させた

 

また、コシンスキー監督はトム・クルーズに「すべての空中シーケンスを空中で撮影する」などのアイディアや考えをプレゼンし、GOが出たとのことです。

前作『トップガン』の後、プロデューサーの一人と監督が亡くなった

前作『トップガン』ではドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーが共同でプロデューサーを務めましたが1996年にドン・シンプソンが亡くなり、『トップガン マーヴェリック』ではトム・クルーズもプロデューサーとなっていますが、ジェリー・ブラッカイマーは企画の初期からプロデューサーを務めています。

『トップガン』の監督は、『スパイ・ゲーム』(2001)、『デジャヴ』(2006)、『アンストッパブル』(2010)などでも知られるトニー・スコットで、リドリー・スコット監督の弟ですが、2012年に亡くなっています。

『トップガン』の続編については最初ジェリー・ブラッカイマーとトニー・スコットに話があり企画は進行していたようですが、彼が亡くなりしばらく休眠状態になってしまったようです。

その後ジョセフ・コシンスキーが監督を勤めることが発表されました。

ジョセフ・コシンスキー監督

コシンスキー監督は、CG黎明期の映画『トロン』(1982)をもとに、コンセプトイラストレーターのダニエル・サイモンを起用してライトサイクルをリデザインするなどスタイリッシュなCG映像で再構築した続編『トロン: レガシー』(2010)や、共同で執筆したグラフィックノベルをもとにして、再びダニエル・サイモンを起用してバブルシップ(球体をつなげた架空の小型の乗り物)をデザインし、撮影用に実物大模型まで用意した『オブリビオン』(2013)など、デザインのバックグラウンドを持つ監督らしくデザインにこだわりCGも多用したスタイリッシュな映像を得意としています。

『オブリビオン』はトム・クルーズが主演を努め、架空の乗り物の飛行シーンもあるスタイリッシュな映像の映画ですが、メイキング映像では、乗り物の実物大模型の完成時に見にきたトム・クルーズが乗り込み感銘を受けている様子も見られます。

『トロン: レガシー』は評論家の評価は高くないものの(Rottentomatoesより)、製作費1億7000万ドル、興行収入約4億ドルで(Wikipediaより)、28年ぶりの「続編」で興行的に成功しています。

『オブリビオン』も評論家の評価は高くないものの、製作費1億3000万ドル、興行収入約2億8617万ドルで、興行的に成功しています。(Wikipediaより)

そういった経験・経歴が、『トップガン・マーヴェリック』の監督としての起用につながっているのではないかと想像します。

さらに、ジョセフ・コシンスキー起用の発表との前後関係は分かりませんが、ジェリー・ブラッカイマーから脚本の初期草案を受け取ったコシンスキーは、その時点では続編制作に前向きではなかったトム・クルーズに「すべての空中シーケンスを空中で撮影する」などのアイディアや考えをプレゼンし、すぐにGOが出たとのことです。

出典
The pitch that changed Tom Cruise’s mind about Top Gun: Maverick

確実に進化しているジョセフ・コシンスキー監督

今回は時折見られる構図のかっこよさに「デザイン」的部分は見えますが、リアルにこだわるトム・クルーズらしく戦闘機のシーンも俳優が実際に搭乗して撮影するということで、あまり「デザイン」や「CG」一辺倒には出来ない中、シンプルで骨太なドラマをきっちり描いています。

コシンスキーらしさを出しつつも、ジェリー・ブラッカイマーやトム・クルーズとのコラボレーションで、より大規模で複雑なプロジェクトを成功させ、コシンスキー監督の進化も感じることができます。