ニューヨーク フィルム アカデミーの授業内容 1年目概要

ニューヨーク フィルム アカデミー(New York Film Academy略してNYFA)
MFA Filmmakingの内容 2年のコースの1年目

アメリカの映画学校は実際にはどういう授業をするのか、学校のウエブサイトを見ても具体的な内容がわからないと思います。以下は私が実際にニューヨーク フィルム アカデミーでやった内容です。主に自分の記憶とメモに基づくため一部正確でない可能性もあります。

省略用語の説明

NYFA : New York Film Academy(学内で一般的な省略用語)
PW : Production Workshop(学内で一般的な省略用語)

DR : Director
AD : Assistant director
DP : Director of photography
AC : Assistant camera

 

学生映画での基本的な役割分担(仕事内容)の説明

DR : Director :
監督。撮影時には、DPと絵作りの相談をし、役者に演技をつけ、ADの進行の元で撮影を監督します。学内のプロジェクトでは自分でストーリーを考え、役者やロケーションを確保し、事務処理もし、編集もします。

AD : Assistant director :
撮影進行。前日にコールシート(役者、スタッフのリスト、集合時間、集合場所、撮影内容の簡単な説明の書かれた事前案内)を作成し関係者へ配布/メールし、撮影時には現場進行をします。学内のプロジェクトではDigital Production Workshopあたりから本格的に役割を担います。

DP : Director of photography :
撮影監督。絵作りの責任者。照明を監督し、カメラの位置や動き、レンズ、絞りの決定を行います。プロフェッショナルの大規模な撮影ではカメラオペレーターは別にいますが、学内のプロジェクトでは実際の撮影も行います。

AC : Assistant camera
カメラの組み立て、セッティング、レンズ交換、距離計測、スレート(カチンコ)、セッティングの記録など、カメラに関する補佐をします。

Gaffer
ライティングのチーフ。ライティングに関するあらゆることでDPを補佐。学内のプロジェクトでは照明器具のセッティングも行います。

Grip
Cスタンド、フラッグ、ドリーをはじめ、あらゆる道具類、サポート用品を取り扱います。

Sound
映像制作でのSoundには様々な側面がありますが、学内の撮影プロジェクトでSoundと言えば、撮影時の録音係ということになります。

▶︎アメリカの映画業界のさらに詳細な役職と仕事内容に関してはこちらの投稿をご覧ください。

プログラム概要

NYFAのカリキュラムは、教室での講義形式の授業、ワークショップ、そして実際の撮影プロジェクトによって成り立っていますが、総じて実践的で、徐々に難易度が上がっていく撮影プロジェクトを進めるために必要なことを、その前の授業で学んでいく印象です。撮影日(最初は概ね土日)に向けて、脚本、監督術、機材の使い方、ワークフロー、編集(ソフトウエアの使い方を含む)などを学びます。

授業後の時間を使い、宿題のほか、撮影用のストーリーを考え、役者やロケーションを確保し、必要に応じてパーミッションを取ったりする必要があるので、以下の記録の日付を見てわかるように非常にタイトなスケジュールです。役者が確保できなかったり必要な事務手続きの時間がとれなかったりするとかなりストレスとなります。状況によって撮影日をずらす必要に迫られても、スケジュールの中で自分達でやりくりしなければなりません。前半は同じチームで撮影します。編集はFinal Cut Pro 7を学びますが、自宅でその他のソフトで編集する人もいます。ただNYFAの授業はその後AVIDへ移行していくようです。

 

セメスター1の授業とワークショップ(カッコ内は自分の解釈による訳)

Film Aesthetics I A(監督術)
Film Aesthetics I B(監督術)
Cinematography I(撮影技術)
Digital Editing I(編集)
Digital Production Workshop(デジタルカメラ撮影ワークショップ)
Screenwriting I(脚本)
Acting for Directors(アクティング)
Critical Film Studies I(映画研究)

 

撮影プロジェクトの種類(PW含む。時期の早い順)
 

撮影の練習。4人のチーム(DR、DP、AC、Actorが基本的な役割分担。自分のクラスは当時11人のため3チーム)を組み、グリフィスパークにて自分達を被写体にフィルムカメラで撮影の練習。露出を変えて撮影。後日授業で確認。

インストラクターあり。

カメラ:ARRIFLEX 16mm(フィルムカメラ) 後日720 480でデジタイズ(学内の専門の部署に依頼する)

道具類:三脚、ACキット(露出計、テープ、カチンコなどを入れた箱)

その他条件: 照明器具なし。モノクロ。音なし。

NYFAのアクティングの学生(学校側から割当てられる)を被写体とした撮影の練習。前回と同じチーム(今回はDR、DP、AC、ADが基本的な役割分担)でユニバーサルスタジオのバックロット(屋外撮影用地)にてフィルムカメラで撮影。2日間それぞれ午前と午後に分け、チームメンバーがそれぞれ順番に自分で考えた簡単なシーンを半日使って監督し、他のメンバーはクルーとなる。編集後、後日授業で講評。

インストラクターあり。

カメラ:ARRIFLEX 16mm 後日720 480でデジタイズ

道具類:三脚、ACキット

その他条件:レンズ(10mm、25mm、50m)を変えて同じシーンをワンカットずつ撮影する。照明器具なし。モノクロ。音なし。

自分で考えた簡単なシーンを監督する。引き続き同じチーム(DR、DP、AC、Gafferが基本的な役割分担だが、まだ撮影内容がシンプルなためみんなで助け合う。DRがADも兼ねる。以下の撮影でもしばらく同じ)で、2日間それぞれ午前と午後に分け、チームメンバーがそれぞれ順番に半日使って監督し、他のメンバーはクルーとなる。事前にNYFAのアクティング学生とのお見合いがあり、自分で出演依頼する。ロケーションも自分で確保する。自分のアパートで撮影する学生がほとんど。編集後、後日授業で講評。

撮影時インストラクターなし。

カメラ:ARRIFLEX 16mm 後日720 480でデジタイズ

道具類:三脚、ACキット、照明器具

その他条件:ワンカットのみ。モノクロ。音なし。

複数カットを撮影し編集する(シームレス)。引き続き同じチームで、2日間それぞれ午前と午後に分け、チームメンバーがそれぞれ順番に自分で考えた簡単なシーンを半日使って監督し、他のメンバーはクルーとなる。役者、ロケーションは自分で確保。引き続き、NYFAのアクター、自分のアパートでの撮影がほとんど。編集後、後日授業で講評。

撮影時インストラクターなし。

カメラ:ARRIFLEX 16mm 後日720 480でデジタイズ

道具類:三脚、ACキット、照明器具

その他条件:撮影は1人6時間まで。モノクロ。音なし。

音と合わせた映像を作る。引き続き同じチームで、2日間それぞれ午前と午後に分け、チームメンバーがそれぞれ順番に自分の作品を半日使って監督し、他のメンバーはクルーとなる。役者、ロケーションは自分で確保。編集後、後日授業で講評。

撮影時インストラクターなし。

カメラ:ARRIFLEX 16mm 後日720 480でデジタイズ

道具類:三脚、ACキット、照明器具

その他条件:複数カットを撮影し音楽に合わせて編集する。モノクロ。

10分までのセリフなしの作品を作る。引き続き同じチームで、チームメンバーがそれぞれ順番に自分の作品を監督し、他のメンバーはクルーとなる。10日間の期間(2013.2/15〜2/24)で、一人につき2日間の撮影。役者、ロケーションは自分で確保。編集後、後日授業で講評。

撮影時インストラクターなし。

カメラ:Panasonic HMC(HDサイズデジタルカメラ)

道具類:三脚、ACキット、照明器具

その他条件:HDサイズ。撮影はカラーだがモノクロで提出。セリフなし。編集時に音楽等をつけて完成させる。

同時録音の撮影の練習。6人ずつ2チームに分かれ、ユニバーサルスタジオのバックロットにて、自分達を被写体に、自分達で考えたストーリーを撮影する。

インストラクターあり。

カメラ:Panasonic HMC

道具類:三脚、ACキット、ブームマイク(カメラに接続して録音)

その他条件:照明器具なし。HDサイズ。カラー。

事前に渡された短い脚本を監督する。一見つながっていないかのようなセリフがつながるように、セリフは脚本のままでストーリーを考え、事前のクラスでプレゼン。6人のチーム(DR、DP、AC、AD、SOUND、Gafferが基本的な役割分担)で行う。ここでのSOUNDはブームポールを持つ録音係である。チームメンバーがそれぞれ順番に半日使って監督し、他のメンバーはクルーとなる。役者、ロケーションは自分で確保。このワークショップではADが編集し、後日授業で講評。

インストラクターあり。

カメラ:Panasonic HMC

道具類:三脚、ACキット、照明器具、ブームマイク(カメラに接続して録音)

その他条件:HDサイズ。カラー。

自分で考えた短いシーンを、二つ(二人の登場人物それぞれ)の視点から監督、撮影する。

4人のチームで、2日間それぞれ午前と午後に分け、チームメンバーがそれぞれ順番に半日使って監督し、他のメンバーはクルーとなる。役者、ロケーションは自分で確保。編集後、後日授業で講評。

撮影時インストラクターなし。

カメラ:Panasonic HMC

道具類:三脚、ACキット、照明器具、ブームマイク(カメラに接続して録音)

その他条件:HDサイズ。カラー。

セメスター1の締めくくりの10分までの作品。クラスメートがクルーとなる6人のチームが基本だが、シネマトグラフィーの学生に参加してもらったり、外部のスタッフを雇う学生もいる。10日間の期間(2013.04/14〜4/23)で、一人につき2日間の撮影。役者、ロケーションは自分で確保。編集後、後日ユニバーサルスタジオ(アミューズメントパーク内ではない)のシアターで上映する(1回のみ。希望者はゲストを呼べるが、一般公開ではない)

撮影時インストラクターなし。

カメラ:Panasonic HMC

道具類:三脚、ACキット、照明器具、ブームマイク(カメラに接続して録音)

その他条件:HDサイズ。カラー。

 

セメスター2の授業とワークショップ(カッコ内は自分の解釈による訳)

前半
Film Aesthetics II(監督術)
Producing I(プロデューシング)
Cinematography II(撮影技術)
Digital Editing II(編集)
Screenwriting II(脚本)
Synchronous Sound Recording(サウンドレコーディング)
Synchronous Sound Production Workshop(同時録音撮影ワークショップ)
35mm Filmmaking Workshop(35mmフィルムカメラワークショップ)

後半
Intermediate Film Post Production(イヤー1フィルムのポストプロダクション)
Feature Screenplay I(長編ストーリー開発)

 

撮影プロジェクトの種類(PW含む。時期の早い順)
 

カメラとは別のレコーダーによって音声を録音する撮影のワークショップ。ドリー(カメラ位置を移動させるための台車)も利用する。事前に自分のアイディアをプレゼンし、インストラクターが選考し、選ばれた人(学生の半分)がそれぞれ1日使って監督する。他の半分の学生もいずれかの撮影でDPとなる。それ以外の撮影にもクルーとして参加する。

役者、ロケーションは自分で確保。編集後、後日授業で講評。

インストラクターあり。

カメラ:RED SCARLET(4Kや最近では6Kまで対応したデジタルムービーカメラ)又はARRIFLEX 16SR3 フィルムカメラ

レコーダー:Edirol-44

道具類:三脚、ACキット、Cスタンド、照明器具、ブームマイク、ワイヤレスマイク、アップルボックス(日本でいう箱馬)、フラッグ(照明の光量を加減するための枠に張られた布)、ドリー他

その他条件:HDサイズ。カラー。

フィルムカメラによるワークショップ。監督希望者は事前に申し出、二人が選ばれる。それぞれ1日使って撮影。他の学生はクルーとして参加する。後日授業で講評。

インストラクターあり。

カメラ:PANAFLEX Super35 / 3perf

道具類:三脚、ACキット、Cスタンド、照明器具、アップルボックス(日本でいう箱馬)、ドリー他

その他条件:音なし。カラー。

1年の締めくくりの15分までの作品。プリプロダクションから撮影、ポストプロダクションまで実際の小規模映画制作に沿った行程で行われる。

まずプリプロとしては、授業中のディスカッションを参考にしつつ脚本を練り、ショットリストやオーバーヘッド(撮影計画上面図)などディレクティング面でのプリプロをし、プロデュースワーク(主にペーパーワーク)も重視される。これはYear1の撮影に限ったことではないが、パーミッションを取る手続き、保険加入の手続き、ユニオンに所属する役者を使う場合は所定の事務手続きが必要となる。その他小規模映画撮影に必要な事務処理をし、撮影前にリストどおりに書類などを揃え、インストラクターのグリーンライト(撮影許可)を得る必要がある。役者のオーディションをし、テーブルリード(本読み)も行い、ロケーションも自分で確保するほか機材のためのトラックやドライバーの確保も必要となる。学生によってはサウンドステージ(撮影スタジオ)をレンタルし、セットを発注する。

クルーは引き続きクラスメートだが、自分で役割の依頼をするほか、ほとんどの場合プロデューシングやシネマトグラフィーの学生に参加してもらい、外部のスタッフを雇う学生もいる。(自分のストーリー、予算、考え方次第)。約3ヶ月間の期間(2013.8/7〜10/29)で、一人につき1週間が割り当てられ、たいていの場合3-4日間で撮影する。撮影ではインストラクターなしだが見に来る場合がある。自分の撮影以外にも5つ以上のプロジェクトにクルーとして参加する必要あり。

撮影後はまた授業の中で助言をうけつつ編集を練っていく。編集後、完成作品は後日ワーナーブラザーズ内のシアターで上映する(1回のみ。希望者はゲストを呼べるが、一般公開ではない。)

カメラ:RED SCARLETを基本としてフィルムカメラやCANON 5Dを選ぶこともできる。

レコーダー:Edirol-44

道具類:三脚、ACキット、Cスタンド、照明器具、ブームマイク、ワイヤレスマイク、アップルボックス、フラッグ、ドリー他。シネマトグラフィーの学生が参加する場合、KINOライトも使用可能。

その他条件:4Kで撮影しても提出・上映はHDサイズ。

 

実際の撮影(プロジェクト)の記録(PW含む。時期の早い順)

2013.01.10授業開始

2013.01.15 (火) Camera test 参加した。

2013.01.17 (木) PW1 in backlot自分の撮影。もう一人の撮影にクルーとして参加した。

2013.01.19 (土) Mise en Scene Film自分の撮影。もう一人の撮影にクルーとして参加した。

2013.01.21 (月) Mise en Scene Film クルーとして参加した。

2013.01.25 (金) Continuity Film自分の撮影。もう一人の撮影にクルーとして参加した。

2013.01.26 (土) PW2 in backlotクルーとして参加した。

2013.01.27 (日) Continuity Filmクルーとして参加した。

2013.02.02 (土) Music Film自分の撮影。もう1人は撮影日変更した。

2013.02.03 (日) Music Filmクルーとして参加した。

2013.02.15_16 (金、土) Non Sync Filmクルーとして参加した。

2013.02.17,19 (日、月) Non Sync Film自分の監督作品の撮影。

2013.02.22 (金) Non Sync Filmクルーとして参加した。

2013.02.23_24 (土、日) Non Sync Filmクルーとして参加した。

2013.03.02 (土) Workshop クルーとして参加した。

2013.03.08 (金) DPW A自分の撮影。

2013.03.22 (金) DPW Bクルーとして参加した。

2013.03.23 (土) POV1自分の撮影。もう一人の撮影にクルーとして参加した。

2013.03.24 (日) POV2クルーとして参加した。

2013.03.27 (水) DPW Cクルーとして参加した。

2013.04.11_12 (木、金) Semester1クルーとして参加した。

2013.04.14_15 (日、月) Semester1クルーとして参加した。

2013.04.16_17 (火、水) Semester1クルーとして参加した。

2013.04.18_19 (木、金) Semester1クルーとして参加した。

2013.04.20_21 (土、日) Semester1自分の監督作品の撮影。

2013.04.22_23 (月、火) Semester1クルーとして参加した。

2013.06.06 (木) Sync Sound PW1クルーとして参加した。

2013.06.14 (金) Sync Sound PW2クルーとして参加した。

2013.06.22 (土) 35mm Filmmakingクルーとして参加した。

2013.06.23 (日) 35mm Filmmakingクルーとして参加した。

2013.06.27 (木) Sync Sound PW3 クルーとして参加した。

2013.07.05 (金) Sync Sound PW4 クルーとして参加した。

2013.07.10 (水) Sync Sound PW5クルーとして参加した。

2013.07.20 (土) Sync Sound PW6クルーとして参加した。

2013.08.07_08 (水、木), 10_11 (土、日) year1 クルーとして参加した。

2013.08.12 (月), 17 (土)_19 (月) year1クルーとして参加した。

2013.08.30 (金)_09.01 (日) year1クルーとして参加した。

2013.09.06 _07 (金、土) year1クルーとして参加した。

2013.09.13 (金)_16 (月) year1クルーとして参加した。

2013.10.02_03 (水、木), 05 (土) year1自分の監督作品の撮影。

2013.10.10 (木)_12 (土) year1クルーとして参加した。

2013.10.16_17 (水、木) year1クルーとして参加した。

2013.10.19_20 (土、日) year1クルーとして参加した。

2013.10.23 (水)_25 (金), 29 (火) year1クルーとして参加した。

2013.10.26 (土)_28 (月) year1クルーとして参加した。