イラストレーターを本業としつつも個人のVTuberとして人気のしぐれういさん(以下敬称略)が2023年9月10日に投稿したMV「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」の再生(視聴)回数が2024年6月18日に1億再生を超えました。
【オリジナル楽曲】粛聖!! ロリ神レクイエム☆ / しぐれうい(9さい)
https://youtu.be/Ci_zad39Uhw?feature=shared
ここでは、なぜイラストレーターが本業のVTuberしぐれういのMVの再生回数が1億回を超えたのか考察します。
なお、当ブログ形式のサイトでは、キャラクター名には概ね敬称をつけず、本名や芸名などには文脈や流れによって敬称をつけたりつけなかったりしています。
「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」の歌詞は、ロリバージョン(少女の姿)のしぐれうい(後述)が気持ち悪い大人たちを罵りながら粛清する内容です。
曲と歌自体は以前からあったようですが、ランドセルを背負った9歳設定の女の子(ロリバージョンのしぐれうい)がキレのよいダンスをしながらバキュンと撃つ仕草をしたりビームを撃って粛清する様子を表現したキャラクターアニメ調のMVが2023年9月10日にYoutubeに投稿されました。
9歳は「救済」とかけているようです。
このMVがバズりました。
世界的なヒットをした音楽アーティストのMVの再生回数が1億再生を超える例は比較的見られ、日本の歌手/音楽アーティストのMVが1億再生を超える例もそれなりにありますが、トップクラスであることは確かです。
しかもしぐれういは本業はイラストレーターでVTuberの活動は趣味だと言っており、歌手活動というかこのMVは特に、その趣味であるVTuber活動の一環と言えると思います。
似たような立ち位置の人は他にもいますが、しぐれういの場合は様々な要素の相乗効果でこの結果になっていると感じます。
大枠では、本人のキャラクターや配信内容の面白さによる「本人の魅力と人気」と、配信内容と関連しつつも「MVの特徴そのもの」のバズり要素が影響していると思います。
しぐれういは人気VTuber事務所の一つであるホロライブのタレント「大空スバル」の絵師(イラストレーター)であり、その大空スバルの勧めがきっかけとなってVTuber活動へとつながったようです。
配信の同接数や動画の再生数、チャンネル登録者数の獲得に苦しむ個人勢のVTuberは多いと思いますが、しぐれういの場合はホロライブのタレントとコラボをする機会もあり、もちろん、イラストに魅力があり依頼されたからそこにつながっているわけですが、結果的に知名度や活動に圧倒的なアドバンテージがあります。
2024年6月22日現在チャンネル登録者数は187万人となっています。
しかし「大空スバルのイラストレーターだから」というだけが人気の理由でないのは明らかで、彼女ならではの様々な特徴・魅力が人気を下支えしていると感じます。
一つは声の質です。かわいい親しみやすい声は聞いていてストレスがなく、キュルキュルした笑い声も特徴的です。これによって後述するリスナー(視聴者)への塩対応や暴言とのギャップも生まれ面白さにつながっていると同時に、暴言を吐いてもイヤな雰囲気にならない良さがあります。
基本はですます調で話し、「最近知ってくださった方」など、丁寧な話し方をします(ギャップもあり-後述)。たまに滑舌が悪くなるのも親しみやすさに繋がっています。
声にも現れているのですが声とは異なる部分として、メンタルの安定感があると思います。
VTuberの中には、もともとの資質のほか様々なプレッシャーもあるためかメンタルがやや不安定なタレントも見られ、それも特徴になってはいるのですが、メンタルが安定していると安心して見ていることができます。
しぐれういはメンタルの安定感と声の質、話し方が相まって、人柄もよく感じます。自称「バーチャル16歳」ですが、ある程度の年齢になってこそ出てくるメンタルの安定感かもしれません。
「最近知ってくださった方」にも自分がどんな人物かをイラスト込みで時々説明していますが、そのことで新しいリスナー(視聴者)にとって入りやすく、置いてけぼりにならずにファンになりやすさに結びついていると思います。
イラストレーターでありながらVTuberとしても活動をしたり、歌の動画を出したり、様々な人とコラボをしたり、フットワークの良さ、ノリの軽さを感じます。
彼女は配信内(アーカイブもされる)でしばしば自分の説明をしており、「しぐれうい(VTuber)誕生のあらすじ」の説明からもフットワークの良さが感じられます。
自分がデザインを担当した大空スバルからコラボ配信に誘われ「いいよ〜ん」(説明内での表現)と二つ返事をして静止画イラストの立ち絵(写真と表現)を使ってコラボをしたこと。
さらにまた大空スバルから「母ちゃんが動いてるとこみた〜い」と言われ「いいよ〜ん」と返事し、動くしぐれういが生まれ初配信をしたこと。
「裏方が表に出てくる罪悪感みたいな気持ちはありつつもVTuberは昔からすごく好きだったから、自分がその世界に入れる嬉しさはちょっとあった」と語っています。
さらにまた大空スバルなどから3Dになればいいのに〜と言われ、「いいよ〜ん」と3D化したことも語っています。
ちなみにVTuber界隈では絵師(キャラクターのデザイナー兼イラストレーター)をママ(大空スバルはしぐれういを母ちゃんと呼ぶ)、Live2Dモデラー(元のイラストを可動式にする制作者)をパパと表現するようです。
ネットの時代になって、360度型というかマルチなクリエーター活動(歌をベースにしつつもイラストも描きVTuberもやるなど複数の分野の活動)をする人が増えましたが、しぐれういもそういった流れの中にあると思います。
ノリよく様々なことに足を突っ込む部分と個人勢としてしっかり締める部分のバランスがいいと感じます。安定感にもつながります。
世界的な人気VTuber事務所であるホロライブも基本的には全年齢対象だと思いますが、衣装などに性的アピールが要素としてデザインされているタレントも比較的多いです。
しかししぐれういは自分の性的アピールとは無縁で注意深く全年齢対象にしており、むしろかわいい女好きであることをしばしば述べています。女性を描くイラストレーターとしての資質につながっているとともに、VTuberとしての間口を広げていると思います。
垣間見えるおたく性が面白いバランスになっています。
全年齢を対象にしているものの、リスナーからのマシュマロ(メッセージ)やコメントへの塩対応や、暴言を吐くことがあるのも特徴ですが、かわいい声や安定したメンタルによって雰囲気が悪くならず、ネタとして楽しめます。
もう一つのネタとなっている「しぐれうい(9さい)」(ロリバージョンのしぐれうい)も通常のしぐれうい同様リスナーへの塩対応をしたり暴言をはいたりし、定番ネタとなり、それが今回のMVにつながっています。しぐれうい自身ではあるものの本人は「あいつ」と言って少し敵対視しているのが面白いです。
インターネットを通してVTuberとしての活動を見ているせいかもしれませんが、上記の様々な特徴・魅力によって「近所の親しみやすい愉快な(楽しい)お姉さん」感があります。
・趣味とはいえほぼ毎週投稿
彼女はイラストレーターが本業であり、VTuber活動は趣味とのことですが、それでもほぼ週1回配信をしており、本人の活動としてもリスナー(視聴者)の視聴としてもちょうどよいバランスなのだと思います。
・定番の配信バリエーション(ネタ)
雑談配信、イラストを描く配信、リスナーから募ったキーワードで自分自身の夏服や冬服を描く配信、ゲーム配信、正月配信、リスナーからのメッセージを塩対応でさばいていく配信などのほか、ロリ化(少女の姿でのネタ配信)、ういビームネタ(後述)、リスナー達が勝手に名乗るリスナー名、なかなか出来上がらないLineスタンプなど、配信中に偶然生まれたこともどんどん定番ネタとしていき、安定感があります。
かなりゲームが下手だと認識されているホロライブのさくらみことゲーム勝負をして負けるなど、ゲームの下手さもネタとなっています。
さらにそれだけにとどまらず、歌を発表したりグッズを販売したり、個人勢とは思えない自己プロデュース力です。
数年の活動の中で配信やVTuber活動について研究し身につけていった部分はあると思いますが、それ以前に、前述のフットワークの良さ、ノリの軽さで様々なことに足を突っ込む性質が活かされていると感じます。
余談ですが、イラストを描く配信については、絵を描くことに集中するとおしゃべりが止まることについて「お絵描き配信は虚無る(きょむる)」というように表現し、避けようともしているようですが、個人的にはその虚無配信もアリだと感じています。自分が何か作業をしている時のBGM代わりに動画を流しておく時は、動画の内容がにぎやかだったり情報量が多いと気が散って自分の作業に集中できないため、しぐれういの「お絵描き配信」で、BGMだけが聞こえる時間も多い中で時々本人がしゃべる声が聞こえるのは、こちらの作業のBGM代わり、BGVとしてちょうどいいです。
・一見(一聴)テンポの良い楽曲
楽曲はアニメソング的なテンポのいい曲で、声の可愛さも活かされています。
・女の子がキレキレに踊るアニメの出来が良かった
女の子「しぐれうい(9さい)」がキレキレに踊るアニメが非常にクオリティー高かったことが、さらなる展開につながっています。この動画制作は外注してイラストとアニメーションはががめさんが制作しています。
・歌ってみた、踊ってみたの文脈で使われた
まずは歌ってみた、踊ってみたの文脈で様々な人にカバーされ、通常の人気の広がり方をします。
・ロリういというネタ
少女が周りの大人達を気持ち悪がり罵倒する物騒な内容ですが、それも自身の配信内でのネタから来ています。
海外のリアクションを見ると、「テンポがいい楽曲で女の子のダンスも出来がいい」ことと「少女が周りの大人達を気持ち悪がり罵倒する」内容のギャップに良くも悪くも「やられて」しまっているようです。
・ういビームというネタ
古き良きヒーローが光線を放つ時に発する「○○ビーム」というかけ声になぞらえた「ういビーム」という表現が配信内で生まれ、それを言わせたいホロライブの角巻わためやリスナーと、絶対に言いたくないしぐれういのやり取りも定番ネタになっていますが、このMVは「しぐれうい(9さい)」として表現しており、ういビームを映像化しているのもファンの歓喜ポイントではないかと思います。
・アニメ部分が一人歩きし、ミーム化して世界中でバズった
女の子のダンスアニメが素材として元の曲から離れ、Memphis Cultのラップ曲「9mm」に合わせられミーム化し、世界中でバズりました。このことは、元のMVの1億再生超えにかなり影響したと思います。
「9mm」の曲調やギャング的な世界観を歌うスラングの多いその歌詞の内容と女の子のアニメに「ギャップ」と同時に「親和性」があり、中毒性が合ったことなどが要因だと思います。
▶詳しくはこちらの投稿をご覧ください
ミーム化して世界中でバズる、しぐれういの「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」は、争いの絶えない世界への救済となるのか?
「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」は、イラストレーターでありながらVTuber活動もして歌も出すしぐれういのマルチ活動をベースに、本人の特徴やネタを盛り込みつつ女の子がキレキレのダンスをするアニメーションの出来が良かったことと、それが通常の人気の広がり方を超え、想定外のミーム化をして世界中でバズったことで1億再生を超えたと思います。
これには偶然の相乗効果の側面もあるため、狙って再現できるものではないと感じます。