コミック【推しの子】のあらすじの紹介、感想・考察の4回目です。
目の中に星があるキャラクターデザインとピンク色を基調とするコミックの表紙の印象は実のところこのマンガの要素の一部で、全体としては「転生ファンタジーアイドル芸能恋愛ドラマ復讐サスペンスミステリー」とも言える多ジャンル・多要素・多層的な内容です。
●コミック①-④巻のあらすじ、印象的なセリフ、ストーリー全体の感想・考察①
●コミック⑤-⑧巻のあらすじ、印象的なセリフ、ストーリー全体の感想・考察②
●コミック⑨-⑫巻のあらすじ、印象的なセリフ、ストーリー全体の感想・考察③
●コミック⑬-⑯巻のあらすじ、印象的なセリフ、ストーリー全体の感想・考察④(今回)
各回の「ストーリー全体の感想・考察」は、必ずしもその回で紹介するあらすじとはリンクせず、文字通り「ストーリー全体の感想・考察」をテーマごとに分けて書いたものです。全体のネタバレを含みます。
・感想概観(①)
・基本情報 主要登場人物(①)
・多ジャンル横断で多要素・多層的(多レイヤー)(①)
・多ジャンル(①)
・多要素(①)
・多層的(多レイヤー)(①)
・推しの子 ダブルミーニング+α(①)
・見の表現 黒目の中の星(②)
・復讐劇(②)
・三角関係(四角関係)(② )
・さりな、ゴロー、アイ、アクア、ルビーの年齢と年齢差について(②)
・原作者と脚本家の対立と協業(②)
・コミックの表紙の変化(② )
・アニメ(② )
・原作コミックとアニメ版の違い(② )
・アクアが手を差し伸べたこと、助けたこと(③ )
・伏線と回収(③ – 今回)
・シリアスとコミカルのバランス(③ )
・「ヘタな演技」の表現方法(③ )
・モノローグによるコミュニケーション(③ )
・時間軸の操作(③ )
・ストーリーに違和感もある(③ )
・なぜカミキヒカルはアイのファンの青年をそそのかしてアイを脅すよう仕向けたのか(③ )
・アクアとルビーがアイの子供だと知っていた人物はいるか?(③ )
・アクアとルビーの父親は誰か知っていた人物はいるか?(③ )
・全てを俯瞰する謎の少女、ツクヨミ(④ – 今回)
・日本語の使い方に厳密な部分とカジュアルな部分がある(④ – 今回)
・MEMちょのカチューシャ(④ – 今回)
・ストーリーはどこまであらかじめ決めてあったのか? どこまでが創作でどこまでが実体験なのか?(④ – 今回)
・作者の年齢(④ – 今回)
・結末について(④ – 今回)
投稿後、内容の修正・更新や構成の変更をする場合があります。
各巻のあらすじの後に印象的なセリフも紹介します。
印象的なセリフは、主に2つの種類があります。一つは「人や社会に対しての捉え方として興味深いもの」。もう一つは「このストーリーにおいて重要な意味を持つもの」です。個人的な疑問点や何らかの補足のあるものもピックアップしてあります。
ここからもまだアニメ化されていない部分です。(2026年放送予定)内容を知らない状態で第3期を見たい人は読まないことをお勧めします。
天童寺家(ルビーの前世さりなの両親と、現在の子供たちが暮らす家)の前まで何度も訪れたことを回想するルビー、チャイムを押して何度も言おうとした。「お母さん私だよ」って。
例の謎の少女(ツクヨミ)、さりなの一生を説明する。
4歳の時に重い病気が見つかり、10年生きられる可能性は1割にも満たない。地元で一番立派な病院に預けられ、母親は悲しみを誤魔化す様に仕事に没頭し、現実からそして娘からも目を逸らす様になった。少女の容態は悪くなる一方。苦しい日々を支えたのはアイドルアイの存在と、話し相手になってくれたゴロー。亡くなる日も母親は来なかった。母親はさりなが亡くなってすぐに新たに娘と息子を産み、今は幸せに暮らしている。
ルビー泣く。お母さんは私を愛してなかったことを分かってた。だから私はママ(アイ)に代替を願った。私に関わった人は皆不幸になる。
ルビー、ベッドに突っ伏し、神様、なんで私なんかを生まれ変わらせたの?、と独り言。その様子を見ているアクア。
アクアの回想、研修医だった頃のさりなとのやり取り。アイドルを夢見るさりなと、それを応援するゴロー。
過呼吸?になるルビーをアクアが気遣う。ルビー「アクアの手なんて借りない!!」私がアイドルをやる理由は、もっと上り詰めてママとせんせを殺した奴を見つけ出し仇を取る為だと言う。お前は復讐なんて考えないで生きろと言うアクアに、今更お兄ちゃん面(づら)はやめてよと言う。
アクア、さりなとして語りかける。ルビー「もしかしてそうなの?貴方はせんせーなの?」アクアがせんせー(ゴロー)の生まれ変わりとわかり、抱きついて泣くルビー。
しかし、このときのアクアの目は黒い星があり、表情はさめている。
どうして言わないでいたのか問うルビーに、確信が持てずにいたと言うアクア。『B小町』のアイドルを名乗れば見つけてくれると思って頑張ってきたと言うルビー。ママとせんせーの無念を晴らさなきゃって、ひどい事沢山した、沢山嘘をついた。アクア「お前はお前の人生を生きろ。嘘なんてつかなくて良い」あの時の君はアイよりずっと眩しかった、と言うアクア。ルビーの左目に白い星が現れる。
その様子をカラスが見ている。例の謎の少女(ツクヨミ)の独り言「良かったね。これでルビーは立ち直って君の計画通り映画は作られるだろうさ」「君からしたら、嫌われてた方が楽だったはずなのに」
顔を洗うルビー(おそらく泣いたから)。
独り言「信じるからねお兄ちゃん。あの日貴方が推してた子はママよりもっと輝けるって」(ルビーの左目に白い星がある)あと、あの言葉忘れてないからね。16歳になったら結婚してくれるって言ったよね?せんせ?私もう16歳になったよ?キラキラするルビー。
アクアにベタベタするルビー、それを見て「何があった!!」と叫ぶかな。「どうしたその距離感!ベッタベタ過ぎでしょうが!!」ルビー「今反動が来てる・・・」
ルビーのスケジュールと仕事量の管理に悩むミヤコ社長。鏑木プロデューサーからは、実力が足りていないので稽古や撮影の期間は特に仕事量の調整をするよう言われている。アクアからは代理店の天童寺(さりなの母親。ミヤコはもちろん転生の事は知らない)をルビーに近づけないようにと言われる。考えることは多い。
ミヤコがバーで泣き言を言っているところへ壱護が来る。壱護逃げるがミヤコ捕まえる。
ミヤコの回想。東京へ出てきてレベルアップしながら夜の仕事やキャンペーンガールをしたが、大学を卒業したあたりから社長連中からパーティに呼ばれる機会が減り、そんなとき壱護に、ウチで働くかと言われ、この世界で一番煌めく景色を見せてやる、とプロポーズされる。
回想から戻る。勝手に逃げやがって!私はまだ諦めてないのに、と不満をぶちまけるミヤコ。
苺プロ事務所。ミヤコが配置換えを発表。ケガ(ミヤコに殴られたと思われる)をした壱護がバイトとして紹介される。ルビーとアクアのマネージャーは私が担当するとミヤコ。
掃除している壱護にルビーが話しかける。アクアにハメられたと言う壱護。アクアが自分のために壱護を事務所に戻そうとしたと思いキラキラするルビー。
ルビーのスケジュールについて話す壱護とミヤコ。ルビーは今が認知度を稼ぐチャンスだと言うミヤコに、今やるべき事はルビーのプレミア感の演出と言う壱護。私は駄目ね、と言うミヤコに、仕事ぶりを褒める壱護。マズいのはアクアの方だ。アイツそろそろ壊れるぞ、と言う。
来週から『15年の嘘』の撮影に入る。監督が苺プロに最終台本を持ってきた。
子供役が決まっていない。
寂れた場所(どこ?)を歩くアクアに例の謎の少女が話しかける。少女「正しい運命に導いてあげてるんだよ。私は優しいからさ」アクア「運命ね。まるで神様だな」「親はどうした?戸籍とかあるのか?」少女「あはは、君達と同じ様にこの器も母から産み落とされたものだよ。まぁ普通の親とは言えないけれど」
略
アクア「お前さ、この映画で子役やってくれない?」
少女「は?」
結局、『ツクヨミ』という芸名で参加することになる。子供時代のアクアとルビー役。
場違い感を心配するMEMちょ、不知火フリル(姫川愛梨役)からファンです、好きです、握手してください、と言われ自己肯定感が上がる。
MEMちょ(『B小町』・めいめい役)
かな(『B小町』・ニノ役)
あかね(『B小町』・高峯役)
メルト(雨宮吾郎役)
衣装合わせ、本読みと進む。アイからカミキヒカルへのセリフ「私は君を愛せない」は、アクアは決別の言葉として脚本を書き、ルビーは決別の言葉として演じたが、監督は別の解釈をしているらしい。
かな、アクアに「全く・・・あらためてなんて脚本よ。これアンタが書いたって聞いたわ。文才あったのね」アクア「あらすじはな」
MEMちょ「これだけの事があってルビーもアクたんもよく立ち直れたよねぇ」
あかね「立ち直れてないよ。アクアくんも、ルビーちゃんも。どっちも」
姫川大輝は上原清十郎(彼の心中した父親)役。
旧『B小町』の衣装を着るかな、MEMちょ、あかね。アイそっくりなルビー。あかねモノローグ「本当に、遺伝子は残酷な程に・・・」
『B小町』のメンバーのやり取りを演じるあかね、かな、MEMちょ。そのレベルに合わせないといけないアイ役のルビー。
皆おっはよー!!というセリフにOKが出ず13テイク。
監督は策略的に「アイはもっと馬鹿」と煽り、ルビーの演技は良くなり、OKとなる。かな、あかね、星野アイを演じるために足りなかった「怒り」の感情が足されたと分析。
あかね: きっと星野アイは心の内側に怒りを隠してた。
かな「アンタ達も気を付けなさいよー。あのカントク一筋縄ではいかないから」
映画デビューを自身のYoutubeチャンネルで発表するMEMちょ。モノローグ。挑戦の連続だった自分の人生を振り返る。賢く立ち回ってみせる、と思いつつも、怒号が飛ぶ現場に心臓がバクバクする。かな「ここなんてまだマシな現場よ?」あかね「役者の基本は我慢と忍耐!」MEMちょ「ぜんぜんキラキラしてないよぉ・・・」しかし、MEMちょモノローグ「こちとらウン千人相手に生(ライブ)を晒すのが日常なんだ!略 今更ビビったりしないから!」
外のベンチで休憩中のMEMちょに、アクア、上手くやれてるみたいだな、と声をかける。MEMちょ「これってお父さんを断罪する映画・・・なんだよね?だけど私にはさ、アクたんなりの優しさに溢れた映画にも思えたな」
脚本には監督の直しが入っており、吉祥寺先生とアビ子先生に指導してもらったと説明するアクア。
アクア「使える物は全部使う。これが俺の基本戦術だ」MEMちょ「私の事も使ってる?」アクア「ああ当然、使い倒してる」
アクアの目に黒い星。MEMちょ、にっこりして「なら良かった」
監督経由で受け取ったアイからのメッセージDVDを見るアクア。
アイ「15歳おめでとうアクア。15歳、私が君達を宿した歳。大人になったアクアならこの話も受け入れて貰えるよね?君達のお父さんのお話。そして、私から大人になった君達へのお願い」
短編(番外編?)
飲み会に参加しているMEMちょ。今やっと軌道にのりかけてんの、と言う。行きたくないパーティーをハシゴしまくってやっと案件ゲット。友人?に、アイドルはもういいんだ?と言われ、アイドルはお金になんないからさー、と言うMEMちょ。
友人に誘われて合コンに出るが、炎上してアイドルになれなくなることを意識してしまい、帰る。
鳴嶋メルトの握手会、ファンと付き合えますか?と聞かれ、別にカワイければと答え、炎上。社長に観ろと言われイケメンアイドルの動画を見るが、そうなりたいと思えず、バンドがやりたいと社長に掛け合うが認められず、職業: イケメン、俺の天職と自覚する。
CMの撮影で共演するあかねとかな。表向き仲良しだが、楽屋ではギスギス。好敵手。
髪質改善トリートメントをしてサラサラなルビーの髪をジャマそうだから結んでおけば?とアクアに言われ、むくれるルビー。前世で、髪の毛をのばすというさりなに、推し増しする、という会話をしたことを思い出し、ルビーの機嫌を取るアクア。
印象的なセリフ
郵送料も勿体ないし。(P116監督)
解説:来週から『15年の嘘』の撮影に入るというタイミングで、監督が自分で苺プロに最終台本を持ってきた時のセリフです。事務所が近い、と発言しているため自分で届けるのも不自然ではありませんが、ストーリー中でルビーが言っているように「財布事情」も垣間見えて面白いです。
親はどうした?戸籍とかあるのか?(P121アクア)
解説:いつものように前触れなくアクアの前に姿を現した謎の少女(ツクヨミ)に対する言葉です。
アクアは相手がどういう存在かある程度察しているように見えます。相手が単なる「時々現れる知らない子供」なら、「戸籍があるのか」とは質問しません。何らか、自分と同じような存在だと察しているリアクションです。
結局胸を打つのって作品に怨念が有るかどうかよ。そういう意味ではピカイチ(P143かな)
解説:作品に怨念が有るかどうかよ。の部分には強調のための点が振られています。このストーリーにおいて重要だからという理由と共に、作者がそう思っている、ということかもしれません。
これだけの事があってルビーもアクたんもよく立ち直れたよねぇ(P144MEMちょ)
立ち直れてないよ。アクアくんも、ルビーちゃんも。どっちも(P144あかね)
解説:アクアの闇を一緒に背負いこもうとしていたあかねならではの発言です。
きっと星野アイは心の内側に怒りを隠してた(P166あかね)
解説:これもあかねならではの発言です。
15歳おめでとうアクア。15歳、私が君達を宿した歳。大人になったアクアならこの話も受け入れて貰えるよね?君達のお父さんのお話。そして、私から大人になった君達へのお願い(P185 DVD中のアイ)
解説:このお願いの内容は読者に対しても後で明かされます。(16巻P35〜)
アイの歴史を追う稽古の様子。施設から脱走し、社長と会い、アイドルになることにした。(あかねやMEMちょがいるので、回想と稽古をダブらせている)社長は身元保証人の交渉をして100万円提示し、この倍払うなら考えると言われる。(それを飲んだのかどうかは描かれていない)諸々片づけてきた、という社長。
これってどこまで本当の話なのかな?というMEMちょに、かなは5割くらいじゃない?と答えるが、あかねは8割いや9割は本当の話だと思う、と答える。
アクアはアイの実母にも会いに行った。当時つき合ってて結婚も考えた男がアイに色目を使い始めたことも聞く。
家を出るとあかねがいる。アクアくんと同じ事してるだけだよ?というあかね。
旧『B小町』のメンバー間の様子も演じる。
それを見学に来ている、今は中年となった旧『B小町』のメンバー。MEMちょ、光栄だー・・・と言う。ルビーは初期メンバー組はあまり思い入れがない。
かな、旧メンバーのニノに質問しようとする。ニノ、誰もアイのライバルにはなれなかった、はっきり言って嫌いだった、と言う。未だにアイに対する嫉妬や嫌悪を抱えている様子。その役の有馬かな「これから私あの人演じなきゃいけないの!?」
電話するその元メンバー。相手はカミキヒカル。
テイク(演技のやり直し)を繰り返すルビー。母親(アイ)がどういう人だったか分からない。
悔し泣きしているルビーに話しかけるかな。ルビー、どうしても良い演技がしたい!と言う。
ルビーに対する嫉妬を内に抱えつつ良好な関係を築いてきた有馬かな、ルビーがアイを理解するピースとして、自分の抱えてきた嫉妬を伝える。ギスギスするルビーとかな。その様子にショックを受けるMEMちょ。
かなが嫉妬をルビーに言ったことをたしなめるMEMちょ。かな「あの子への不満はMEMだって抱えてるでしょ」「ああそっか、これが『愛憎』って気持ちか」少しずつニノに近づけている、と言うかな。
ルビーの中に悲しみが生じ、実はアイは傷ついていてただの弱い女の子だったと想像する。
一方、ルビーに、「ママも辛い時泣くと思う?」と聞かれたアクアは、監督に、アイって仲間に見放されて悲しんでたと思うか聞く。アクアは、アイは泣いたりしない、と言うが、監督は誰にも分からない、と言う。アイは、本物の私を撮ってください、と監督に言った。
監督「本物のアイを今度こそ撮りたい」
アクア「撮れると良いな」
監督「略 その為のルビー起用だしな」「もしルビーの芝居がペラペラだったら目も当てられない作品になるだろうよ。逆に良い芝居になりゃこの作品は跳ねる」
監督が幼少の頃のアクアをかなにぶつけた(映画出演させた)のは、天狗になっているかなにお灸を据えるためと、あいつの友達になってやってほしかったんだと言う。
有馬かなは何があっても星野ルビーを絶対に守るさ、と監督は言うが、実際のかなとルビーは今やギスギス。
アクア「本当に大丈夫か?めちゃ険悪っぽいけど」うろたえる監督に、あんまり狼狽(うろた)えるなよ、責任者なんだから。略 あいつらもう結構立派だぞ、と言うアクア。
稽古ではアイ(ルビー)とニノ(かな)の決別のシーン。ニノに自分を重ねるかな。
ルビー、アイは最強で完璧という皆のイメージと異なる繊細に傷つくアイを説得力を持って演じる。
ルビーの芝居を見ていたイチゴ「アイが胸に秘めてた孤独は多分もっと・・・」鏑木「僕もそう思う」
鏑木、有馬くんの売り方に提案があると言う。彼女は天才役者として売るべきだ。
演技について話すルビーとかな。ルビー「私は友達とずっと仲良しで居たい。自分の気持ちに素直で居たい」「私は私のままスターになる」「私はママみたいにならない」かな「そう、良いんじゃない?」
このシーン、ルビーの目には白い星。
場面変わり、寝ているルビーに布団をかけるアクア。姫川、フリル、MEMちょが車で来て乗れよと言う。姫川は免許取り立てだが高級車。姫川、ちと飛ばすぜ。電柱にぶつかる。レッカー移動される。
姫川とアクアの血が繋がっていることを話すフリル。驚くMEMちょ。姫川はアクアより3つ年上。アイが妊娠した時彼は中学生。姫川「分かってて受けた仕事だ」「俺達は自分達の手で俺達の親がやってきた事の精算をしなくちゃいけない」
場面変わり、鏑木がある男と話している。その男がスポンサーになったのでありがたいと言う鏑木。色々な人の名称使用許可を得ているが、君に許可は取っていない。カミキヒカル。君をこの作品では少年Aと呼んでいる。
父親の役として母親に対峙するアクア、言葉にしづらい気分。姫川も最悪の気分。
中学生役の兄にときめいてしまい怒られるルビー。(ヘビーな内容だがマンガの演出としては時々ギャグを入れている)
劇中のカミキヒカル、ララライに来たアイに教えてやれと言われる。
カミキヒカルとアイの関係とカミキヒカルと姫川愛梨との関係が描かれる。愛梨は小児性愛者。
劇中のカミキヒカルのモノローグ「なんにもない僕が誰かに愛される為にすべき事はこれで合ってますか?」何も分かっていない純粋な少年を演じている(振る舞っている)カミキヒカル。
劇中のアイ「分かるよ、私とおんなじだもん。嘘つきの目。人を騙すのが得意な目」アイもカミキヒカルも、黒目に黒い星。
アイ、愛梨の元へ行き、子供への性加害と糾弾するが、私だって似たような事されながら生きて来た!と言う愛梨。
性の問題で被害者が加害者に転じるケースは多いと言うミヤコ。過去の芸能界の状況を説明。
そこへ濡れ場を終えたフリルが入ってくる。必然性があれば脱ぐ、と言うフリルに、ルビー、体張るなぁ、と言うが、逆に兄弟のキスシーンについて体張るよねー、と言われる。
アクアとルビーのキスシーンについて話すかな、MEMちょ、ミヤコ。ルビーは、あり得ないと言いつつノリノリだった。
脚本はアクアが書いているが、カミキとアイの恋愛に関しては何の証言もなく、完全な創作と説明するミヤコ。
相談された吉祥寺とアビ子がノリノリでシナリオに手を入れた。キスシーンも長くて強め。
吉祥寺、アクアに、その物語が誰かを傷つける責任を忘れてはいけない、と言う。
自宅でルビー、アクアに、明日のキスシーンについて話す。妹にキスするのは俺でも抵抗がある、と言うアクアに、なら、私を天童寺さりなとして見たら?雨宮吾郎として私を見たら?と言う。
はぐらかすアクアに、自信がないなら練習しとく?、せんせーは、いや? あの頃みたいに私の事もう一度さりなちゃんて呼んでよ、と言うルビー。
さらにはぐらかそうとするアクアだが、ルビー、駄々をこねる。
アクア、四角い眼鏡をかけ「もう寝る時間だぞさりなちゃん。先生の言う事ちゃんと聞けるかな?」ルビー感激し、「せんせ!せんせ!結婚して!!」アクア「今度こそ社会的に死んじゃうから勘弁して」
幸せマックス、と言うルビーに、アクア、俺はもう君の知ってる先生じゃない。いつも生きてる事に罪悪感を覚える様になった。もう上手く笑えなくなったと言う。
ルビー「私は笑えるようになったよ」「せんせーは私の推し」「私が大好きだった初恋の人のまま」「せんせーは私の事好き?」アクア「ああ、当然だろさりなちゃん」ルビー「私もせんせーが好き」ルビー、アクアにキスする。
場面変わって撮影、キスするアクアとルビー。
解説::芝居でのキスは申しわけ程度に小さく描き、その前の素のアクア(ゴロー)とルビー(さりな)のキスのシーンまでをエモーショナルに、時間をとって描き、キスシーンも大きく描いています。
病院のシーンの撮影。ゴロー医師役のメルトに、ルビーがダメ出しをする。ルビー「この役は作中でも非常に重要な役だと思うんですよ」メルト「割とチョイ役だろ」
外で一人休憩中のルビー。ツクヨミ(芸名)が木の枝に座っていて、「憧れの人と再会した気分はどう?」「ちょっと懐かしい気分になった」とルビー。神を語るツクヨミ。ルビー「来週出番あるよね?ちゃんと出来るの?」ツクヨミ「なめんな。出来るし」
そのツクヨミのシーン、駄々をこねる幼児ルビーを演じる。ルビー「えっ?私ってそんな?」「こんなだよ」
同じく、幼少のアクアを演じ似ているが、アクアに思い入れのあるルビーとかな、ツッコむ。アクアもツッコむ。
ツクヨミ、独り言「君たちはずっとあんなだったよ。少なくとも私の目から見たらね」
ツクヨミの回想
ネットに引っかかったカラスをさりなが助け、ゴローがケガを処置し、逃がす。そのカラスはその後のさりなとゴローを木の上から眺めたり、さりなが死んだ時も窓の外からそれを見ていた。
何かを思うツクヨミ(この繋がりから、回想がツクヨミの回想と分かる)
ツクヨミモノローグ「私にとって君達はずっと、生意気で可愛い子供のままなんだから」
劇中
カミキヒカル、アイを選ぶことを姫川愛梨に伝えると大輝(たいき)は貴方の子供なのを忘れないでね、私からは一生逃げられない、と言われる。一方アイに、僕の事愛してるよね?と聞くと分かんない、と言われる。姫川清十郎に話してしまう。清十郎、激昂して愛梨と心中。アイの拒絶、などへ撮影は続く。
暗い顔のアクアに話しかけるかな。「役柄に引っ張られちゃった?」アクア「このまま死んでしまいたい位だよ」かな「私はアンタが死んでも悲しんだりしないからね」「死体にビンタしていつもみたいに口汚く罵ってアンタなんかあっと言う間に忘れ去ってやるから」
アクア「有馬と居るとつい楽しくなってしまう」と言って出ていく。かな独り言「私もアンタが傍に居ると楽しくなっちゃうのよ・・・」
神社でお参りをするルビー。雨が降ってきてそのまま雨宿りする。カミキヒカルが傘を差し出し話しかけてくる。一緒に歩く。長い間お祈りしていたことについて聞かれ、私にはずっと憎んでる人が居て、許すのか許さないのかこれから選ばないといけないが何が正しいかわからない、と話す。
神様は答えを教えてくれない、君にしか出せない答えだ、そうやって悩んで出した答えなら、それを受け入れなきゃいけない、誰しもが、と言うカミキヒカル。
本当の願いを聞かれ、私はママを超えるアイドルになる、と言うルビー。その姿は凛として輝く。雨は上がった。
カミキヒカル「今この世界で君より輝いている存在はないんじゃないかな。価値ある命だ。略 君の母親よりも」と言って何かしようとしかけるが、あかねが声をかける。あかね「そちらの方は?」ルビー「傘入れてもらってたんだー」あかね、カミキヒカルにお礼を言い、彼を後ろに見つつルビーと去る。
カミキヒカルの横に元『B小町』の女がいる。カミキヒカル「僕を映画ではなく、大衆の悪意によって殺す気なんだろうね」「このまま朽ちていくのも良い。僕が背負った数々の命と共にね」「けれどその前に・・・」
撮影は進む。ルビー、オールアップ。
第十章『終劇によせて』
役者達が海に来ている。五反田監督もドライバーとして駆り出されている。それぞれ楽しむ。
ツクヨミとその傍らにカラスもいるのがおかしい。
夜、一人佇むアクアのところへあかね来る。アクア「俺と居て気まずいとか思わないの?」あかね「思うよ」「でも監視しなきゃいけないでしょ?君がいつカミキヒカルを殺さないとも限らないんだから」「君はそれをしたら幸せになれないし周囲も幸せになれない」あかね去りながらモノローグ「君を幸せにしたい」「その為なら私は手段を択ばない」
かな、あかねにことばをかける。「アクアは貴方(あかね)と居るのが一番幸せだって」「早いとこヨリを戻しなさい。アンタならアクアの心を溶かせる」
時間は少しだけ遡る。いい感じに焼けた肉をアクアに持っていくかな。アクアとあかねが水辺で話しているのを見つけ、木に隠れる。
時間戻る
かな「互いにまだ好きなんでしょ?なら元鞘(もとさや)が一番よ」「私みたいなスレきった性悪女よりアンタの方が良いに決まってる」あかねが話そうとかなの肩に手をかけるとかな泣いている。
私とアクアくんはもうそういう関係じゃない、というあかねに、かな、「でもまだアンタアクアのこと好きなんでしょ?」
あかね「好きだけど…」「今の私は純粋にアクアくんの幸せを願ってるだけ」と、余裕なさそうに言う。お互いに相手を魅力的だと思い、泣き言を言うかなと、かなにいくじなし、と言うあかね。かな、逃げる。
家で寝ているかな。そこへあかねが来る。「逃がさないよ?」「昨日の続き」「私かなちゃんの恋を応援しようって決めたの」あかねモノローグ「アクアくんと次に付き合う人は私が認めた女じゃなきゃヤダ」
あかね、帰り道モノローグ「ねえアクアくん。」「君は大切な人を自分の復讐に巻き込みたくないから距離を取るんだよね?」「じゃあ大切な恋人ができたら復讐なんてもっとできなくなるよね?」
アクアのそばにゴローの幻影。闇の気配はまとっておらず、はっきりゴローとして見える。アクア「もう言わないのか?『復讐しろ』って」ゴローの幻影「略 さりなちゃんは生きている。ルビーとして、夢だったアイドルになった。病気に苦しむ事なく楽しそうに笑ってる」「もう俺は報われてしまった。遠くない内に俺は消えるだろう」「あとはもうお前がどうしたいかだ。カミキを殺す道を選んでも良い。好きな女と楽しく青春しても良い」「でも、俺の目が黒い内はさりなちゃんに手ぇ出させねえからな?」
アクア「ルビーが好きなのはアンタの方なんだから。俺を通して雨宮吾郎の幻影を見てるだけ」アクアの両目には黒い星。アクア、ゴローの幻影に、かなへの恋愛感情を指摘される。ゴローの幻影「お前はもう雨宮吾郎の役を降りて良い。略 人を愛しても良い。このナイフをどう使うかはお前次第だ」ゴローにナイフを手渡す。
アクア目覚める。幻影というか夢だった。
あかねとのやり取りを回想するかな、アクアと会った時からの事を思い返す。モノローグ「私は本気の恋をしている」
かな、アクアを誘って制服デート(卒業生だが)キャッチボールをする。2年前はアクアが誘いデートでキャッチボールをした。今回は顔が売れているので学校で。
かな「アンタ進路どうするの?」アクア「一応医大受けるつもり」「夢だったんだよな、心臓外科医になるの。長い長い夢」かな、「向いてると思う」「助けたがりのアンタにはピッタリ」アクア照れる。かな、夢を聞かれ、今の夢はアンタの推しになる事。私の『B小町』引退ライブ、絶対に見に来て。もし私が星野アクアにとっての一番の推しだって言ってくれるなら、私はアンタだけの推しの子になってあげる。
五反田監督のインタビュー。「俺はこの作品でフィクションを描いたつもりはない」
インタビュアーに最後に一言を聞かれ、『この映画をアイに捧ぐ』以上だ。
関係者向け初号試写上映。スタッフロールが流れる頃には所々ですすり泣き。フリル「五反田監督って凄いね…」泣いているフリルにMEMちょ驚く。
アクアが編集を頑張ったらしい。
ルビーの最後の芝居がこの映画にどういう感想が返ってくるかを決定づけた。
監督と鏑木プロデューサー話す。監督「個人的な後悔は薄れた」監督、Pに問う「星野アイとカミキヒカルを引き合わせた責任を、罪悪感をずっと抱えてたんじゃないのか?」鏑木「もうそんな事で一々罪悪感を感じる程若くないさ」と言うが、監督に、鏑木は映画監督になるためにこの業界に入り、今も諦めていないことを指摘され、動揺する。
アクア、インタビューを受ける。最初は当たり障りのない質問。インタビュアー「どうしてそこまで自分を押し殺すんだい?」
アクア「演じる事は僕にとっての復讐だから」「カミキヒカル。僕達から母親を奪ったアンタへの」インタビュアーはカミキヒカル。彼の両目に黒い星。アクアの右目に白い星。
印象的なセリフ
自信が無いならさ、練習しとく? 今からキスシーンの練習。せんせーは、いや?(P19、20ルビー)
解説:お互いにさりなとゴローの生まれ変わりだと認識した後、映画中でのキスシーンのことを話し、家でルビーが後ろからアクアに抱きつきながら言うセリフです。アクアに対しせんせー呼びになっています。
生まれ変わりのことは周囲の人に全く言っていない上に、アクアとルビーが明確にそれを認識したのは13巻です。このストーリー中で、その「再会」のシーンとここから後のシーンがこの二人のドラマとして最も「エモい」シーンだと思います。
もう寝る時間だぞさりなちゃん。先生の言う事ちゃんと聞けるかな?(P24アクア)
ごめんなさりなちゃん。俺はもう君の知ってる先生じゃないんだよ(P28アクア)
解説:「もう寝る時間だぞさりなちゃん」は、ルビー(前世さりな)に「さりなちゃんって呼んで」と駄々をこねられて言いましたが、「ごめんなさりなちゃん」はそのままさりな呼びしています。このストーリーにおいてこの2人しか知らない秘密の関係で、極めてパーソナルで、エモーショナルな印象のするエピソードです。
割とチョイ役だろ(P43メルト)
解説:ゴローはルビーにとっては前世で好きだった人のため非常に思い入れがあり、現世ではアクアのためこの物語の中心人物ですが、転生の事は映画でも描いていないはずで、とすればゴローは周囲の人にとっては「アイの担当医で、ファンに殺された人」というだけのチョイ役になります。しかしそのすれ違いを、どちらかというとコミカルに描いています。
私はアンタが死んでも悲しんだりしないからね。死体にビンタしていつもみたいに口汚く罵ってアンタなんかあっと言う間に忘れ去ってやるから(P82、83かな)
解説:伏線になっています。
私にはずっと憎んでる人が居て、略 許すのか許さないのか私はこれから選ばなきゃいけないんです。でも、何が正しいのかわからなくて・・・(P94〜ルビー)
解説:その本人が隣に居ます。
アクアは貴方(あかね)と居るのが一番幸せだって 略 早いとこヨリを戻しなさい。アンタならアクアの心を溶かせる(P127、128かな)
解説:かなとあかねはタイプが違います。あかねはアクアと似た部分があり、かなは異なります。ここでも、メソメソして自分が身をひこうとするかなと、そんなかなにいくじなし、と言うあかねのキャラクターが現れており、彼女たちの芝居へのスタンスにも通じるエピソードだと思います。
でも、俺の目が黒い内はさりなちゃんに手ぇ出させねえからな?(P153ゴローの幻影)
解説:これはまあ、ギャグですね。
ゴローの幻影はアクアの前世の記憶の投影で、アクアの中のゴローの部分です。しかし「推し」だったアイが殺されるのは自分が殺されたずっと後で、ゴローにとってはさりなの生まれ変わりであるルビーが最大の関心事です。
前世の自分(ゴローの幻影)が現世の自分に、さりなちゃん(現世ではルビー)に手を出させないと言っているのが面白いです。しかも、ゴローの幻影は「俺の目が黒い内は」と言っておりこれは「生きている間は」という意味です。今幻影としてアクアに見えているゴローは死んでおり、本人はそれを認識しているため、そこもギャグです。
私の『B小町』引退ライブ、絶対に見に来て。もし私が星野アクアにとっての一番の推しだって言ってくれるなら、私はアンタだけの推しの子になってあげる。(P181、182かな)
解説:これはアクアへの告白ですね。
ルビー?モノローグ
「私は星」今日もそんな嘘をついた 私達は星じゃないと知っている
ルビー?の目が、星のあしらわれた【推しの子】の「の」になっているカット。
The last volume Chapter title『星に夢に』
アクア、実父、神木輝(カミキヒカル)と対峙し、お前に復讐する為ここに立っている、と言う。
アクアの右黒目に白い星。カミキヒカルの両黒目に黒い星。
この映画は素晴らしい物語だったが、ありふれたフィクション。実際は僕が一方的に依存していただけでアイは僕を愛していなかった。振られた女にしがみ付いて逆恨みして殺しただけ、と言うカミキ。
去っていこうとするカミキに、アクア「本当に分からないのか?このDVDでアイが僕に何を願ったのか」「この作品はフィクションなんかじゃない」
カミキの回想
姫川夫妻の葬儀。参列の金田一に、お前が背負っていくんだ、二人の命を。と言われ、モノローグ「苦しい。命の重みが心臓を押し潰す。助けてよアイ。君しか分かってくれない」
アイ「私達もう会わない方が良いかなって」
世界が壊れる音がした。
アイ「妊娠した」
カミキヒカル「じゃあ結婚しよう」
アイ「無理!」「私知ってるんだ。大輝くんて君と愛梨さんの子供だよね?」「私は君を愛せない」
回想から戻る
カミキ、アイを刺した良介に住所を教えたのは自分だが、まさか殺すなんて想像してなかった、少し怖い目を見て僕の絶望を理解して欲しかっただけ、愛してた彼女に愛せないと言われた時の僕の絶望を、と言う。
アクア「信じたのか?アイの言葉を」「アイが僕達を産んだその意味を考えた事はなかったのか?」
DVDを見せるアクア。
映像中のアイ「「彼」はもう限界だったの」「命の重さに押し潰されそうになっちゃってさ」「私達が居なくなればきっと彼は大丈夫だと思った」「本当は彼とずっと一緒に居たかったから」「ねえアクア、15年後の君達から見て、あの時の言葉はちゃんと嘘だった?」「愛せないなんて嘘だったよね?」
アクア「この映画は、あの時突き放してしまったアンタへのアイからの時を超えたラブレターだ」カミキヒカル、スクリーンの中のアイに触れる「そしてアイを理解しなかったアンタへの僕達からの復讐だ」そばにルビーもいる。アクアの目に涙。
ルビーのモノローグ。「ママは最後まで神木輝の名前を出す事は無く、最後まで「彼」を案じていた」
出ていくカミキヒカルを追おうとするルビーに、アクア「追わなくて良い」「俺の復讐・・・いや、お前の復讐はもう終わったんだ」
家に戻るアクアとルビー。ミヤコ「したかった事はちゃんと終わらせてきた?」ルビー「うん」ミヤコ、涙ぐみながら「そう、おかえりなさい」ルビーの目の黒星が白くなり、「ただいま!」と言ってミヤコに抱きつく。
アクアもこっち来なさい、と言うミヤコ。いや俺は・・・と言うが「そうやって気持ちを抑えつけて自分を曲げて傷つきながら誰かの為に頑張ってきたのでしょう?」「私の自慢の息子、誇らしいわぁ」と言われ、ふとルビーが見ると、アクア泣いている。
アクア、イチゴの部屋へ行く。ぶち殺すんじゃなかったのか、とイチゴに言われ、アクア、そのつもりだったよ、最初はな。今だって殺してやりたいさ。けど、ルビーが選んだ。俺と同じ苦しみを受けた筈の妹が、人を許していく道を。だったらそれが僕達の答えだ。と言う。
イチゴ、アンタはどうすると聞かれ、アイの夢はルビーが引継ぐなら人を殺してるヒマなんてない。来週からは『B小町』のライブツアーが始まるし、番宣回りの調整で手一杯だ。
アクア、川岸?海辺?であかねに会う。髪をショートにした。
あかね、もう星野アイの真似っこはしなくて良いと思ったから。
アクア、分かってるから会いに来たんだろ。カミキヒカルが全ての元凶という事にしたら色々と辻褄が合わないって。菅野良介、片寄ゆら、雨宮吾郎、これらの死に直接関わった人物がもう一人いる。略 元『B小町』『ニノ』こと新野冬子。
MEMちょ、フリルの指摘で週刊誌の記者につけられている事を知り、年齢サバ読みのせいかと考え、自分の配信で年齢サバ読みを明かし、「年齢不詳ユーチューバー」として大学受験チャレンジ企画を発表する。
上手くやったわね、と感想を述べるかな。
MEMちょ: 私はグレーなまま見事に泳ぎ切ってみせるからね。こう見えて私『バズらせのプロ』だから。
B小町ライブツアーGlare✖Sparkle、名古屋、宮城、大阪と進む。
ルビー、休みの日に自宅で、同じく休みで医大受験の勉強をしているアクアとのんびり
アクアにアイドルは楽しいか?と聞かれ、
大変だけど、すっごく楽しい、と言うルビー。前世の病院生活を比較し、色々やってきたことを回想し、どれも楽しかったと言うルビー。こんななんでもない日もすてきな日だよ。お兄ちゃんが居ればそれだけで。
アクア、たまには俺達でなんか作って驚かせるか、と言って二人で買い物し、料理し、ミヤコの帰りを待ちながらソファの横で2人で寝る。帰ってきたミヤコ、あらあら仲良しさんね。
ライブ会場。
ニノのモノローグ、アイの遺伝子を受け継ぎ、一部報道で語られた通り出自に壮絶なドラマ性を持つも、その瞳には純粋な眩しさを宿している。
客席のニノ: 星野ルビー。今やアイをも超えるアイドルに・・・
楽屋になっている会議室。アネモネが来る。あかねも来る。ルビーに、東京でもライブやるのにどうして宮崎の公演に?と聞かれ、あかね、ちょっとこっちに用事があったからついでに・・・
あかね: 私アイドルやってるかなちゃん解釈不一致だから。
今日もアイドル役をかなちゃんが演じていると思い込む事でなんとか最後まで観れたし最高だった。
アイドルとしてルビーにかなわないかなと、ルビーを疎ましく思う人もいるだろうとモノローグで分析するあかね。
ルビー、あかねに、アイドルって不思議な仕事だよね。略 残酷なまでに若さには限りがあって、その姿は一度しか咲かない花のようで、永遠に輝く宝石にはなれない。
カミキと電話するニノ。今更警察に行って何が許されると言うんです?
電話が切られる。
ニノ、独り言で続ける。もう戻る事は出来ないのに。
『B小町』のツアーの大きな看板を前に、アイ以上のアイドルなんて居てはいけないの、とつぶやくニノ。
ツクヨミのモノローグ、人は何故愛を抱く生き物なのだろう。略 愛ゆえに、その命すら奪うというのに。
12月25日クリスマス、『B小町』ライブツアー最終日。玄関のドアを開けたルビーを、フードを被ったニノが包丁で刺す。
ニノ、ごめんねルビーちゃん。貴方はアイを超えちゃ駄目なの。アイが一番じゃなければ私達のしてきた事に意味が無くなっちゃう。後ろからイチゴがニノを取り押さえる。
そのルビーは、変装し、防刃ベストを着たあかねだった。ルビー本人は現地入りしてライブの準備をしてる頃。
イチゴは、旧『B小町』の中にファンと繋がっている者がいてニノがその中の菅野良介と付き合っていた事も知っていた。
ニノ、私の心も良介の魂すらアイに持っていかれ、そんなアイが、もし何者でもないただの女の子だったら私達ってなんだったの?ってなる、と言う。
あかね: アイは、貴方と普通の友達になりたかった、そうルビーちゃんは言ってましたよ。
ニノ、涙を流し、私もそうだよ。
あかね: いったい『誰』が、貴方と菅野良介をそうさせたんです?
華々しい『B小町』ライブ。笑顔と、かなの涙。
そのライブ配信を見ているカミキヒカル。その後ろにいるアクア。
カミキ、君も一緒に観るかい?ライブ配信。
アクア、カミキヒカルに、自分の為だけに嘘を重ねてきた醜悪な嘘つきだと言うが、カミキとぼける。その目には黒い星。
カミキ: 分からないな。僕が何をした?人を刺した?突き落とした?してないじゃないかそんな事。
イチゴやあかね達の前で語るニノ。カミキさんは『何もしてない』。いつもアイの話をしてアイの事を忘れさせてくれなかっただけ。それだけで十分私達は壊れる事が出来たと言う。
疑問:なぜ警察に突き出さず、こんなに普通に話してる?
誰かを害するつもりなんて無かった、と言うカミキに、アクア、それも嘘なんだろ。
略
殺そうとしたな?実の娘(ルビー)を。
アクアの黒目に黒い星。
ニヤリとしているような不敵な表情をするカミキ。
アクア: 自分の手は一切汚さない教唆犯。下劣で利己的な嘘つき、と言うが、カミキ、君は僕と同じ目をしている。人を騙し従わせる『嘘つきの瞳』だ。自分の目的の為に何人の人を騙してきた?
アクア: 確かに僕等は自分の為に人の心を動かし騙し従わせる醜い存在だ。
解説: ここにアクアの絶望の片鱗が見えます。母親の仇(かたき)を取るために自分の父親を探してきて、出会った父親は「利己的で嘘つき」な人物でしたが、自分の今までの父親探しの方法も父親譲りの「利己的で嘘つき」な資質を活かしてきました。
アクア(続けて)けれどルビーは僕等とは違う。今もルビーは愛を歌っている。
ステージではルビーが、これは私が一番好きな曲。届いてください!『推しに願いを』!!
アクア、カミキに大型ナイフを突きつけ、アンタはここで消えてくれ。ルビーの未来の為に。
謎の少女ツクヨミのモノローグ。カミキヒカルを簡潔に説明。「この場面は最初から運命づけられていたのかもしれない」
カミキ、枯れていくだけの未来だろ。永遠の存在じゃあない。僕を殺すのかい?ひとごろしの妹として君の大事なルビーはアイドルとしての高みを目指せるのかな?と脅す。
俺には夢があると言い、周りの人達との関係を続けていき、ルビーがドームに立つ姿を見届けたい。しかしそれら全てを捨ててでも、妹の未来は俺が守る。妹の未来を蝕むお前はここで死ぬ。お前は僕が殺す。そして妹をひとごろしの妹として報道はさせない方法が一つだけある。
アクア、ナイフで自分の腹を刺し、カミキと共に海に飛び降りる。アクア、水の中でカミキの首を締める。海の底から黒いゴローの幻影が現れ、カミキを引きずり入れる。
カミキ、モノローグ、僕はね、アイと居る時だけ生きてる気がした。略 感じて居たかった。それが罪の重さでも。残念だよ。ルビーを殺せてたらもっと君を感じれたのに。
謎の少女、海面に立つ。見の前にいないアクアに語りかける。自分の使命は見つかった?
アクア、モノローグ、一度死んだ俺が生まれ変わりなんてズルを神が許した理由。僕の生きた理由。それはきっと復讐の為なんかじゃない。自分の妹を守る為だ。その為に俺は双子として妹の一番傍に生まれた。
生まれたときからの回想と、さりなとの回想。アクアモノローグ。良かった、今度は君より先に逝ける。
アクア(ゴロー)のイメージ。さりなが回復して母親が会いに来て退院し、さりなはB小町の新メンバーオーディションを受け、アイの隣でアイドルになる。サイリウムを両手にもち、ライブ会場で泣きながら応援するゴロー。
その様子をツクヨミと見るアクア。
アクア:これは夢なのか?
ツクヨミ:もちろん夢さ。君にとってはね。
アクア、この選択は本当は間違っていたんじゃないか。妹を遺してただ身勝手に死んで、周りに迷惑をかけただけなんじゃないか?
ツクヨミ、『君』は大人としての記憶を抱き、さりなちゃんとアイを救えなかった苦しみを背負って、誰かが苦しむのに耐えられず、つい自分の得にならない手助けをしてしまう様な救いようもないお人好しだったじゃないか。
アクア消える
ライブの終わった会場でアクアを探すかな。ファンの母娘と接するルビー。
水の中のアクア、苦しい、痛い、寒い、暗い、略 心が、体が生きたいと叫んでる。略 後悔が、、 うたがきこえる。そんな気がした。
アクア目をつむる。
あかねがアクアに語りかけるモノローグ。それからのお話。 君の遺体は現場から20キロ先で漁師さんが見つけてくれた。
あの後すっごいニュースになったんだよ。君はカミキさんに殺されたって。逆恨みして可哀そうだって。でも違うんだよね。
君はルビーちゃんを・・ルビーちゃんの未来を守ろうとしたんだよね。
君となら、どこへでも堕ちていけたのに。
ニノが取り調べに素直に応じて、思っていた以上の被害者がいた事、カミキヒカルはどれも殺人教唆で立件出来ない程度の関与。
葬式の時は大変だったんだからね。特にかなちゃんは・・。
かな、棺桶の中のアクアを叩く。
かな、泣きながら、もう死ぬなんて言わないって・・・約束したでしょ!?うそつき!まだ言ってないのに!!アンタにちゃんと好きだって!生き返りなさいよ!!いますぐに!!おねがいだからああ!!生き返ってよぉ!!
多くの知り合いが参列している。
監督「この映画は上映する」反対意見もあるが、鏑木、いいよ。強行で上映しよう。何かあれば僕が責任を取る。それがPの仕事だろう?、と言う。
映画はヒット
引き続きあかねのモノローグ。ルビーちゃんはあれから家から出なくなった。ルビー「私の大切な人はいつも私の前から居なくなっちゃう」
さんざん泣いた後、ルビー前進する。
MEMちょのYoutubeチャンネル100万人突破。皆それぞれ前進する。
かな卒業後の『B小町』はオーディションをする。監督は映画で賞を取った。
『B小町』は東京ドームライブ。
そしてまた、ルビーは朝、仕事に出かける。
【推しの子】終わり
巻末オマケマンガ
MEMちょはB小町プロデューサーとなり、自分のチャンネルで「推し」について語る。
印象的なセリフ
苦しい。命の重みが心臓を押し潰す。助けてよアイ。君しか分かってくれない(P22カミキヒカルの回想)
疑問:「命の重さに押し潰されそうになる」とは詩的な表現ですが、どういう感覚でしょうか?
ここではカミキヒカルは、姫川夫妻の心中は自分と姫川愛梨の関係が原因になっていると分かっており、そのことが心理的に重くのしかかる、ということだろうと思います。
ただ、「命の重さ」という表現はカミキがアイを求める心理として他でも使われていますが、個人的にはスッと気持ち入ってこない(理解できない)です。
「「彼」はもう限界だったの」「命の重さに押し潰されそうになっちゃってさ」「私達が居なくなればきっと彼は大丈夫だと思った」「本当は彼とずっと一緒に居たかったから」「ねえアクア、15年後の君達から見て、あの時の言葉はちゃんと嘘だった?」「愛せないなんて嘘だったよね?」(P35〜40映像中のアイ)
疑問:アイのこの一連の心理も個人的にはよく理解できません。「本当は彼とずっと一緒に居たかった」けれど「私達が居なくなればきっと彼は大丈夫だと思った」とはどういうことでしょうか?
わざわざ15年後に息子が見るように監督にDVDを託し、「一緒に居たかった」人に「愛せない」と言って別れた事を「ちゃんと嘘だった?」「愛せないなんて嘘だったよね?」と同意を求めるというのはどういう心理でしょうか?
「そうやって気持ちを抑えつけて自分を曲げて傷つきながら誰かの為に頑張ってきたのでしょう?」「私の自慢の息子、誇らしいわぁ」(P52ミヤコ)
解説:長期間の連載の中で表現が変化した部分かもしれませんが、最初の方の巻で幼少のアクアやルビーをうっとおしく思っていたミヤコですが、ここでは母親としての愛情が表現されており、エモーショナルです。しかし、ミヤコがどの程度アクアやルビーの気持ちを理解していたかは、このセリフから想像するしかありません。
ルビーが選んだ。俺と同じ苦しみを受けた筈の妹が、人を許していく道を。だったらそれが僕達の答えだ。(P55、56アクア)
メモ:このストーリーは多要素で多レイヤーのため、何かの要素、因果関係、きっかけなどが断片で表現されていることがあり、見落としやすい、又は読んだことを忘れやすいですが、ルビーがカミキを許すことは描かれたでしょうか?
ちょっとこっちに用事があったからついでに・・・(P102、あかね)
解説:あかねは引き続き独自に、事実関係を探って歩いてるかもしれません。
カミキさんは『何もしてない』。いつもアイの話をしてくれただけ。アイの事を忘れさせてくれなかっただけ。それだけで十分私達は壊れる事が出来た(P135、136ニノ)
疑問:ニノがルビーの家に来てルビーを殺そうとして取り押さえられた後、ソファーに座って壱護やあかね達の前で語っています。なぜ警察に突き出さず、こんなに普通に話してるいるのでしょうか?通報はして警察を待っている時でしょうか?
この場面は最初から運命づけられていたのかもしれない(P155ツクヨミ)
解説:アクアがカミキヒカルに大型ナイフを突きつけたシーンで、謎の少女ツクヨミがモノローグでカミキヒカルを簡潔に説明しています。このモノローグは、これからのシーンは作者が予め構想していた内容ですよ、と遠回しに言っているようにも、作者がツクヨミという便利なキャラクターを利用して、必然の流れですよとエクスキューズを入れているようにもとれます。
実際、13巻で、ルビーがさりなの生まれ変わりだと確信したアクアが、ルビーにさりなとして語りかけ、復讐なんてやめてくれと言い、そのことでお互いにゴローとさりなの生まれ変わりだと認識し、それまで半ば絶交状態だったルビーのアクアへ対する態度がベタベタへ変化しますが、その時にもツクヨミは現れ、次のように発言しています。
「良かったね。これでルビーは立ち直って君の計画通り映画は作られるだろうさ。略 でもそれは悪手だよ。略 君からしたら、嫌われてた方が楽だったはずなのに」
つまり、なまじ感動の再会をして仲直りをしてしまったことで、アクアの復讐の(心理的な)ハードルが上がった、ということです。これはアクアの次のセリフにも現れています。
アクア、この選択は本当は間違っていたんじゃないか。妹を遺してただ身勝手に死んで、周りに迷惑をかけただけなんじゃないか?(P200、201アクア)
解説:これは作者の気持ちかもしれません。かなり複雑な構造のストーリーのため、途中からツクヨミという全てを俯瞰している存在を登場させて情報の整理をしていますが、ここでも今際の際(いまわのきわ)のアクアとツクヨミの会話を通じて、これまでの流れと結末について、読者に対する説明である前に作者自身が確認しながら描いているようにも取れます。
便宜的に「ツクヨミ」と表現しますが、これはアクアに誘われてアイの映画に子役として出演する時の芸名で、本名は明かされていません。というか、名前があるのかもわかりません。
「ツクヨミ」は日本神話における月の神「月読命(ツクヨミノミコト)」に由来しているようです。
このストーリー中では常にカラスと共に現れ、カラスの生まれ変わりであるようにも描かれています。(後述)
8巻(P95)初出で、いつも突然アクアやルビーの前に現れ、彼らの前世のことも知っており、物事を俯瞰するかのようなことを言います。
13巻では彼女が何者か、どんな存在なのかのヒントが語られます。
(P119〜)寂れた場所(どこ?)を歩くアクアにツクヨミが話しかける。「正しい運命に導いてあげてるんだよ。私は優しいからさ」アクア「運命ね。まるで神様だな」略「親はどうした?戸籍とかあるのか?」少女「あはは、君達と同じ様にこの器も母から産み落とされたものだよ。まぁ普通の親とは言えないけれど」略
アクア「お前さ、この映画で子役やってくれない?」ツクヨミ「は?」略「私を誰だと思っている?」アクア「知らねえ」ツクヨミ「少なくとも、死者の記憶を赤子の体に移す様な術を持つものと同種の者だよ」略「でも立場と礼節は弁えた方が良い。私がやろうと思えば君の魂なんて指先一つで、、」略
「芸能は私の司る所じゃない。あくまで私は月の光と共に人を導き、運命を司る」
結局、『ツクヨミ』という芸名で、子供時代のアクアとルビー役として参加することになります。
日本神話における「月読命(ツクヨミノミコト)」は月の神様で運命にも関係するという解釈があるようです。
15巻(P61)で、アイ役のルビーが幼少ルビー役のツクヨミを抱き上げるシーンで、ツクヨミはルビーを見てさりなを思い、微笑むシーンがあります。ツクヨミは何を思い出したのかややわかりづらいですが、この時のさりなの服がP68の前世?のカラスだった時にさりなに助けてもらった回想エピソードのさりなの服と同じですので、その時のことを思い出したのかもしれません。
15巻(P68)で、さりながネットに引っかかったカラスを助けてゴローが手当てして逃してあげた(おそらくツクヨミの)回想があります。そのカラスは時々さりなの病室のそばに来て、さりなが亡くなった時も見ていました。ツクヨミはそのカラスの生まれ変わりであるような表現となっています。
15巻(P74)で、ツクヨミはアクアとルビーについて、私にとって君達はずっと生意気で可愛い子供のままなんだから、と独り言を言っていますが、これはツクヨミがアイの生まれ変わりということではなく、助けてもらったカラスの生まれ変わりとして見てきたということではないかと思います。
このマンガでは、漢字の使い方に厳格というかこだわりがある反面、カジュアルな表現にしている場合もあります。
全般的に、難しい漢字を積極的に使っています。一番目につくのは「うそつき」を「嘘吐き」と書いていることです。(12巻p95では「一番の嘘つき」になってる)
その他以下のような漢字を使っています。
同じ轍(てつ)を踏ませない(2巻P22)
摑(つか)むかもしれない(10巻P139)
摑(つか)んで(10巻P142)
拘(かかわら)らず(10巻P142)
映画賞も獲(と)った(10巻P166)
辞(や)めるかも!(11巻P32)
引き摺(ず)ってたのね(11巻P118)
拘る(こだわる)(12巻p15)
目を逸(そ)らす(13巻p7)
勿体(もったい)ない(13巻P116)
弁えた(わきまえた)方が良い(13巻P127)
溢れた(あふれた)(13巻P181)
狼狽(うろた)えるなよ(14巻P90)
傍(そば)に居ると(15巻P100)
手段を択(えら)ばない(15巻P125)
元鞘(もとさや)(15巻P131)
一方、カジュアルな表現を使っている場合もあり、「辞めれる」(10巻P70)という表現が見られます。いわゆる「ら抜き言葉」です。
見落としているかもしれませんが、MEMちょのツノのカチューシャがどうなっているのかわかりませんでした。
3巻のP6やP117、118あたりの最初の頃はかなりとがった表現となっていますが、サキュバスというより小悪魔の記号だろうと思います。
恋愛リアリティショーや映画内では外しています。
MEMちょの帽子にも、このツノを収めるでっぱりがあるのが面白いです。(8巻P61)
13巻P189〜の幕間エピソードのMEMちょにはツノのカチューシャがないので、今やっと軌道にのりかけてんの、と言っているとおり、このエピソードはユーチューバーを始めた頃かもしれません。
16巻のP66では布団の上でMEMちょは、ツノを外し、ぬいぐるみにつけています。しかし、フード付のパジャマ?のフードにツノ用の出っ張りがあるのが面白いです。
前述のように、多ジャンル横断で多要素・多層的なストーリーで登場人物も多く、異なるレイヤーどおしが後半リンクしたり、逆に異なるレイヤーどおしではリンクさせず関係者の中のドラマに留めることで全体を成立させており、作者の非凡な実力を感じます。
作者が、やりたいことを全て入れ込むことを最初から予定した結果なのか、ネタ切れしないように連載が長く続くようにしてアイディアを足していった結果なのかはわかりません。
上手くまとめてはいるものの、要素が多くジャンルも横断するため時折ゆらぎも感じます。
また、アイドル、芸能、演劇の世界に関してかなり踏み込んだ描写をしていますが、どこまでが体験でどこまでがリサーチでどこまでが創作なのでしょうか?
リサーチしつつも創作なのかもしれません。
私は何かの作品を見るとき、失礼ながら作者の年齢を想像し、確認することがあります。
それは、自分の年齢と比べてこの作者はこんな作品をこの年齢で世の中に出して評価されていてすごいな、と感じる部分と、作品内容に対して、何歳くらいの人がこれを作っているんだろうという関心からきています。
『推しの子』はかわいい絵柄ですが、芸能についての広い知識がベースにあり業界の現状を冷めた目線で深く見て、さらにそれを複雑な構造のストーリーとしてまとめており、二人ともそれなりの年齢であるか、もしかしたら仮に横槍メンゴさんが20代後半だとしても赤坂アカさんが40歳前後かな、と想像していました。
ネット上の情報によると横槍メンゴさんは1988年2月27日生まれで、2025年7月20日現在37歳、赤坂アカさんは1988年8月29日生まれで、同じく2025年7月20日現在36歳、ということで、なるほど、という印象です。
一度は殺さずに終わりにしたアクアの復讐は結局達成され、ルビーに迫っていた危険も排除され、犯罪者の妹という烙印を押されることもなく、最後は念願のドームライブも達成する結末ですが、「印象」としてはアンハッピーエンドです。
個人的には、最後の部分は、物事の流れ、因果関係が複雑でわかりづらくなってしまっていると感じます。
「復讐」は最初、当初の予定とは異なる形で行われます。つまり、単純に殺すのではなく、アイがかつてカミキヒカルに「愛せない」と言った事は嘘だった、思いやりだった、ということを映画を通してカミキに突きつける為にわざわざ映画を作ります。しかし映画を見てもカミキヒカルは理解しなかったため、アクアはアイから15年越しに監督から受け取ったDVDを見せました。(カミキを殺さなかったのは)ルビーが許したからというアクアの発言もありますが、そこはストーリー中では明確に描かれていないと思います。
しかしカミキが間接的にルビーを殺そうとした事を知り、やはり直接殺す事にします。
理屈上は、アクアが前世ゴローのかつての患者さりなでもある妹を守るための行動・結末ですが、他の解決方法を見つけてほしかったとも思います。さりなにとっては転生超えの軌跡の恋の成就とはなりませんでした。しかも、兄妹として絶交した状態から、兄は転生前に好きだった先生だとわかって幸せ絶好調に反転してからの、その人の死亡です。
ルビーはおそらく、自分に迫っていた危険が排除されたことは知らず、むしろ精神的ダメージがかなり大きいと思います。
さんざん描かれてきた、アクアをめぐる有馬かな、黒川あかねの三角関係と、現世では兄妹ではあるものの、兄は前世で自分が好きだった「せんせー」であることを知った後のルビーも含めると交わらない四角関係とも言えますが、3人(かな、あかね、ルビー)の誰も直接的には幸せになっていません。平等ではありますが悲しい結末です。
残された人たちが悲しみを乗り越えて前を向いていく様子は描かれるものの、ビタースイートでもなくアンハッピーというか、悲しい結末です。
この複雑なレイヤーを持つストーリーをよくまとめ切ったと思いますが、逆に言うと、辻褄が合うようにまとめるために、クライマックスでは、あまりカタルシスを感じる話ではなくなっていったようにも思います。
これが作者としての、複雑なレイヤーを持つストーリーのまとめ方だったのだろうと思いますが、読者として個人的には、せめて、これまで同様因縁の四角関係が続く、、でも良かったと感じるのですが、できれば少なくとも双子の兄妹アクアとルビー、厳密に言うならゴローとさりなの何らかのハッピーエンドを見たかったと思います。
例えばアクア(ゴロー)とルビー(さりな)が結ばれれば、ゴローは、前世で患者として親身に接した少女の生まれ変わりであり、かつて推しであったアイの子供かつアイそっくりに育った女性と添い遂げることができ、さりなは前世で好きだったせんせーと添い遂げることができます。
しかし、現世では兄妹であり法律上結婚はできず、転生してきていることは周りに伏せている以上(伏せているというか、本来相容れないストーリーのレイヤーのため、最後まで交わらせていない)、そこがくっつくことは周りに理解されないという縛りも存在しているため、手続きとしての「結婚」はせずに一緒に暮らすことにするだろうとは思います。
転生してきていることは、謎の少女を除けば、最後まで当事者以外に明らかにせずにストーリーをまとめ切っています。
ストーリー上、別展開の可能性があるとすれば、ストーリー中で少し描かれている、アイは実はカミキヒカルを嫌って別れたのではなく、思いやりのためだったという点です。
本当はまた一緒に暮らすつもりだったことを知ったカミキヒカルが、アイを死に追いやったことを後悔し自殺する、などの展開であれば、その事実をカミキヒカルに突きつけたアクアは復讐を全うし、驚異は排除され、また三角関係、四角関係のストーリーに戻ることができます。ただ、カミキヒカルには別の女性との子供がいることで、アイがヨリを戻すことはないようにも見えます。
まあ、人によって感じ方は違うだろうと思います。
一定の着地にはなっているもののなんとなく釈然としない主な原因は以下の点だと思います。
●このストーリーは、大きな枠組みでは復讐劇だが、そもそも「明かされていない自分たちの父親が犯人への情報提供者だろう」というアクアの憶測が出発点のため、最終的にはその憶測通り「明かされていない自分たちの父親が犯人への情報提供者」だったものの、ストーリー中では憶測に基づいた「復讐のための父親探し」にあまりリアリティが感じられない。
●さらに、たくさんの登場人物がいる中で「父親探し」はアクアが個人的に裏でやっており、ストーリーを通してあまり描かれない。むしろ、恋愛リアリティショーやマンガ原作の舞台、そしてそれらを通したかなやあかねとの関係性やルビーのアイドル活動をほぼ描いており、途中で思い出したように父親を「ぶっ殺す」というような表現をさせているが、その本人カミキヒカルのことは特にストーリー前半は読者にも明かされずさほど深堀されておらず、読者としてはかなやあかねとの関係性に比べると「父親への復讐」に感情移入出来ない。
●それでも後半には、アクアのリークや映画制作を通して、アクアやルビーとアイや父親のことは周囲の人が知ることになるが、アクアとルビーの「前世から繋がる、このストーリーにおける最大の(最も大枠の)ドラマ」は読者からは見えるが他の登場人物たちは最後まで全く知らないため、当然彼らのリアクションは全く描かれない。
カミキヒカルのキャラクター、自分は手を汚さずに眩しい者を殺していく人格がどう出来上がっていったのか、読者がかなり脳内補完をしないと不明確です。
若い頃は、素質のある駆け出し役者だった
姫川愛梨に手籠にされた
同じ頃アイとも付き合っていた
愛梨との事を姫川の旦那に話し、逆上した旦那は愛梨と心中
金田一に、お前が背負っていくんだ、二人の命を、と言われるが、重すぎていっぱいいっぱい
アイに依存しようとするが、アイは、大輝がカミキと愛梨の子供と知っており、君を愛せないと言い、別れた。しかしアイはホントはカミキの事を思っていた。
アクアとルビーが産まれた。
アイは、カミキに電話し、子供達が大きくなったから会わない?と言って住所を教えた
カミキにそそのかされた良介がアイ宅へ行き、殺害
という流れだと思います。
自分を手籠にしていた女を引き連れて、逆上した旦那が心中し、同時期に付き合っていたアイに見放されたと思い、精神的に壊れていった、ということだと思います。しかしこの心理の流れに共感出来る人もいるかもしれませんが、個人的には理解出来ないというか、気持ちに入ってきませんでした。
また、アイは大輝がカミキと愛梨の子供と知っており、少なくとも口では君を愛せないと言って別れましたが、それでもカミキを思っていて、それをアクア達に伝える為にDVDを監督に託した、という心理の流れも共感出来る人もいるかもしれませんが、個人的には理解出来ないというか、気持ちに入ってきませんでした。
前述の通り、カミキが命の重さに押し潰されそうになった、というのがどういう状態かよくわかりません。「私達が居なくなればきっと彼は大丈夫だと思った」「本当は彼とずっと一緒に居たかったから」という心理もよくわかりません。
むしろ、かなやあかねの心理の方が描かれており、理解しやすいです。