曲がり角に来た社会、曲がり角に来たVTuber文化
ここのところVTuber(バーチャルYoutuber)の「卒業」が増えていますが、チャンネル登録者数トップのがうる・ぐら(2025年4月16日現在457万人)が日本時間2025年5月1日に卒業すると、本人の発表がありました。運営、会社との方向性の違いが理由とのことです。
important announcement – gawr gura
https://www.youtube.com/watch?v=7WFg2wq10rw
社会の変化に伴ってVTuberの状況も変わっていくだろうと思っていましたが、ここまで「卒業」が相次ぐ状況になるとは想像しておらず、あっという間だったという印象です。
フェイストラッキング、モーションキャプチャーの技術の一般化を背景に、アニメ風のキャラクターがリアルタイムに話し、動き、ライブ配信であればリアルタイムで視聴者(VTuberの視聴者はなぜかリスナーと表現される)とやり取りも出来るVTuberは、見る側にとって新鮮な面白さがあったと同時に、演者側にとっても、顔出しをせずにアニメ風キャラクターで、おしゃべりやゲーム配信、歌などを、録画された動画又はライブ配信で出す楽しさがあったと思います。
余談ですが、フェイストラッキング、モーションキャプチャーの技術の一般化は、CG技術発展期にCG制作をしていた身としては驚くばかりの進化です。当時一体誰が、「
そうした新しい表現は「発展途上で様々な可能性を秘め」ながらも、しかし「爆発的な人気の盛り上がりが生まれ、その活動を収益化出来る」ようにYoutubeプラットフォームが成熟したタイミングだったことで、そこにズレがあり、その理想的な組み合わせに魅力を感じた(夢を見た)多くの人が「楽しいことをしてお金を稼ごう」と殺到してVTuberデビューをするようになったと想像しています。
しかし「楽しいことをしてお金を稼ぐ」のは、競争相手が増える中ではなおさら簡単ではなく、規模が大きくなればネガティブな要素も当たり前のように増え、一方社会では、経済の低迷や国内と世界の不安定な情勢が同時に起こり、結果として1つにはネット上の治安が悪化し荒らしや誹謗中傷が増え、もう1つはビシネスを安定化又は拡大していくためには、楽しいこと、やりたいことだけをしているわけにはいかなくなり、プレッシャーも大きくなり、おそらくそのために、稼ぐことよりも「自分らしく楽しく活動」したかった「活動開始時期が早いタレント」ほど「方向性の違い」が生まれやすく、卒業していく流れなのではないかと考えています。
ただ今後もVTuberという表現方法は、芸能・タレント・その他の表現活動の形態の一つとして多様化しつつ続いていくと思います。
既に「VTuber」と「アバターを使ったYoutuber」の区別もなくなってきました。
しばらくは「企業勢」における運営とタレントのあり方の模索が行われるかもしれませんがそれは芸能人や役者の状況と同様です。もっといえば社会では「会社」と「従業員」のあり方も変化しており、通じる部分があります。また、「企業勢」か「個人勢」かというのは、「会社員」か「フリーランス」かと言っているのと同じようなものです。(厳密には違います)
ガチ恋勢、ユニコーンが発生したのはVTuberがアイドル文化の一つの形態として大きくなった結果で、タレントによっては度を越したガチ恋勢、ユニコーンに悩まされる場合もあると思いますが、ファンの特徴は実のところそれぞれの演者にかなり依存しているように思われ、今後、結婚して子供もいる(産まれる)VTuberも増えてくるのではないかと思います。
また今のところ、VR・MRによるVTuber活動が思いのほか一般化していない印象で、「普通の女の子がモーションキャプチャーやグリーンバックも使いながら配信する」時代になったスピード感に比べると、「一般化するのがものすごく遅い」印象です。
演る方も見る方も技術・機材のハードルがあるためだと思いますが、今後何かをきっかけに増えてくるのではないかと思います。ただ、そうなっても、VR・MRによる活動は特にタレント側に向き不向きがあり、Live2Dを使った素朴な配信を好むタレントは多いだろうと思います。
▶︎キズナアイの魅力とバーチャルYouTuber文化に果たした役割の考察