バーチャルYouTuber がうる・ぐら(Gawr Gura)の人気の理由の考察

バーチャルYouTuber がうる・ぐら(Gawr Gura)の人気の理由の考察

バーチャルYouTuber(VTuber)がうる・ぐら(Gawr Gura)のチャンネル登録者数が2021年7月4日に300万人を超えました。これはバーチャルYouTuber史上初めてとのことです。

2022 06 18 追記
2022年6月16日にチャンネル登録者数が400万人を突破しました。
 

がうる・ぐらYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCoSrY_IQQVpmIRZ9Xf-y93g

ここでは、なぜこれほどの人気があるのか、その理由について考察したいと思います。がうる・ぐら特有ではない要因も含みます。目新しい意見ではなく、多くの人が同じように感じているのではないかと思います。

▶︎English version of this post is here.

がうる・ぐら(Gawr Gura)

がうる・ぐらは、バーチャルYouTuberグループであるホロライブEN(イングリッシュ)の一期生(2021年7月6日現在一期生のみ)のメンバーの一人で、サメをモチーフに擬人化(?)したデザインで通称サメちゃんと呼ばれて親しまれています。

カバー株式会社の運営するVTuber事務所であるホロライブプロダクションの、女性バーチャルYouTuberグループのホロライブには、生身のアイドルグループのように〇〇期生としてそれぞれ5人を基本単位(ホロライブインドネシアは3人ずつ)とする複数のバーチャルYouTuberが所属して活動しています。

ホロライブEN(イングリッシュ)はその中でも英語を主体とするメンバーによるグループですが、メンバーによってカタコト〜流暢まで差はあるものの、日本語も多少話せます。

がうる・ぐらは日本語の歌は気に入った曲を丸暗記して歌っているのだと思いますが、話すのはカタコトというか断片的ですね。日本語の会話は難しいと思います。

インターネットベース化、グローバル化の中での英語による映像コンテンツ

バーチャルYouTuber自体、一種の発明とも思えるコンテンツのあり方で、見ていて面白く時代に合っていると感じますが、その中でホロライブENは、日本の会社による「英語」の「映像コンテンツ」として注目しています。エンターテイメント/芸能/メディアのインターネットベース化、グローバル化が進む中での映像コンテンツのあり方として先陣を切っていると感じます。

▶︎バーチャルYouTuberに見るエンターテイメント/芸能/メディアのインターネットベース化とグローバル化の加速についてはこちらの投稿をご覧ください。

がうる・ぐらの人気の理由 (The reasons for the popularity of Gawr Gura)
 
キャラクターのデザインがかわいい

バーチャルYouTuberの魅力は特に女性タレントの場合、基本的にはアニメ調の「見た目(キャラクターデザイン)」と「中の人のキャラクター(性格)」のかけ合わせによってできていると思いますが、当然そのうちの一つである「見た目」は極めて重要です。

バーチャルYouTuberのデザインはかわいい見た目である場合が多く、おそらく海外の人から見ても魅力的なのではないかと思います。

アニメ調の絵柄はすでに世界の多くの場所に浸透している
海外の人と話すと、日本のアニメやマンガが世界中で人気があることに驚きます。アジアやアメリカで人気があるのは想像していましたが、私が留学中に会った人の中でも、アジア人やアメリカ人だけでなく南アフリカ人やサウジアラビア人にも日本のアニメが好きな人がおり、しかもたいてい私よりずっと詳しかったです。アニメ調の絵柄はすでに世界の多くの場所に浸透していると思います。

がうる・ぐらのキャラクターデザイン
がうる・ぐらのキャラクターも、アニメやマンガ文化の延長で世界中の多くの人がかわいいと感じるデザインだと思います。

衣装はサメがモチーフになっており、しっぽもあるほか、時折開いた口から見える歯がサメらしくとがっているのもアクセントになっています。

親しみを感じるかわいさ
「バーチャルYouTuberのデザインはかわいい見た目である場合が多い」と書きましたが、特にホロライブのバーチャルYouTuberのデザインは親しみを感じるかわいさを意識していると感じます。がうる・ぐらも同様です。

単にキレイ・かわいいだけではない表情の幅
また、生身の人間の場合にも通じるのですが、アニメやバーチャルYouTuberの表情を含むキャラクターデザインは、単にキレイ・かわいいだけよりも、イヤミにならない範囲で時にイタズラっぽく「ニヤリ」としたり、自慢ぽく「エヘン」という表現をしたり、ジト目や「うへへへ」といったニュアンスなど表情の幅があると魅力が増します。

がうる・ぐらもいいバランスでそういった表現が出るのが魅力につながっていると思います。ほおを赤らめる表情もあります。

低めの見た目年齢のキャラクターで、広い年齢層の視聴者に受け入れられる

上記ともつながりますが、がうる・ぐらはバーチャルYouTuberの中でも比較的見た目の年齢が低い女の子のキャラクターのため、大人から子供まで広い年齢層の視聴者に好かれるキャラクターだと思います。デビュー配信で本人が記した設定年齢は9927歳ですが。

もともとアニメキャラクターは、設定されている年齢より若く描かれることが多いですが、がうる・ぐらは中の人も比較的若いと思われ、それが反映されていると思います。

毒のないキャラクター(性格)

見た目のデザイン、低めの見た目年齢と併せて、中の人のキャラクターや扱う動画内容の相乗効果として、毒のないキャラクターであることも多くの人に愛される要因になっていると思います。

バーチャルYouTuberによっては、中の人のややきつめな性格が現れている場合があるほか、サブカルネタ、下ネタ、ブラックな演出、社会不適合など、ある種の毒を特徴にしている人もいてそれぞれ面白いのですが、がうる・ぐらの毒のない性格の良さは多くの人に受け入れられやすいと思います。

他のメンバーとのコラボによるゲーム配信などでたまにいたずらをすること、そこはかとない「クソガキ」感がいいバランスになっています。

また、がうる・ぐらはいわゆるポンコツではないものの頭脳明晰すぎるわけでもなく、等身大で親しみやすいことも好かれる要因だと感じます。

ユーモア

毒のないキャラクターですが、ユーモアがあることも魅力になっています。

自分の姿を画面中で小さくして機械的に声のピッチをあげてみたりすることがあるほか、「たまにいたずらをする」ことや、そこはかとない「クソガキ」感もユーモアにつながっていると思います。

初配信の冒頭でホロライブENのスタイリッシュ寄りのイメージビデオが流れ、うって変わってほのぼのとしたBGMと待機画面のアニメがしばらく続いたあと姿を現し、少しキョロキョロというかタイミングを見はからっているような素振りをしたあと口を開き、サメらしく尖った歯が面白いなと見ていると、第一声が「あ」でした。

「a」と表現されますが、「エイ」でも「エー」でもなく「ア」です。そしてまた待機画面に戻るというユニークな始まり方をしました。

咳払いをするでもなく、マイクに向かってしゃべる前の「アー、アー」でもなく、潔く一言だけはっきりと「あ」と言ったので、かなりキャッチーだと受け止められたようで、その部分のみの切り抜き動画も作られました。つかみ十分といったところです。

中の人がすでに配信者として実績がある

インターネット上の情報によるとがうる・ぐらの中の人はがうる・ぐらとしての活動の前にすでに別のアニメ風キャラクターのアバターで配信者として人気があったようで、その経験と実力が活かされていると思います。

他のバーチャルYouTuberの中にも、配信者としての実績がある状態でバーチャルYouTuber活動をする例はあり、経験がある方が配信内容や視聴者とのやり取りなどに慣れを感じます。

英語をメインにしている

ホロライブENの活動は英語を主体としており、がうる・ぐらも基本的に英語で配信します。このことは当然ながら世界中の視聴者に受け入れられやすい要因になっていると思います。

バーチャルYouTuberの先駆けであり日本語で配信しているキズナアイも、デビュー当初すでにコメント欄には英語のコメントが多かったです。初期の頃から世界中の人がバーチャルYouTuberの魅力を感じており、英語主体の配信となればより世界中の視聴者が楽しみやすく、多くの視聴につながっていると思います。

▶︎キズナアイの魅力とバーチャルYoutuber文化に果たした役割の考察についてはこちらの投稿をご覧ください。

日本語も多少話せる

逆に、英語だけではなく日本語も多少話せることで、特に日本の視聴者にとっては魅力的に感じるのではないかと思います。

「どうもーサメです」という日本語の挨拶が定番になっていますが、サメを擬人化した英語がメインのかわいい女の子のキャラクターが「どうもーサメです」と挨拶するのは、日本の視聴者の心をわしづかみにしたポイントの一つだと思います。

がうる・ぐらは後述のように日本語の歌を歌ったり、日本語学習ソフトに取り組む様子も配信しており、等身大で親しみを感じられる要因になっていると思います。

声が魅力的

声の質がアニメ声優にも通じるいわゆるアニメ声といっていい声質で、そこはかとない「クソガキ」感にもつながり、これも魅力となっています。機械的に多少ピッチを上げているかもしれませんが、しゃべりかたや「ふははは」という笑い方も含めてがうる・ぐらのキャラクターに合っていると思います。

バーチャルYouTuberによって、キャラクター(デザイン)と声のマッチング、一体感の度合いは様々ですが、がうる・ぐらはその度合いが高く、「がうる・ぐら」というキャラクター性を強固にしていると思います。がうる・ぐらのデザインをしたイラストレーターの甘城なつきさんのセンスなのか、甘城さんを起用した人のセンスかはわかりませんが、成功している例の一つだと思います。

海外のアニメファンには、英語などによる吹き替えよりも、日本語のオリジナルの音声で字幕で見ることを好む人が多いようです。オリジナルの声優の声の表現に魅力を感じているためです。声は極めて重要です。がうる・ぐらは英語でアニメ声で話しますので、海外の視聴者には字幕の必要もなくそのまま受け入れられていると思います。

中の人が「がうる・ぐら」であることに自覚的

がうる・ぐらの中の人がすでに配信者として実績があることや、キャラクター(デザイン)と声のマッチング、一体感の度合いが高いことにもつながるのですが、おそらく中の人は、「がうる・ぐら」であることに自覚的だと思います。

バーチャルYouTuberによっては、アニメ調キャラクターのアバターを使っていても中の人が自分自身のパーソナリティで喋っている度合いが高いと感じるタレントもいます。

がうる・ぐらの場合は、「見た目(キャラクターデザイン)」と「中の人のキャラクター(性格)」と「声」のマッチング、一体感がありますが、それがキャスティングした人やイラストレーターのセンスによるものであれ、偶然であれ、中の人は「がうる・ぐら」の魅力に自覚的で、配信内容や喋り方などを通してがうる・ぐらとしてふるまっていると感じます。

歌がうまい

がうる・ぐらは歌もうまいです。日本語の歌も多数歌っており、運営側のアドバイスもあったのかもしれませんが、初配信で、ひととおり自己紹介をした後の歌で山下達郎の『RIDE ON TIME』をチョイスしたセンスもいいと思います。

ジャズからアニソンまでレパートリーが広く歌唱力も際立っています。

2021年6月21日にオリジナル曲「REFLECT」も発表し、独特の楽曲で、2021年7月6日現在すでに500万回以上再生されています。

▶︎「REFLECT」の感想と考察についてはこちらの投稿をご覧ください。

ゲームがうまい

特にリズムゲームに能力を発揮していることと、ホラーゲームが好きなことも間口を広げていると思います。ドラマ性のあるSFホラーゲームである『SOMA』などもやっています。

頻繁な更新

バーチャルYouTuberや通常のYouTuber全般にも言えることですが、投稿頻度が高い方が視聴者の目に止まりやすく、再生されやすく、登録者数に結びつきやすい傾向があります。がうる・ぐらも高い頻度で更新しており、人気に結びついていると思います。

単独ではなくグループである

がうる・ぐらに限りませんが、ホロライブのバーチャルYouTuberは〇〇期生として5人を基本とするグループが複数デビューしており、グループ内や他の期生とのコラボレーションをすることで配信内容や話題に事欠かず、相乗効果があると思います。

実際、ホロライブのバーチャルYouTuberの登録者数は100万人を超えている人が多数います。

ホロライブENのメンバーは日本語も多少(カタコト〜流暢)話せるため、ホロライブEN内での英語でのコラボだけでなくホロライブの日本人メンバーともコラボを行っており、他のメンバーが話題にしたりすることで認知されやすく、他のメンバーのファンがこちらも見てファンになるということは多いと思います。

切り抜き動画の広がり

「切り抜き動画」とはYouTube上の動画の面白い部分を第三者が短く切り抜いて自分のチャンネルで投稿することで、YouTube上で長めの動画を投稿する著名人やバーチャルYouTuberの動画に多く見られます。元動画の投稿者の許可なく行っている場合は違法となる行為ですが、長い配信・動画を見ている時間のない視聴者にとっては便利で、また切り抜き動画が元動画やその作者の宣伝として機能する場合も多く、黙認されることも多いと思います。

ホロライブプロダクションではガイドラインを遵守することを条件に二次創作を認めており、ややグレーゾーンかもしれませんが、切り抜き動画は二次創作として行われているということだと思います。

がうる・ぐらの動画にも多くの切り抜き動画があり、広く認知されるきっかけになっていると思います。

ステイアットホーム

ホロライブENは現在一期生しかいませんが、デビューはコロナ禍の2020年9月です。新型コロナ以前からすでにメディアのインターネットへの移行は進んでいましたが、新型コロナ対応によるステイアットホー厶によって自宅でのエンターテイメント視聴が加速したことも、がうる・ぐらを始めバーチャルYouTuberの人気を加速させる要因になったと思います。

例外はありますが配信側も視聴者側も家にいて完結できるため、ステイアットホーム、リモートの時代にマッチしています。

まとめ
 
ビジネスモデル

ハリウッドの映画産業は、世界中からタレント(映画制作者や役者やVFX制作者など)を集めて作ったコンテンツを世界に向けて展開し、そこから得た収益を次の原資にするビジネスモデルですが、ホロライブも、世界中から集めたタレントで世界をターゲットにした展開となっており、今後のエンターテイメントの流れの先陣を切っていると思います。

がうる・ぐらはその象徴的な成功例の一人だと思います。

ホロライブEN2期生

ホロライブENはすでに第2回のメンバー募集が行われたようですが、がうる・ぐらのような要素、特徴を併せ持つタレントはまた出てくるのでしょうか。

2021 07 07 追記
ホロライブENへの新メンバー、アイリス(IRyS)が発表されました。VSingerと表現されています。2021年7月11日デビューとのことです。
2期生ということではなく、新メンバー加入という位置付けのようです。
デビューPVは早くも多数再生されており、期待の高さがうかがえます。

デビューPV
日本語版
https://youtu.be/g3na7RtgoaM
英語版
https://youtu.be/242NgSGBo54

 
2021 08 26追記
2021年7月11日にアイリス(IRyS)がデビューし、日本語のうまさとポンコツ味のある面白い性格が特徴となっていますね。中の人の出身を考えるのは無粋かもしれませんが、帰国子女かハーフかと思わせる日本語のうまさです。
2021年8月23日にホロライブENの2期生がデビューしました。正確には「期生」というくくりではなく新グループということのようです。相変わらずホロライブ、ひいては現状のバーチャルYouTuberの世界観をこわさないキャスティングをしていると感じます。
一方今後人数が増えるにつれて、ホロライブとしてのまとまりを維持していくのは難しくなっていくかもしれません。
ホロライブEN YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCotXwY6s8pWmuWd_snKYjhg/featured

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