日本語の場合、手紙や招待状などの宛先において相手の名前につける敬称は、相手が幼い子供の場合を除き、男性女性問わず名前の後ろに「様」がつきますが、英語の場合は名前の前につきます。男性の場合は「Mr.」だけですが、女性の場合は「Miss」「Mrs.」「Ms.」があります。
別の投稿で、『英語には「先輩」「後輩」に当たる言葉がなく、「先輩」「後輩」といった表現がある点から見ても、日本人にとっては、組織やグループでの在席期間や年齢に基づく上下関係が重要視されている事がわかる』と書きました。
言語は、その土地の人々が何に関心を持ってきたか、重要視してきたかが反映されていると思います。
「Miss」「Mrs.」「Ms.」も、英語圏の人々の女性の敬称についての意識が反映されてきたようです。
Miss:未婚女性の場合(年配の未婚女性の場合はMs.が好まれる場合もある)
Ms.:婚姻状況に関わらず中立的に使用する場合や婚姻状況がわからない場合
Mrs.:既婚女性の場合(配偶者が亡くなった後や離婚した後でも「Mrs.」が好まれる場合もある)
「Miss」も「Mrs.」も「Mistress」の略語で、長い歴史の中で様々な意味合い、使われ方をして今に至るようです。
mistressはmasterの対語
「Mrs.」の称号は「Mistress」と発音され、何世紀にもわたって結婚しているかどうかにかかわらず、社会的地位の高い成人女性に適用されていたようです。
「Miss」は、18世紀半ばに初めて成人女性に使われ、それ以前は、「Miss」は女の子にしか使われておらず、「Master」は男の子にしか使われていなかったとのことです。大人の女性を「Miss」と呼ぶことは、その女性が売春婦であることを意味していましたが、社会的に野心のある若い独身女性が使うようになりました。
「Miss」が社会的に地位の高い未婚の女性を指すために使われたことに伴い19世紀後半に「Mrs.」が既婚女性を意味して使われるようになり、それが現在の「Mrs.」の使い方につながっているようです。
参考
18世紀:西暦1701年から西暦1800年までの100年間を指す世紀
19世紀:西暦1801年から西暦1900年までの100年間を指す世紀
20世紀:西暦1901年から西暦2000年までの100年間を指す世紀
21世紀:西暦2001年から西暦2100年までの100年間を指す世紀
20世紀になり、「Miss」や「Mrs.」に代わる中立的な表現として、また「Mr.」に直接相当する表現として、「Ms.」の導入が提案されました。
「Miss」か「Mrs.」という未婚か既婚かを示す表現はせず「Ms.」という表現も使われるようになって久しいですが、いまだに「Miss」と「Mrs.」も残り、近年ではこれらの表現を嫌う女性が増えているように見えます。
参考、リファレンス
Mistress, Miss, Mrs or Ms: untangling the shifting history of titles
https://www.cam.ac.uk/research/news/mistress-miss-mrs-or-ms-untangling-the-shifting-history-of-titles