ストーリー開発の苦労と楽しさ

ストーリー開発の苦労と楽しさ

ストーリー開発は楽しいですが、色々と苦労もします。ここではログライン、プロット、キャラクターなどストーリー開発で意識すべきポイントや、ストーリー開発上の選択肢について書こうと思います。

ストーリー開発上のポイント

ストーリーを開発する出発点はごく基本的なアイディアから始まりますが、その基本的なアイディアは、特徴のあるキャラクター、断片的なエピソード、ビジュアルイメージなど様々です。脚本家や監督によってそれぞれのスタイルがあると思います。

それらの基本的なアイディアをもとに、ストーリーの芯となるログラインを考え、プロットやキャラクターを開発し、まとめていきます。

ログライン

ログラインとは「どういう人物が何をする」話なのかを完結に表現する文です。一般的に一文(1センテンス)で、これが簡潔で魅力的であるのが良いとされています。

ログラインの例を紹介しているサイト(英語)
https://screencraft.org/2019/07/29/101-best-movie-loglines-screenwriters-can-learn-from/

ログラインは、見たくなるYouTubeタイトルとも共通点があると感じています。

YouTubeの場合は「文」になっていないタイトルも多く、また、サムネール内の写真や絵や文字で目を惹いたあとタイトルを読むという流れもあり、視聴者が単純にタイトルのヒキで見ているわけではないと思いますが、タイトルそのものも「誰が何をする」ということを完結に表す「文」になっていて面白そうと思わせるものがあります。そういうYouTubeタイトルを見ると、ログラインと共通点があると感じます。

プロットとキャラクター プロットドリブン、キャラクタードリブン

映画は「プロット」と「キャラクター」のバランスが重要とされます。プロットとは出来事のつながり・配置のことで、キャラクターとは登場人物の人間性(見た目や行動、意思や感情とその背景となる性格・人格・潜在意識・経験・価値観・思想・目標などの特徴)のことです。

「プロット」「キャラクター」に関連する対比的な概念として、「プロットドリブン」「キャラクタードリブン」という表現があります。

「プロットドリブン」(Plot Driven=プロット主導)とは、主に出来事のつながり・物事の流れ(を描くこと)によってストーリーが牽引されること、「キャラクタードリブン」(Character Driven=キャラクター主導)とは主に登場人物の人間性(を描くこと)によってストーリーが牽引されることで、映画によってそのバランスは異なります。

どちらかが主の場合もありますし、両方の側面をもつものもあります。SF、アクション、ホラー、スリラーはプロット主導の場合が多いようです。

▶︎プロットドリブン、キャラクタードリブンについては、こちらの投稿もご覧ください。より詳しく解説、考察しています。

このほか、音楽主導(Music Driven)という考え方もあります。ミュージックビデオは音楽主導ですが、映画にも音楽主導あるいは音楽の力も利用してストーリーを牽引しているものがあると思います。

 また、世界観主導と言ったら言い過ぎかもしれませんが、プロットやキャラクターと関連しつつも、プロダクションデザイン(美術デザイン)が密接にかかわり世界観を描くことを重視している映画もあると感じます。SFやファンタジーに多い印象です。

▶︎ 「世界観ドリブン」を感じる映画『DUNE/デューン 砂の惑星』についてはこちらの投稿をご覧ください。

ストーリー開発

最初からキャラクターやストーリーのイメージが明確な場合を除き、ストーリーを開発していく過程で明確にしていくことになります。

考えていくうちにストーリーがぶれることがあるので時々ログラインに立ち返りつつ、全体の構成、キャラクターを作っていきます。全体の構成は三幕構成にすることが多いのではないかと思います。

▶︎三幕構成についてはこちらの投稿も御覧ください。

ストーリー開発上の選択肢については以下で少し掘り下げて書きたいと思います。

ストーリー開発上の選択肢

ストーリー中の様々な要素に対して、通常はいくつかの選択肢が考えられます。登場人物にとっての選択肢というよりもストーリー開発上の選択肢という意味ですが、選択肢の選び方によってストーリーは変化し、また、それぞれの選択肢のかけ合わせのバリエーションは非常に多くなり、どの組み合わせが一番いいのかと考えることもあります。

ストーリー開発上の選択肢の例

・主要登場人物の性格、行動原理、欠点
例えば何かの事件や状況に巻き込まれて解決せざるを得ない状況に陥った主人公が、身体的に屈強な人物なのか弱々しい人物なのか、メンタルは強いのか弱いのか。

身体的に強くメンタルも強い主人公、身体的に強いがメンタルが弱い主人公、身体的に弱いがメンタルが強い主人公、身体的に弱くメンタルも弱い主人公、ここだけでもバリエーションは4つになり、それぞれのストーリーは変わってくると思います。

・主要登場人物の関係性
例えば男女のストーリーの場合、その二人はストーリーが始まった時点で他人なのか、友人どおしなのか、同僚なのか、近所の人なのか、カップルなのか。カップルの場合、恋人同士なのか夫婦なのか。あるいは、いわゆる友達以上恋人未満の関係なのか、どちらかの片思いなのか。

私が制作したあるショートフィルムでは、「主要登場人物の男女は同じ会社の同僚で、男の側が相手のことを好きだけれど伝えられず、女の側はそれに気づいていて、まんざらでもなく気になっている」というのが最初のイメージでしたが、結果的に夫婦にしました。元は長編用のアイディアだったものを短編にアレンジする上でわかりやすくするためと、ストーリーについてディスカッションしている時に、周りの人が、夫婦と解釈しがちだったためです。アメリカでは微妙な関係性より明快なほうが好まれるのかもしれません。

元となるアイディアが同じでも、登場人物の関係性によってストーリーが変わってくる場合もありますし、学生か社会人か、年齢はどのくらいか、若いのか年配なのかによっても関係性が変わり、ストーリーは変わってきます。

例えば、2人の主要登場人物が宇宙を救う話という基本が同じでも、反目し合う二人の男が宇宙を救うのか、若い男女が宇宙を救うのかでストーリーは変わってくると思います。

男女の性格、言いかえるとストーリー上の役割を逆にするとどうなるか考えるのも面白いです。

・行動の有無
主人公が何かをしようとして、実行する場合と思いとどまって実行しない場合、それぞれストーリーは変化します。

・世界観の設定
同じようなあらすじでも、世界観の設定によってストーリーは変化します。
例えば、未来の話でも、現在から地続きの近未来なのか、車が空を飛ぶ近未来なのか、宇宙旅行が盛んな世界なのか、滅びようとしている世界なのかによって、ストーリーは変わってきます。

選択肢の組み合わせの制限

ある選択肢を選んだ場合、別の要素で選べる選択肢が変わってくる場合もあります。そのため、途中で面白いアイディアを思いついても、そのアイディアを取り入れるとすでに考えていた内容と矛盾する場合もあります。その場合は書き直すか、選ぶ選択肢を再検討する必要があります。

まとめ

このように、ストーリーを開発する過程では、ログライン、三幕構成などと同時に、登場人物のキャラクターや設定の選択のしかた、その組み合わせによってストーリーは変化し、それを考えるのは苦労する作業であり、楽しい作業でもあります。