怖い映画(様々な意味で)(ネタバレ含む)

怖い映画イメージ
怖い映画

様々な意味で怖い映画を、自分が見た範囲で独断で選びました。

異形の生物に襲われるストーリー、呪いや悪魔によって襲われるストーリー、催眠療法で異星人接触の恐怖体験が明らかになっていくストーリー、サイコパスな人物の罠に囚われるストーリー、高い場所に取り残されるストーリーなどです。

『エイリアン』(原題:Alien)(1979)

ストーリー
知的生命体からと思われる信号を受けた貨物宇宙船の乗組員達が発信源の星に降り立ち、謎の宇宙船の中で不気味な生物が一人のヘルメットを溶かし顔に張り付いたため自分達の宇宙船に連れ戻すが、幼生が腹を食い破り急速に成長して酸の血液を持つ異形の生物となり、閉ざされた宇宙船の中で襲われる。

怖さのタイプ
密室(宇宙船)の中に潜む俊敏で頑丈な異形生物に襲われる

感想・解説
『エイリアン』のエポックメイキングさは圧倒的で、監督のリドリー・スコットの手腕であると共に、H・R・ギーガーによるエイリアンなどのデザインと世界観の功績が大きいです。

宇宙船のクルーに外見では人間と見分けがつかないロボットがおり、未知の生物を持ち帰る隠されたミッションを遂行しようとしていたのもゾッとします。

45年前の映画であることや見慣れてしまっているせいで、今見ると際立った怖さは感じませんが、それでも十分に怖いよくできた映画です。

エイリアン2より

『ミミック』(原題:Mimic)(1997)

ストーリー
昆虫学者の女が、たくさんの子どもたちが犠牲になった病気を媒介するゴキブリを駆除するため、遺伝子を交配した昆虫を作り地下に放ち抑え込む。3年後、既に死滅しているはずのその昆虫が繁殖し進化していることを知り夫や警官のあとから地下へ行って調査するが、人間に擬態したものも生まれており襲われる。

サイレントヒル2より

怖さのタイプ
遺伝子交配で生まれた後死滅したはずの昆虫が地下で生き延び、人間サイズに変異したものが襲ってくる

感想・解説
映画『エイリアン』に通じるモンスターパニックホラーSFです。

『エイリアン』の影響、又は参考にしているのは明らかだと思います。この映画は『エイリアン』ほど有名ではないかもしれませんが、非常に怖く、よくできた面白いホラーSF映画です。

監督は他に『ヘルボーイ』シリーズや『パシフィック・リム』なども手掛けたギレルモ・デル・トロです。

『エイリアン』に近い怖さですが、全編にわたり不気味さがあります。

変異し人間に擬態した昆虫の化け物がテーマで虫の気持ち悪さも怖さにつながっており、虫がだめな人は見られないかもしれません。タイトルの「mimic」は「物まね」「擬態」「〜の物まねをする」「擬態する」といった意味です。

かつて自分が放って既に死滅しているはずの遺伝子合成昆虫がまだ生存してしまっているかもしれないと思い、人間サイズになっているとは知らず地下を探索する主人公の昆虫学者の女や、お金をもらうために珍しい昆虫を捕獲しようとする無鉄砲な少年たち、化け物の潜む場所にわざわざ潜り込んでその化け物の出す音を真似してスプーンをカタカタ鳴らす知恵遅れの少年など、それぞれ危険に無自覚に化け物に近づいていくのが怖いです。

遺伝子捜査で作った昆虫が繁殖して生き残り化け物になっていることと対比して、主人公が妊娠していなかったことが描かれ、生殖についてのセンシティブな感情が呼び起こされることも怖さに結びついています。

『リング』(1998)

ストーリー
「見た者は死ぬ」呪いのビデオのうわさを取材しているテレビディレクターの女が、不審な死に方をした自分の姪やその同級生達もビデオを見たことを知る。彼らがそのビデオを見たロッジに行き不審なビデオを見つけ思わず見てしまったあと、死んだ人たちの経験同様に不審な電話もかかってきて、霊感のある元夫の協力を得て、死ぬまでの1週間でビデオのルーツに迫る。

怖さのタイプ
呪いのビデオを見てしまった女が幻視霊感のある元夫と共に呪いのルーツにせまり、明らかになっていく。一件落着と思った後も呪いは終わっていない

元ネタ・事実に基づくか
明治末の日本で実際に起きた「千里眼事件」が元になっている。(ウィキペディアより)

感想・解説
怖さ、怖い演出は控えめですが、主人公のテレビディレクターの女とその元夫が、呪いのルーツに迫っていき、呪いの主が呪いを発する原因となったストーリーが明らかになっていく様子がきっちり描かれています。

ビデオを見てから1週間後に死ぬという設定にすることで、その時が迫ってくる緊張感の中で色々と調べ、行動する様子が表現されています。

主人公の感情が高ぶる演技にややわざとらしさを感じますが、元夫が霊感というかある種の幻視能力を持っていることが観客に対して明らかになっていき、二人のドラマが要素の一つになっています。

一件落着と思った後が怖いです。

『ディセント』(原題: The Descent)(2005)

ストーリー
地下洞窟探検中に崩落があり閉じ込められた6人の女たちが、暗闇の中、人のような姿をした化け物(肉食地底人)たちに襲われる。

怖さのタイプ
崩落で地下の洞窟に閉じ込められた上に暗闇で謎の化け物たちに襲われる恐怖と絶望感

感想・解説
登場人物たちは極限状態の中でさらに想像を絶する悪い状況に襲われます。閉所恐怖症の人は見られないかもしれません。地下の洞窟に閉じ込められる怖さだけでなく暗闇で謎の化け物たちに襲われる怖さが掛け合わされ、泥まみれ、血まみれで、人間関係の闇も明らかになってきます。

緊張感、絶望感がハンパでない映画です。初めて見た時はかなり怖かったことを覚えています。

『サイレントヒル』(原題:Silent Hill)(2006)

ストーリー(あらすじ)
夢遊病で「サイレントヒル」という謎のことばを発する養女を持つ母が、サイレントヒルという街が実在することを知り夫の反対を無視して娘と共にそこへ行くが、事故で気を失っている間にいなくなった娘を探すうち、カルトの犠牲になった少女の呪いが作り上げた不気味でグロテスクな世界に迷い込む。

怖さのタイプ
サイレンと共に現れる、現実を超えた不気味でグロテスクな世界

解説・感想
ゲームの世界観をうまく映画として昇華していると思います。不気味なビジュアルと音楽・音響によって特徴的な作品となっています。

主にサイレントヒルの街とクリーチャー(化け物)たちが特徴的です。

サイレントヒルの街は、「30年前のサイレントヒル」「現在の現実のサイレントヒル」「霧に包まれたサイレントヒル」そして、サイレンとともに現れる「闇のサイレントヒル」が出てきます。特に「闇のサイレントヒル」は、30年前の火災の記憶を建物が持っているかのように炎が燃え侵食されているだけでなく、不気味なクリーチャーや虫が出てきます。それはカルトの犠牲になった少女の呪いが作り上げた、現実を超えた不気味でグロテスクな世界です。

ゲーム『SILENT HILL』の『1』から『4』までの音楽と効果音、そして『3』からは音以外にプロデューサーとしても関わった山岡晃さんが、この映画の製作総指揮を務めています。音楽担当者がプロデューサーを務めるのは珍しいと思いますが、それだけゲーム『SILENT HILL』では”音”を重要視していたということだと思います。

映画ではゲーム中の音をほとんどそのまま、しかもノイズ感を出すためにあえて音質の良くないプレイステーション2と同じ音を使っているとのことです。(映画のパンフレットより)

キャッチーで癖になる不気味な音楽と、繰り返すインダストリアルな音響が雰囲気を盛り上げています。

以下の記事で詳しく考察しています。

▶︎不気味な世界観のファンタジーホラー映画『サイレントヒル』の感想(ネタバレあり)

サイレントヒル2より

『THE 4TH KIND フォース・カインド』(原題: The Fourth Kind)(2009)

ストーリー
アラスカの都市ノームに住む、同業の夫を自殺で亡くしたが殺されたと思っている心理学者の女が、睡眠障害と奇妙でおぼろげな記憶を持つ患者たちに催眠療法でその時の様子を思い出させるが、ある人は恐怖でパニックを起こし、その後家族を巻き込んで自殺してしまう。彼女自身の録音テープにも記憶にない自分の悲鳴と謎の言葉を話す自分以外の声も入っており、異星人による接触や拉致ではないかと思い始めシュメール文明の専門家の協力を得る一方、警察からは逆に一連の事件は催眠が原因ではないかと疑われ監視下に置かれるが、警官が監視する家から娘が失踪する。

怖さのタイプ
催眠療法で異星人の接触が明らかになっていくが、被験者は恐怖でパニックを起こし、また、心理学者の女自らも同じ経験をしていることを知る

元ネタ・事実に基づくか
「実際の出来事」に基づくとして映画が発表されたが、フィクションだとする意見もあり。

感想・解説
非常に怖く、よくできた映画だと思います。

「フォースカインド」は第四種接近遭遇の意味で使われています。「第四種接近遭遇」とは、異星人による拉致のことです。

この映画はドキュメンタリー風に作られています。「実際の出来事」に基づいているとして、ところどころ「実際の映像」と演技の映像を並べています。

「実際の映像」として、この映画の監督がアメリカのチャップマン大学でこの映画の主人公である心理学者の女性へインタビューをしたとする映像や、彼女が患者へ催眠療法を行っている時に撮影したとする、患者に起こった衝撃的な異変の様子がノイズ混じりで記録されている映像が使われています。

しかしネット上には、この話は「実際の出来事」ではなくフィクションだとする情報が見られます。

仮にこの「実際の映像」が作り物だったとしたら、そこに写っている当人その他の人物は役者ということになりますが、その演技はメインの役者達をしのぐほどです。

映画やテレビドラマなどについて批評家と観客の評価とレビューを掲載しているウエブサイトRotten Tomatoesによると、この映画の批評家の評価は低く観客の評価も低めですが、個人的には面白かったです。

以下の記事で詳しく考察しています。

▶︎ドキュメンタリー風ホラー映画『THE 4TH KIND フォース・カインド』の感想(ネタバレあり)

『インシディアス』(原題: Insidious)(2010)

ストーリー
家族が引っ越してきた家で幼い長男が謎の昏睡状態になり何ヶ月も治らず、怪しい人影が現れるなど奇怪なことも起き、別の家に引っ越すが状況は変わらない。父の母親が知る霊能者の女を呼び、長男が幽体離脱したままになり空(から)の身体を悪魔が狙っていることが分かり、霊能者の女が長男の魂とコンタクトしたあと父があちらの世界に行き、悪魔・悪霊達の中から息子を助けようとする。

怖さのタイプ
家族が引っ越してきた家で幼い長男が謎の昏睡状態になり何ヶ月も治らず、怪しい人影も現れる。長男の身体を狙う悪魔との戦い

感想・解説
家族が引っ越してきた家で奇怪なことが起きるという定番のストーリーですが、ここでは息子が謎の昏睡状態になり、ずっと治らず、怪しい人影が現れるなどの様子が描かれています。

夜中、赤ん坊の部屋の窓の外に人が立っていたり、チェーンをした玄関のドアが開けられているなどの奇怪なことが起きます。本来そのようなことがあったらまず警察に連絡すると思いますが、ここではホラーという前提で見てしまっているため、妻が「不安でたまらない。この家が怖い」と言ってまた引っ越すのを、特に違和感なく見てしまいます。

ライティングが美しく音響が印象的です。

前半は全般的に静かな印象で、後半は悪魔や悪霊と対峙するため騒がしくなってきますが、全般的に音で雰囲気を作り、静けさも効果的に挟んでいます。静けさの中、息を殺した呼吸の音、金属の棒を持ち上げる時に金属がこすれる音など、細やかな音を入れて、静けさと緊張感を演出しています。

監督は映画『死霊館』(2013)と同じジェームズ・ワンで、『インシディアス』(2010)が先です。

また、父親役も『死霊館』にも出演している俳優パトリック・ウィルソンです。

様々なアイディアを詰め込み、キッチュな要素もあり、やや荒削りというか実験的な部分もあるものの十分に面白く、ジェームズ・ワン監督にとっても、この映画をきっかけにしてさらに洗練させたのが『死霊館』シリーズかもしれません。

『死霊館』(原題:The Conjuring)(2013)

ストーリー
心霊現象の専門家夫婦が、田舎の古い家に引っ越したあと心霊現象に襲われ始めた家族から相談を受け泊まり込みの調査を始めるが、依頼家族の母親が悪魔に憑依され子供を殺そうとする一方、専門家夫婦の娘も狙われはじめる。

怖さのタイプ
悪魔に襲われる

元ネタ・事実に基づくか
超常現象研究家のウォーレン夫妻が、これまでに調査したものの中で「最も邪悪で恐ろしい事例」としてこれまで封印してきた、1971年に体験した事件が元(ウィキペディアより)

感想・解説
さまざまな怪奇現象が起きます。怖いです。

家族が田舎の古い一軒家に引っ越した時、犬が中に入ろうとしない。
翌朝、犬が死んでいる。
娘の一人が夜歩きをする。
妻に身に覚えのないあざができる。
鳩が落下して死ぬ。
娘の一人が寝てるあいだに足を引っ張られる。
娘は寝ているのに、手を叩く音がする。
母が起き上がって娘たちの寝ている様子を確認していると、勝手に階段の壁の写真などが落ちる。
地下のピアノの音がする。地下に向かって「閉じ込めてやる」と叫ぶと、ドアが急に締まり、母は地下にころげおちる。
娘の一人シンディがクローゼットに頭を繰り返し自分でぶつける。
姉がシンディを自分のベッドにねかせるが、クローゼットから音がする。姿が見え、襲われる。

心霊現象の専門家夫婦が、憑かれた家の母から見てほしいと頼まれ見にいきますが、状況は悪化し、専門家夫婦はその後除霊しようとします。専門家夫婦の娘も狙われはじめます。

音響がうまく演出されていて非常に怖いです。

『イット・フォローズ』(原題: It Follows)(2014)

ストーリー
人の姿をした自分にしか見えない魔物が追いかけてきて襲われる呪いを移された若い女が、友人たちの協力でそれから逃げる。

怖さのタイプ
自分にしか見えない化け物がどこまでも追ってくる

感想・解説
“魔物”と書きましたが、ストーリー中では、”This Thing”(日本語字幕では”あるもの”)とか”It”(日本語字幕では”それ”や”あれ”)などと表現されています。毎回出るたびに女だったり男だったり老婆だったりしますので、幽霊ではなく何かの化け物、魔物、呪いということだと思います。

“それ”がそこにいても周囲の人には見えず、また、性行為をすると移り、移された人が襲われて死ぬとまた前の人に戻るというのも、それまでになかった設定だと思います。

このストーリー中では、昼間でも人が歩いてくるだけでゾクッとします。遠くから歩いてくると、それがただの通りすがりの人か、化け物かがわからないのが怖いポイントです。

一般に、悪魔・悪霊に憑かれる話の場合、憑かれた影響の範囲は比較的限定されている場合が多いです。

例えば映画『エクソシスト』では憑かれているのは少女だけで、彼女は家のベッドにくくりつけられており、部屋のものが吹き飛んだりはしますが、例外的にストーリー中の映画監督がその家の外で命を落とした以外は、忌まわしいことが起きる場所は少女の部屋に限定されています。悪魔祓いの時、少女の部屋の外で休憩をするシーンもあります。部屋から出れば基本的には安全だという表現です。

また、家に憑いているタイプの映画の場合は、基本的に影響の範囲は家に限定されています。

しかしこの映画では、どこでも突然姿を表すので怖いです。追いかけてくるスピードは常に歩きのためゆっくりですが、学校であろうが家の中であろうが入ってきて、捕まって襲われると命を奪われます。ドアを蹴破ったり、窓ガラスを割ったりします。車で移動してもいずれやってきます。

以下の記事で詳しく考察しています。

▶︎目新しい設定のホラー映画『イット・フォローズ』の解説・考察(ネタバレあり)

『アナベル 死霊館の人形』(原題:Annabelle)(2014)

ストーリー
カルトに傾倒した隣家の娘(若い女)とその恋人の男が悪魔崇拝の一環で彼女の両親を殺し、騒ぎを聞いて主人公の夫が見に行っているスキに主人公の家にも侵入して主人公を襲い、男は警官に射殺され娘は自殺したが、自殺した時、主人公が夫からプレゼントされていた人形を抱えており、悪魔が乗り移り、夫の留守中に主人公を襲い始める。

怖さのタイプ
人形に取り憑いた悪魔に襲われる

元ネタ・事実に基づくか
アナベル人形とは超常現象研究家エドとロレインのウォーレン夫妻のオカルト博物館に収容されているとされる呪われた人形(ウィキペディアより)

感想・解説
映画『死霊館』シリーズの一編で、映画公開は『死霊館』の翌年ですがストーリーの時系列としては『死霊館』の前です。

スタンダードな怖さというか、適切に演出された怖さを感じます。呪い(悪魔)が持ち込まれた理由も自然に描かれ、何かが起きそうなシーンでは何かが起こり、怖いシーンは音楽も使って盛り上がり、伏線は回収されます。ストーリー都合の不自然な行動は少ないです。

襲われる主人公が妊婦であるのは弱い状態として定番の設定ですね。しかもストーリ中で子供が生まれます。

引っ越しても悪魔に狙われ続け神父や友人も巻き込まれますが、最後はやや尻つぼみに感じます。ずっと「怖い演出」で引っ張ってきたストーリーが、最後いきなり演技で表現すべきドラマ調になり、しかし演出が未消化なまま終わった印象です。

『ゲット・アウト』(原題:Get Out)(2017)

ストーリー
休暇で初めて白人の彼女の実家に行った黒人の男が両親からは歓迎されるが、黒人の使用人がいたり、彼女の弟からはやや好奇の目で見られる。祖父が亡くなった後も続いているというパーティーに集まった白人の人々も何かおかしく、その後、その家族と来客達の目的が明らかになる。

怖さのタイプ
にこやかに迎えてくれたガールフレンドの両親や周りの人の言動から感じる妙な違和感

感想・解説
脅かすような演出、怖い演出は少なめですが、主人公の感じる「妙な違和感」を観客も共有しながら見ます。白人の集団に入った黒人の感じる違和感なのですが、それだけではない感じがじわじわと迫ってきます。

「主人公が妙な違和感を感じる」前半は、同じプロット(出来事)で演出を変えたら単に「白人の集団に入った黒人の感じる違和感」という見え方になってしまうかもしれない妙な違和感を、それぞれのキャラクターの言動を通してホラーとして演出しています。

そして後半は、ガールフレンドの家族や親睦会に集まった人々のサイコな目的が明らかになっていきます。

人種差別とホラーを組み合わせた良作です。監督はアフリカ系アメリカ人のジョーダン・ピールで、黒人のたたずまいがリアルに表現されています。おそらく現実世界での黒人たちもこんな感じだろうと思います。

『コンジアム』(原題:곤지암)(2018)

ストーリー
恐怖動画配信チャンネルの収益を目論む男に集められた男女数人の若者のグループが、心霊スポットとして有名な廃病院(コンジアム精神病院)へ乗り込み、病院内にカメラを設置し自分達にもカメラを付け、生配信をしつつ探検する。不可解な現象が起き始め、実は男達の仕込み(演出)だと観客にはわかるが、それを知らない女達はパニックになり病院から逃げようとする。残された男たちはリーダーに強要され探検と配信を続けるが、次々と自分たちの知らない怪奇現象が起きる。

怖さのタイプ
夜の廃病院で呪いによる怪奇現象に襲われる

元ネタ・事実に基づくか
舞台は韓国に実在する廃病院で、その病院の歴史や閉鎖にまつわる不可解な話や怪奇現象の噂もある

ストーリー内の配信用に病院内に設置したカメラのほか、手持ちカメラで撮影した想定の主観映像や自分達に付けたそれぞれの顔を写すカメラの映像が生々しく、特に後半に活きてきます。

最初はサークルノリの心霊スポット探検に参加しているような感じで気楽に見られますが、後半、男達による「怪奇現象」の仕込み(演出)があったことが観客に明かされたあとも男たちの知らない怪奇現象がエスカレートし、盛り上がっていきます。

コンパクトな映画ですが、夜の廃病院は説得力があり、うまく怖くまとめられています。

コンジアム精神病院は韓国に実在する廃病院で、その病院の歴史や閉鎖にまつわる不可解な話やその後の怪奇現象の噂なども冒頭で紹介されますが、ストーリー中ではその病院の歴史と呪いの関係性をドラマにするというよりも、「恐怖演出」に主眼が置かれています。

参考:7 of the freakiest places on the planet
https://web.archive.org/web/20121116033651/http://travel.cnn.com/freakiest-places-around-world-681626/

『FALL/フォール』(原題:Fall)(2022)

ストーリー
ロッククライミング中の事故で夫をなくし悲嘆にくれる若い女が、冒険仲間の女に誘われ高さ600mの老朽化した鉄骨のテレビ塔に登るが、ハシゴが落ちて降りられなくなり、スマホの電波もつながらず、なんとか危機を脱しようとする

怖さのタイプ
600mの老朽化した塔の直径1メートル程度の足場に取り残される

感想・解説
鑑賞する側もいわゆる「タマヒュン」(下ネタ用語かもしれませんが)する映画です。比喩ではなく手に汗握ります。高所恐怖症の人は見られないと思います。

冒頭、事故で夫を亡くした主人公の悲嘆や、心配する父親との関係をきっちりと描いていますが、そういったドラマよりも、パニックスリラーが主体だと思います。しかしただ観客を怖がらせる映画ではなく、ドラマがベースにあり、伏線というかフラグとその回収もあり、そして何と言っても高い塔の上の様子がうまく表現されており、バランスのよい映画です。

600mのテレビ塔に登ることを誘ってきた友人(デンジャーDという冒険系ユーチューバーをしている)が、カフェのテーブルにある照明の電球を外し、充電ケーブルのプラグをソケットの内側に接触させてスマホを充電したり(実際に可能か不明です)、運転しながらスマホで録画し、私は映さないでと言った主人公を写したり、その直後大型トラックにぶつかりそうになったり、安全意識に乏しい人物であることが描かれると同時に、伏線となっています。

怖い映画に含めなかった映画

怖い映画に含めなかった映画も紹介しておきます。

『エクソシスト』(原題:The Exorcist)(1973)

ストーリー
女優の娘の声や容貌が醜悪に変化し不可解な現象も起き、医者に診てもらっても拉致があかず、その女優に懇願されて同じ地域の神父で精神科医でもある男が診るようになる。彼は色々やった結果悪魔祓いの必要性を教会に相談し、その経験のある高齢の神父に依頼して二人で悪魔祓いをするが、高齢の神父は命を落とし、自分は悪魔を自らに取り憑かせて身を投げる。

元ネタ・事実に基づくか
1949年にアメリ力で起きたとされる悪魔憑依事件の新聞記事にインスパイアされて書かれた(ウィキペディアより)

感想・解説
1973年の映画で、オカルトホラー映画の代表作とも言われるようです。様々な怖い演出の映画がある現在の目で見るとかなり初期的な印象がしますが、おそらくこの映画がその後の同種の映画に影響を与えているのだと思います。

少女に悪魔が憑き、醜悪な形相になり、汚いことばを吐いたり、首が回転したり、浮き上がったりなど、公開当時はかなりショッキングだったのではないかと思います。

一方、私見ですが、近年の映画に比べるとやや無駄な部分が多く、欠点もあるように感じます。以下の記事で詳しく考察しています。

▶︎主人公は誰か? オカルトホラー映画の代表作『エクソシスト』の感想 無駄な部分が多く欠点もある(ネタバレあり)