不気味な世界観のファンタジーホラー映画『サイレントヒル』の感想(ネタバレあり)

不気味な世界観のファンタジーホラー映画『サイレントヒル』の感想(ネタバレあり)

コナミのゲーム『SILENT HILL』を原作とした2006年の映画『サイレントヒル』の感想を書こうと思います。

この映画はカナダ、フランス、アメリカ、日本の合作とのことです。(ウィキペディアより)

『サイレントヒル』のストーリー(あらすじ)

夢遊病で「サイレントヒル」という謎のことばを発する養女を持つ母が、サイレントヒルという街が実在することを知り夫の反対を無視して娘と共にそこへ行くが、事故で気を失っている間にいなくなった娘を探すうち、カルトの犠牲になった少女の呪いが作り上げた不気味でグロテスクなパラレルワールドに迷い込む。

ゲームの世界観をうまく映画として昇華

監督のクリストフ・ガンズは映画化権を獲得するために、自らのビジョンを約30分のビデオ・メーセージにしてコナミに提出し、このゲームのエッセンスを完全に理解していると判断されたとのことです。(映画のパンフレットより)

その甲斐あって、ゲームの世界観をうまく映画として昇華していると思います。不気味なビジュアルと音楽・音響によって特徴的な作品となっています。

不気味なビジュアル

主にサイレントヒルの街とクリーチャー(化け物)たちが特徴的です。

サイレントヒルの街は、「30年前のサイレントヒル」「現在の現実のサイレントヒル」「霧に包まれたサイレントヒル」そして、サイレンとともに現れる「闇のサイレントヒル」が出てきます。特に「闇のサイレントヒル」は、30年前の火災の記憶を建物が持っているかのように炎が燃え侵食されているだけでなく、不気味なクリーチャーや虫が出てきます。それはカルトの犠牲になった少女の呪いが作り上げた、現実を超えた不気味でグロテスクな世界です。

クリーチャー(化け物)

いくつかのクリーチャーが出てきますが、特にダークナース、レッドピラミッド、アームレスマンが印象に残ります。ほとんどのクリーチャーは特殊メイクを施した役者やダンサーが演じているとのことです。かなりキャッチーなデザインで、ダークナースやレッドピラミッドはコスプレの題材にもされているようです。

ダーク・ナース
ダーク・ナースは、胸や足が露出ぎみの汚れたナース服とナース帽を身につけ顔が溶けたように変形しているクリーチャーです。集団でまとまっていて、音に反応して刃物を振り回します。ストーリー中に出てくる看護婦のイメージが、少女の呪いによって化け物化したものではないかと思います。

レッドピラミッド
レッドピラミッドは、正面や横から見ると三角形に見える多角錐の大きな兜状の頭部を持つ長身のクリーチャーです。巨大な剣を武器とします。ゲームでは「レッドピラミッドシング」(通称:三角頭)と呼ばれ、鉈(なた)を持っているようです。このキャラクターは、ストーリー中の何に由来しているのか明解になっていないと思いますが、ゲーム版では、サイレントヒルの刑務所の処刑執行人の衣装に身を包んでいる、とされています。

アームレスマン
アームレスマンは映画公開時のパンフレットでは「アームレス」と表現されています。腕で自分自身を抱いた状態で溶けて腕がなくなってしまったような姿で、顔もなく、足は細く、グネグネしながら歩きます。中央の裂け目から酸のようなものを滴らせ、噴出します。これがそばにいるとケータイや無線機が電波障害を起こしたようにノイズを発します。これもストーリー中の少女の何に由来しているのか不明です。

 
雰囲気のある音楽と音響

ゲーム『SILENT HILL』の『1』から『4』までの音楽と効果音、そして『3』からは音以外にプロデューサーとしても関わった山岡晃さんが、この映画の製作総指揮を務めています。音楽担当者がプロデューサーを務めるのは珍しいと思いますが、それだけゲーム『SILENT HILL』では”音”を重要視していたということだと思います。

映画ではゲーム中の音をほとんどそのまま、しかもノイズ感を出すためにあえて音質の良くないプレイステーション2と同じ音を使っているとのことです。(映画のパンフレットより)

キャッチーで癖になる不気味な音楽と、繰り返すインダストリアルな音響が雰囲気を盛り上げています。

世界観ドリブン

ストーリーやキャラクターは、不気味な世界観を見せるための道具、手段になっている印象です。

娘を探して助けることが母親の行動のモチベーションになっているとは思いますが、行動の仕方がやや普通ではなく、そういうキャラクター設定というよりも世界観を見せるためにそういう行動にしていると感じます。

夫の反対を無視して勝手に娘とサイレントヒルに行っておきながら、娘を見失って電話で夫に助けを求めようとします。

明らかに尋常ではない出来事が起きている中で単身探し回り、闇の世界でトイレに吊るされた死体の口の中に何かを見つけて取ったりしますが、不気味なことが起きると、助けてと言って逃げる、ということを繰り返します。

また、散々不気味で怖い思いをしているのに、早く避難すべき時に怪しい女に話しかけもたもたしたために、一緒にいた人が犠牲になったにも関わらず、なんの呵責も感じている様子がなかったりします。

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