Netflixアニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』10話を一気に見てしまいました。面白かったので感想を書こうと思います。
比較として、一般に「サイバーパンク」作品と言われる映画やアニメは「サイバーパンク」ではない場合が多いことについても書きます。
電脳通信や身体の機械化が一般化し、巨大企業が強大な力を持っている「全てはカネ次第」な世界で、母の期待を背負って通っていた学校からドロップアウトし借金に追われる青年が、偶然手にした軍用の機械化部品で身体を機械化し、荒っぽい仕事を請け負うチームに加わり頭角を表していくが、機械化の面でも仕事の面でも危険な領域に踏み込んでしまう。
ゲーム『サイバーパンク2077』と世界観を共有する、異なる登場人物とストーリーによる別作品とのことです。ゲームの開発元である「CD Projekt RED」が参加、というか共同プロジェクトのようです。
『サイバーパンク2077』と共有された世界観ですが、他にも『攻殻機動隊』(俯瞰の未来都市、電脳通信、ボディスーツのデザイン)、『ストレンジ・デイズ』(他人の経験=視点を記録したディスクの流通)、『エリジウム』(背中に装着する機械)などの影響又は通じる要素を感じます。
『サイバーパンク』というジャンル名は有名ですが、意外とそのものズバリ、つまり「サイバー」で「パンク」な作品は少ないように思います(後述)。
このアニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』は、『サイバーパンク』をタイトルにしているだけあって「サイバー」で「パンク」な作品です。
『サイバーパンク』は一般的なジャンルの一つと言っていいと思いますが、やや80年代、90年代の印象があります。このアニメも、どことなく80年代、90年代のノスタルジックさと、「無理をしてでも自分の状況に抗おう、良くしようとする向こう見ずな青年が仲間たちと強大な組織と戦う」という普遍的でわかりやすいストーリー、そして「サイバー」で「パンク」な世界観をきっちり表現した現代的なデザイン、パースを強調したダイナミックな映像が合わさった作品となっています。
世界観としては退廃した要素もありますが、赤、青、黃、緑などの鮮やかな色がグラフィカルに多用され、全体としてはむしろダイナミックなエネルギーが感じられます。
銃撃戦、暴力、派手に飛び散る血、機械化されたヌードなどの表現もあります。
ナイトシティ:舞台となっている都市の名前
アラサカ:ストーリー中の巨大企業。学校も運営
サイバーパンク:身体を機械化・サイバー化し、荒っぽい仕事を請け負う裏稼業の者
エッジランナーズ:サイバーパンクの別名(ストーリー中「エッジランナーズ?」「サイバーパンクの別名よ」というデイビッド(主人公)とルーシー(ヒロイン)のセリフあり)
ホロ通信:電脳通信
ホロコール:ホロ通信の呼び出し(着信)
インプラント:身体の神経と接続し物理的以上に身体を強化する機械化部品
サンデヴィスタン:軍用の特別なインプラントの個別名称
サイバーサイコシス:インプラントによる強化に神経(脳の機能)が耐えきれずに暴走状態になった者
MaxTac:ナイトシティの警察(NCPD)に所属する、サイバーサイコシス鎮圧を専門とする特殊部隊
AV:空飛ぶ自動車
「サイバーパンク」は、主に1980年代〜1990年代に人気が出たジャンルだと思います。その後も主要なジャンルとして様々な作品が出ています。
ただ、特にこのジャンルの「パンク」という言葉を重視するのであれば、私が知らないだけかもしれませんが、意外と「サイバー」で「パンク」な作品は少ないようにも思います。
パンクとは、反体制的、反権威的で、個人の自由と自己表現を重視する思想かつ生き方です。既存の価値観や社会システムに疑問を投げかけ、自分なりのやり方で道を切り開こうとします。暴力に結びつくこともあります。
以下、ぱっと思いつく作品について「サイバーパンク」かどうか簡単に私の印象を書きます。
『ブレードランナー』1982
背景となる世界観(アンドロイドの存在する近未来の退廃した都市)はサイバーパンクに通じますが、あまりサイバーではなくあまりパンクではないです。
他の星での重労働から逃げ出してきたアンドロイド達を始末する稼業の男が、アンドロイド達から逃げつつ始末しながら「限りある命」に向き合う話です。
『アキラ』1988(アニメ映画)
あまりサイバーではないが、パンク。サイバーパンクというより「サイコパンク」です。
サイバーパンクに通じる世界観(近未来の退廃した都市)ですが、インターネットや電脳化による活動が描かれるわけではなく、「超能力」がメインテーマです。
「バイクを繰る不良」という登場人物達はパンク的です。
『JM』原題『Johnny Mnemonic』1995 4月
サイバー(脳に埋め込まれた記憶装着に情報を記録する運び屋)で、ややパンク感(退廃的な世界観)もあります。
映画としての評価は高くないようですが、実際には「サイバーパンク」ではない『ブレードランナー』や『アキラ』を経て、ようやく出てきた「サイバーパンク」的なSF映画です。30年前の映画で、インターネット・電脳空間の映像表現は当時先進的で、その後の同種のジャンルの先駆けといっていいと思います。
主演のキアヌ・リーブスは、ここでもカンフー的な所作をしており、根拠となるようなインタビューは見つかりませんでしたが、『JM』が後の『マトリックス』への起用につながっていると思います。
『攻殻機動隊』1995 11月(映画第1作)
かなりサイバーですが、少なくとも表面的にはあまりパンクではないです。言うなれば「サイバークライムアクションSF」です。
公安9課が制度の中で自主自律的に活動する様子はややパンク的です。
むしろ、起きる事件・事象が、ネットを利用した「社会規範・現実秩序からの逸脱」と捉えるなら、内面的・精神的なパンクとも取れます。
『マトリックス』1999
サイバー(機械-コンピュータによって作られた仮想世界)で、パンク(機械-コンピュータの支配に対抗するレジスタンス)と言えます。