映画『アトラス』AIの反乱と共生をテーマにしたSF大作だが根幹はパーソナルな内容で最後は物理的な戦い(ややネタバレ)

映画『アトラス』
AIの反乱と共生をテーマにしたSF大作だが根幹はパーソナルな内容で最後は物理的な戦い 今後のAIとの関係を予見するがやや規定路線(ややネタバレ)

ストーリー
優秀な対テロ分析官でAIを危険視する女が、300万人以上の人間が犠牲になった28年前のAI反乱のリーダーだったAIロボットの潜伏先を割り出し彼のいる惑星に向かうミッションに加わるが、拒否していた味方のAIパワードスーツとの神経リンクをしなければいけない状況になっていく。

解説(半ばまで)

AIの反乱で300万人以上の人間が犠牲になった28年後に、優秀だが社交的ではない対テロ分析官の女アトラスが、世界初のAIテロリストであるハーランの潜伏先の惑星を割り出します。彼は反乱軍のリーダーでしたが、28年前に劣勢に立たされ地球から逃走しており、行方がわかっていませんでした。

彼を追ってその惑星へ向かう国際連合のミッションの後方支援に呼ばれますが、ミッションがハーラン捕獲を目的としていることを知り、ハーランを熟知する彼女は「生け捕りにしようとすれば生きて戻れない。誰一人ね」と反対します。しかし、自信満々な大佐からAIとの神経リンク式パワードスーツを見せられ反対を受け入れられないため、「本気でヤツを捕まえたいなら、私を参加させなくちゃ」と言って現地に同行することになります。

道中もクルーにAIの危険性を熱弁しますが真剣に取り合われず、案の定、目的の惑星の上陸前に迎え打ちにあい、アトラスは操作方法がわからないままそのAIパワードスーツに搭乗させられます。

空中戦のなか奇跡的に地表に降り立ち気がつくと、味方の軍は全滅しており大佐も行方不明、自分も負傷しますが、彼女はAIを危険視しているため、本来神経リンクが前提となっているパワードスーツへのリンクを拒否し、AIと意見が衝突します。

味方の宇宙船も奪われ、逆に地球への攻撃に使う準備をしているのを発見します。

ハーランはかつてアトラスの母が作り彼女と生活していたサポートAIロボットであることは冒頭のニュースで報道されていますが、ストーリーを通して彼が反乱を起こした原因も明らかになっていきます。

アトラスがハーランの元にくることもハーランによって仕向けられたこともわかります。

アトラスは、AIパワードスーツの本来の能力を発揮するために徐々に心を開いてリンクしていき、ハーランに立ち向かいます。

キャスティング

現実味のあるキャスティングだと思います。

アトラス分析官(ジェニファー・ロペス)
社交的ではない対テロ分析官の主人公をジェニファー・ロペスが演じています。

ジェニファー・ロペスは今作でプロデューサーにも名を連ねています。

ブース事務総長(指揮官)(マーク・ストロング)
あまり具体的な活躍はしませんが、唯一アトラスを評価している指揮官として、現実味のある雰囲気を出しています。

イライアス・バンクス大佐(スターリング・K・ブラウン)
個人的に気に入っているのは、大佐が体力バカではなく、経験と実力に基づいた自信があり、頭もよく見える点です。役者の持つ雰囲気がそう見せていると思います。スターリング・K・ブラウンは、スタンフォード大学で演劇を学んで卒業し、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部で修士号を得たとのことです。

ただ残念ながらその大佐もほとんど活躍せずにやられてしまいます。

感想

AIテロリストが反乱した『ターミネーター』的な世界観ですが、人間も引き続きAIを使っており、切れ者だが扱い辛いと思われている対テロ分析官の女が、セキュリティ意識と個人的な理由からAI搭載パワードスーツとの神経リンクを拒否するものの、状況を正確に分析し適切な判断をするAIパワードスーツと意見がぶつかったり、パワードスーツの能力を最大限に活用するためには精神リンクが必要、という葛藤が描かれるのが現代的です。

緊急事態下でAIの初期設定をスキップしようとする主人公ときっちり進めようとするAIの攻防は、人間とAIの関係性が感じられ面白いです。現在でも人間が機械、パソコン相手に日常的にやっていることであり、今後AIが発達しても恣意的に行動しようとする人間と客観的で正確なAIの攻防は様々なレベルで起こると思います。

深く考えずに楽しめる、ケレン味のあるSFアクション映画ですが、その「ケレン味」はVFXを多用したアクションによるところが大きいです。Netflixの作品ですがVFXは劇場公開される大作SF映画並みだと感じます。

一方、映画全体としては以下の理由でチープ感がありますが、子供向けの映画とすれば、まあこんなものかもしれません。

人類対AIの大仰な世界観ですが根幹の部分はかなりパーソナルなこじんまりしたストーリーです。

自信があり、頭もよく見える大佐もほとんど活躍せずにやられてしまいます。しかし死んでおらず最後に自己犠牲的な活躍をします。

敵はものすごく頭のいい危険なAIテロリストという設定ですが、最後は物理的な戦いをします。

AIを危険視する主人公が、後半味方のAIパワードスーツに心を開いていくのは規定路線というかややありきたりに感じます。

 

VFX、UIデザイン

MPC、SCANLINE VFX、ILMといった超有名VFXスタジオ(会社)がVFXを担当しています。

MPCウエブサイト
https://www.mpcvfx.com/

SCANLINE VFXウエブサイト
https://www.scanlinevfx.com/

ILMウエブサイト
https://www.ilm.com/

SF映画ではおなじみのUIデザインもあまり目新しさはないもののきちんと作られています。

まとめ

チープ感はありますが、わかりやすいストーリー、現実味のあるキャスティング、大作映画同様のVFXによって、深く考えずに見ることができました。

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