ここではニューヨークフィルムアカデミーの2年目の授業Advanced Directing(監督術-上級)について紹介します。
MFA Filmmakingコースの2年目の概要はこちらの投稿をご覧ください。
映画の撮影での監督の主な仕事は役者に演技をつけることとも言われます。ニューヨークフィルムアカデミーのAdvanced Directingの授業では主にアクターと関わる部分について学びます。
概ね以下のような内容です。講義として教わるものと、学生が事前に宿題として準備しておいて、授業中に発表しディスカッションするものがあります。
アクターとの関わり方について様々な側面から教わりますが、そのうちの一つのキーワードがAction Verb(行動動詞)です。
アクターに対して演技について伝える(ディレクションする)時に、result directionをする(その登場人物の行動の動機や感情の「結果としての状態」を指示する)のではなく、Action Verb(行動動詞)で伝えるべきとされています。
「結果としての状態」とは例えば以下のようなものです。
be sexy(セクシーに)
be sad(悲しむ)
be angry(怒る)
be nervous(緊張する)
Action Verbとは、例えば以下のようなものです。
seduce(誘惑する)
impress(印象づける)
belittle(見くびる)
interrogate(問いただす)
accuse(訴える)
演技をつける時に、例えば「セクシーに!」ではなく「誘惑して!」と指示するとか、「怒って!」ではなく「非難して!」と指示すると、目的が明らかになってより明快な指示になります。アクターにとっても表現をする余地が生まれます。
Action Verbは他にもたくさんあります。以下のサイトでも多くのAction Verbが紹介されています。
Action Verb List
https://www.jukolart.us/directing-actors/action-verb-list.html
トップ10のAction verbsをピックアップした記事
https://www.backstage.com/magazine/article/top-action-verbs-toolkit-57081/
リハーサル/テーブルリードの仕方について教わります。テーブルリードとは、事前にアクターに集まってもらい、テーブルを囲んでセリフの読み合わせをするリハーサルの一種です。
フレームの中でのアクターの動きを計画することをブロッキングと言います。ブロッキングについて教わります。Action Verbにもつながりますが、その登場人物のモチベーション(何を求めているか)がその動きを牽引します。
Overhead Diagramとはアクターの動きとカメラの位置や動きを表す上面図のことです。
宿題として、自分が見たことのないまたはあまり馴染みのない既存の映画の脚本を元に自分でOverhead Diagramを描いておき、授業中にDVDなどで実際の映画を確認して比較します。
講義として以下のような内容を教わります。
・キャスティングをする時にフォーカスする点
・キャスティング(アクターの募集)の仕方
・キャスティング/オーディションで使うsides(サイズ)について
・キャスティング/オーディションの段取りについて
キャスティング(アクターの募集)の仕方にはキャスティングウエブサイトとエージェントがあります。
キャスティングウエブサイトについてはこちらの投稿もご覧ください。
sides(サイズ)とはオーディションで応募者に演じてもらうための、数ページの脚本抜粋のことです。
自分が準備中の卒業制作の1シーンを選び、アクターに依頼して授業中に来てもらい、実際にそのシーンを撮影してみます。
ただの教室で、照明器具もおかない簡易的な撮影ですが、あらかじめブロッキングを考え、演技をディレクションし、インストラクターやクラスメートとディスカッションできるのは有益なテストとなります。
実際の卒業制作のプリプロ(撮影前の準備)ではキャスティングに手間取る場合もあるため、あらかじめキャスティングができるのもメリットです。