バーチャルYouTuberに見るエンターテイメント/芸能/メディアのインターネットベース化とグローバル化の加速

バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー/VTuber)

2017年末ごろはまだバーチャルYouTuberは少なく、ユーチューバー事業を開始しようとしているタレントマネジメント会社の人でもキズナアイ(2016年12月活動開始)を知らなかったりしましたが、2020年にはバーチャルYouTuberは1万人を突破したようです。

ここではバーチャルYouTuber以前からのバーチャルアイドル/バーチャルキャラクターの歴史もおさらいしつつ、バーチャルYouTuberの活動から見えるエンターテイメント/芸能/メディアのインターネットベース化とグローバル化の加速について感じていることを書こうと思います。

バーチャルアイドル/バーチャルキャラクターの歴史

●1980年代 バーチャルアイドル/バーチャルキャラクター黎明期
1980年代は、アニメやゲームのキャラクターがバーチャルアイドルとして扱われ始めました。

●1990年代 CGによるバーチャルアイドル/バーチャルキャラクター
メディアの多チャンネル化と、パソコンの普及や3Dソフトの発達と低価格化が後押しして様々なバーチャルアイドル/バーチャルキャラクターが生まれました。

1996年 伊達杏子(だて きょうこ)
ホリプロ所属でデビューし、大きな人気にはならなかったと思いますが、断続的に活動が行われているようです。

1998年 テライユキ
漫画家のくつぎけんいちさんが自身の漫画のヒロイン「寺井有紀」を3DソフトShadeで作ったキャラクターが評判となり、タレント的な活動を開始。Shade用のモデリングデータや写真集、映像作品が販売されたり、テレビ番組に出演もしました。

1999年 飛飛(フェイフェイ)
沖孝智さんが個人的に制作したキャラクターで、Shade用のモデリングデータや写真集、映像作品が販売されました。

 

2000年代〜 VOCALOIDとインターネット上のユーザー生成コンテンツの広がり
2005年にサービスを開始したYouTubeや2006年にサービスを開始したニコニコ動画をプラットフォームとして、初音ミクをきっかけにユーザー生成コンテンツが広まりました。

2007年 初音ミク(はつね みく)
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社から音声合成DTMソフトウェアのキャラクター・ボーカル・シリーズ第1弾として発売されたソフト名でありその時に使用されたキャラクターです。

発売元のクリプトンがキャラクター画像の非営利の利用を認めており、ユーザーによる歌声の利用だけでなくキャラクターを用いた創作活動をも促進したため、ユーザーがDTMソフトウェアとして初音ミクを使ったり、初音ミクをキャラクターとして使った二次創作が広まりました。一方、初音ミクは歌手としての活動も行い、3Dホログラフィによるライブが国内外で行われました。

キャラクター・ボーカル・シリーズの第2弾として鏡音リン(かがみねりん)、鏡音レン(かがみねれん)も発売され、動画投稿サイトに鏡音リン・レンを使用した多数の楽曲が投稿され、キャラクターを用いた関連商品も出ました。

2009年
キャラクター・ボーカル・シリーズの第3弾として巡音ルカ(めぐりねるか)が発売され、やはり動画投稿サイトに多数のユーザー生成動画が投稿されました。

また、ユーザーによる様々な派生キャラクターが生まれました。

2012年 IA -ARIA ON THE PLANETES-(イア- アリア・オン・ザ・プラネテス)
1st PLACE株式会社から発売されたVOCALOID3対応の音声合成ソフトウェアであり、バーチャルアーティスト”IA”(イア)として活動するキャラクターです。世界的にライブも行われています。

 

●MikuMikuDance
2008年に初版が公開された個人の作者によるフリーウェアで、キャラクターの3Dモデルを操作し、アニメーションを作成できます。デフォルトのモデルの一つとして初音ミクなどの3Dモデルが内蔵されており、ユーザーがキャラクターに動きをつけた二次創作動画がニコニコ動画をはじめとする動画投稿サイトに大量に投稿されました。

●デジタルヒューマン/バーチャルヒューマン
CGによる映画やゲーム用のリアルな人物表現が模索されてきた延長線上で、CG技術の進歩によって、実写と見分けがつかない、あるいは実写に極めて近いキャラクターが作られ、モデル、タレント、インフルエンサーとして活動をしています。2020年現在の方向性としては伊達杏子やテライユキの路線の技術進化版ですが、今後、後述のバーチャルYouTuberにも通じるリアルタイム表現が増え、それが個性の表現を後押しするだろうと思います。

2015年 Saya
CG制作ユニット“TELYUKA(テルユカ)”さんによって制作されたCG女子高生キャラクターです。
リアルな日本人の若い女の子の表現を特徴としていて、テレビ番組で紹介されたり、イベントで活動をしています。
2018年 imma
M氏プロデュースのもとModelingCafeによってCG開発され、2019年に設立されたAww所属で広告や雑誌のモデルを中心とした活動をしています。
2019年 Ria
Aww所属で広告のモデルなどで活動をしています。
2019年 plusticboy
Aww所属でimmaの弟という設定。広告のモデルなどで活動をしています。

2020年 ASU
Aww所属でNOWEAR(Nは左右逆に表記)というファッションブランドを持っています。

 
 

バーチャルYouTuber

2016年12月にキズナアイが世界初のバーチャルYouTuberを名乗って活動を開始し、その後2017年には電脳少女シロミライアカリ輝夜月(カグヤ・ルナ)などがデビューしていきました。

大抵のバーチャルYouTuberは、アニメキャラクターのような女の子のデザインで、2D素材を元に作られたアバターにWebカメラで「中の人」の顔の表情や頭の動きを反映させたり、3DのモデルにVRやモーションキャプチャの機器を使って全身の動きを反映させています。

以前はバーチャルキャラクターを映像化したい場合は、ストーリーを作り、キャラクターの形状をモデリングし、アニメーションをつけ、レンダリングして映像化し、声をアフレコする必要がありましたが、モーションキャプチャやリアルタイム描画技術の発達によって、バーチャルYouTuberのようなリアルタイムの表現が可能になりました。

一方、テレビを中心としたメディアが寡占する時代には、アイドルや芸人としてメディア(テレビ)に出るのは簡単ではなかったと思いますが、インターネット、そしてその中の映像プラットフォームであるYouTubeによって、個人や企業が発信できるようになりました。

日本のアニメ文化、パソコンのスペック向上、インターネットを利用した個人や企業の発信の一般化、リアルタイムにアバターを操作できる技術の発達などをベースとしてバーチャルYouTuberも出てきたと思います。

個人でやっているバーチャルYouTuberであれ、企業に所属するバーチャルYouTuberであれ、

・顔出しをせずに(自己)表現ができること。
・必要な技術があれば一部の選ばれた人だけでなく誰でも発信できること。
・収益化し得ること。

などがバーチャルYouTuberの増加を後押ししていると思います。

レンダリングして映像化するCGキャラクターやアニメと違うのは、リアルタイムのアバター操作のために比較的中の人の素が表現される点だと思います。

ゲームプレイ実況で素のリアクションをしたり、素のコメントをしたり、また、顔出ししない安心感のためもあると思いますが、YouTubeのレギュレーションの範囲で下ネタを言ったり、他のバーチャルYouTuberとのコラボで女子トークを展開したりして、視聴する側は「中の人」がいることを知った上で、アニメ調のかわいいキャラクターと「中の人」の素の表現の差分、あるいは掛け合わせを楽しむというコンテンツになっていると思います。

歌が上手いとか絵が上手いというのが売りになっているバーチャルYouTuberもいますが、バーチャルYouTuberは完璧である必要はなく、いわゆるポンコツであることも芸風になるのはリアルな芸人の芸風にもつながります。

ライブ配信においてはチャット欄でリアルタイムで視聴者とやりとりできることも、バーチャルYouTuber側にも視聴者側にも楽しいポイントだと思います。

最初はキズナアイなど単体活動するバーチャルYouTuberばかりだったと思いますが、その後アイドルグループの様に○○期生として同時期に性格の異なる複数名をデビューさせ、グループ内外のコラボで活性化するホロライブの例も出てきました。

インターネットが基本的には全世界に開かれていることも重要なポイントで、キズナアイの時にすでに、動画の言語が日本語であるにも関わらず最初はコメント欄に英語のコメントの方が多い印象でしたが、最近でもホロライブ所属で英語が堪能な桐生ココなどの影響もあると思いますが、バーチャルYouTuberを解説する海外のユーチューバーの動画を見ると、海外でも日本のそれぞれのバーチャルYouTuberのキャラクターの違いやポンコツぶりも楽しまれているようです。

2020年10月2日現在YouTubeのライブ配信時の投げ銭機能であるスーパーチャットの、世界の累計金額トップ20人(チャンネル)のうち15人が日本のバーチャルYouTuberで、1位が日本のバーチャルYouTuber桐生ココで109,273,931円という、ある種異常事態になっています。これには日本からだけでなく海外からのスーパーチャットを含みます。

Youtube Most SuperChated Ranking – PLAYBOARD
https://playboard.co/en/youtube-ranking/most-superchated-all-channels-in-worldwide-total

そういった流れを見越してか、ホロライブから2020年9月にホロライブ・イングリッシュ(Hololive English)として、英語を主体とするバーチャルYouTuberの一期生5人がデビューしました。

インターネット上の情報によると桐生ココの中の人は日系ハーフのようですが、この5人の中の人はさらに国際的になっていることが推測されます。活動は英語が主体ですが、5人それぞれレベルの違いはあるものの日本語もでき、人によっては他の言語もできるようです。また、それぞれ歌、アニメーション制作、イラストを得意としていたり、すでにバーチャルYouTuberとしての活動実績があったり、かなりハイスペックです。

実際、チャンネル登録者数や視聴数も早いスピードで伸びています。

Mori Calliope(森 カリオペ)2020 09/12デビュー配信
2020年10月2日現在
チャンネル登録者数36.3万人 デビュー配信の視聴915,079 回
オリジナルソング 失礼しますが、RIP♡ || “Excuse My Rudeness, But Could You Please RIP?” (2020/09/13投稿)の視聴2,817,871 回

Takanashi Kiara(小鳥遊キアラ タカナシ・キアラ)2020 09/12デビュー配信
2020年10月2日現在
チャンネル登録者数26.4万人 デビュー配信の視聴612,423 回

Ninomae Ina’nis(一伊那尓栖 ニノマエ・イナニス)2020 09/13デビュー配信
2020年10月2日現在
チャンネル登録者数30.4万人 デビュー配信の視聴610,289 回

Gawr Gura(ガウル・グラ)2020 09/13デビュー配信
2020年10月2日現在
チャンネル登録者数61.4万人 デビュー配信の視聴1,344,670 回

Watson Amelia(ワトソン・アメリア)2020 09/13デビュー配信
2020年10月2日現在
チャンネル登録者数33.2万人 デビュー配信の視聴607,669 回

 

英語が主体のためコメント欄も英語がほとんどですね。

これまでのホロライブのメンバーも、ここのところ英語をしゃべってみたり、Hololive Englishをかなり意識しているようです。

2020 10/22深夜(10/23早朝)追記

ホロライブ・イングリッシュ(Hololive English)のメンバーのチャンネル登録者数が早いスピードで伸びています。Gawr Gura(ガウル・グラ)のチャンネル登録者数はデビューから1ヶ月ちょっとで100万人に達しました。

2020 10/22深夜(10/23早朝)1:30時点チャンネル登録者数
Mori Calliope(森 カリオペ)
50.3万人
Takanashi Kiara(小鳥遊キアラ タカナシ・キアラ)
36.3万人
Ninomae Ina’nis(一伊那尓栖 ニノマエ・イナニス)
40.2万人
Gawr Gura(ガウル・グラ)
100万人
Watson Amelia(ワトソン・アメリア)
47.3万人

 
 

エンターテイメント/芸能/メディアのインターネットベース化とグローバル化の加速

バーチャルYouTuberその他インターネット上の動画は、発信者にとっては、誰でも発信できること、インターネット接続や映像制作のコストはかかっても配信のメディア費用がかからないこと、発信者が内容を自分で決められること、世界に開かれていること、視聴者との双方向のやり取りができること、アーカイブできること、表現者自身で収益化し得ること、視聴者にとっては、好きな時に好きな動画を見ることができること、動画を検索できること、発信者との双方向のやり取りができることなど、テレビが成し得なかったエンターテイメント/芸能/メディアのあり方を見ることができます。

逆に、未編集で素が表現されること(ライブ配信の場合)、大きなお金が動くこと、人数が増えること、国際的になることで様々な問題が起きる可能性も増えると思いますが、世界的に外出自粛の方向性にある中、この流れは止まらないだろうと思います。