スマホや一眼レフカメラで映画が作れるか?

スマホや一眼レフカメラで映画が作れるか

自主制作映画などで、どんなカメラを使えばいいのだろうかと考えることもあると思います。漠然と「映画のような映像が撮りたい」「なるべくお金をかけないで映画館で上映されている映画のような感じにしたい」と考える人もいるのではないでしょうか。

映画の良し悪しには、非常にざっくりいうと①ストーリーの良し悪し、②演技の良し悪し、③映像の見た目の良し悪し、④音の良し悪し、の4つが影響します。「映画館で上映されている映画のような感じ」にするためにカメラを検討するというのは、これらのうち「映像の見た目の良し悪し」を気にかけているということになります。

映画館で上映される映画、特に大作映画のような見た目の映像を作るためにはさまざまな要素が必要で、そのひとつとしてカメラの機能・性能も影響しますが、「映画が作れるか」という問いに対しては個人的には映像が撮れればカメラは何でもいいのではないかと思います。少なくとも有名メーカーが2020年現在販売している動画撮影機能をもつカメラであれば、ビデオカメラであれ、一眼レフカメラであれ十分な性能を持っていると思います。スマホも同様です。

実際に一眼レフカメラやiphoneが使われた映画もあります。

一眼レフカメラが使われた映画

以下、一眼レフカメラが使われた映画の一例です。「一眼レフカメラのみで撮られた映画」「一眼レフカメラも使われた映画」を含みます。
(カメラ情報出典:IMDb 一部を除く)

●タイニー・ファニチャー(Tiny Furniture)(2010)
Camera
Canon 7D
IMDb Tiny Furniture Technical Specifications

タイニー・ファニチャー(字幕版) Prime Video

「タイニー・ファニチャー」の撮影などについてはこちらの投稿をご覧ください。

●ブラック・スワン(Black Swan)(2010)
Camera
Arriflex 16 SR3, Zeiss Ultra 16 Lenses
Arriflex 416, Zeiss Ultra 16 Lenses
Canon EOS 1D Mark IV, Canon L-Series Lenses (all subway scenes)
Canon EOS 7D, Canon L-Series Lenses (all subway scenes)
IMDb Black Swan Technical Specifications

ブラック・スワン (字幕版) Prime Video

●今日、キミに会えたら(Like Crazy)(2011)
Camera
Canon EOS 7D, Zeiss Ultra Prime Lenses
IMDb Like Crazy Technical Specifications

今日、キミに会えたら (字幕版) Prime Video

「今日、キミに会えたら」の撮影などについてはこちらの投稿をご覧ください。

●For Lovers Only(2011)
Camera
Canon EOS 5D Mark II
IMDb For Lovers Only Technical Specifications

●ヘル・アンド・バック・アゲイン(Hell and Back Again)(2011)
Camera
Canon 5D Mark II, Canon 24-70mm f2.8 lens
Canon 5D Mark II, canon 35mm f1.4, 50mm f1.2 lenses (US shots)
IMDb Hell and Back Again Technical Specifications

●ダイヤモンド・フラッシュ(Diamond Flash)(2011)
Camera
Panasonic Lumix GH2
IMDb Diamond Flash Technical Specifications

●ドライヴ(Drive)(2011)
Camera
Arri Alexa, Cooke S4, Zeiss Master Prime and Angenieux Optimo Lenses
Canon EOS 5D Mark II (some shots)
Iconix HD-RH1 (some shots)
Weisscam HS-2 (high-speed shots)
IMDb Drive Technical Specifications

ドライヴ(字幕版) Prime Video

●アベンジャーズ(The Avengers)(2012)
Camera
Arri Alexa, Panavision Primo, PCZ and Frazier Lenses
Arriflex 435, Panavision Primo Lenses
Canon EOS 5D Mark II, Canon Lenses
Canon EOS 7D, Canon Lenses
IMDb The Avengers Technical Specifications

アベンジャーズ (字幕版) Prime Video

●エリジウム(Erijium)(2013)
Camera
Canon EOS 5D Mark II, Canon L-Series Lenses
Red Epic, Panavision Primo, C-, E-, G-Series and Nikkor Lenses
IMDb Erijium Technical Specifications

エリジウム (字幕版) Prime Video

その他、IMDb(インターネット・ムービー・データベース:俳優、映画、テレビ番組などのオンラインデータベース)には、DSLRで撮られた映画のリストが掲載されています。DSLRとは「Digital Single Lens Reflex camera」の略でデジタル一眼レフカメラのことです。

Movies shot on DSLR cameras
https://www.imdb.com/list/ls074287838/

他にも一眼レフカメラだけで撮影されたショートフィルム(短編映画)は多く存在するようです。

スマホが使われた映画

以下、iPhoneで撮られた映画の一例です。
(カメラ情報出典:IMDb 一部を除く)

●波乱万丈(Night Fishing)(2011)ショートフィルム
Camera
Apple iPhone 4, Canon Lens
IMDb Night Fishing Technical Specifications

●I Play With the Phrase Each Other(2013)IMDbにはカメラ情報記載なし
Camera
iPhone
IMDb I Play With the Phrase Each Other Technical Specifications

●Uneasy Lies the Mind(2014)
Camera
Apple iPhone 5, Nikon Nikkor Lenses
IMDb Uneasy Lies the Mind Technical Specifications

●タンジェリン(Tangerine)(2015)
Camera
Apple iPhone 5S, Moondog Labs anamorphic adapter
IMDb Tangerine Technical Specifications

タンジェリン(字幕版) Prime Video

「タンジェリン」の撮影などについてはこちらの投稿をご覧ください。

●Snow Steam Iron(2017)ショートフィルム
Camera
iPhone
IMDb Snow Steam Iron Technical Specifications

●アンセイン 〜狂気の真実〜(Unsane)(2018)
Camera
Moment Lens
iPhone 7 Plus
IMDb Unsane Technical Specifications

アンセイン ~狂気の真実~ Prime Video

「アンセイン」の撮影などについてはこちらの投稿をご覧ください。

参考:アメリカの映画学校で使用するカメラ

アメリカの映画学校では、プロジェクト内容の段階を追ってカメラのグレードが上がっていきます。私がアメリカの映画学校で使用したカメラについてはこちらの投稿をご覧ください。

参考:NETFLIX認定カメラリスト

一方、オリジナル作品に力を入れているNETFLIXは、ウエブサイトに認定カメラのリストを掲載しています。CMや映画撮影で使われるカメラのオンパレードです。2020年4月現在、フルサイズミラーレス一眼カメラであるPanasonic S1Hもリストに入っていますが、本体とレンズ1本を合わせて80万円程度します。

NETFLIXウエブサイトの認定カメラリスト
カメラと画像キャプチャ

映画の良し悪しに影響する要素 カメラ以外に気にかけるべきこと

私自身修業中ですが、映画の良し悪しには多くの要素が影響します。

①ストーリーの良し悪し
映画はまずストーリーが面白いことが出発点で、脚本がそのストーリーを活かしていることが重要だと思います。ストーリー、脚本を作る上ではその前段階としてまずログラインが魅力的かどうかが重要とされます。ログラインとは、「どういう人物が何をする」ストーリーなのかを完結に表現する1つの文です。

②演技の良し悪し
一部の例外を除いて、映画は基本的に「誰かが何かをする」ストーリーが表現されます。おのずと、アクターの演技/芝居は重要となります。

アクターに関しては、まずキャスティングする上では、見た目の良さというよりも、役柄に合っていることや芝居を通して役柄を体現できることが重要で、実際の撮影ではキャラクター(役柄)の行動やセリフが「演じている」ように見えてしまわず自然で説得力を持つことが、アクターに必要な能力であると同時に、それらを引き出し画面から伝わるようにディレクションすることは監督の仕事です。

③映像の見た目の良し悪し
映像の見た目に関してはカメラの選択以外に気にかけるべきことはたくさんあります。ロケーション、セットデザイン、大道具、小道具、セットドレッシング、衣装、メイクアップ、ライティング、カメラフレーミングとカメラワークが大きく影響します。セットデザインも大道具や小道具も使わないような小規模でシンプルな撮影であっても、照明器具などを使って適切にライティングしてフレーミングも意識することで、「映画館で上映されている映画のような見た目」に近づけることができると思います。

レンズの選択も重要です。レンズの持つ焦点距離によって映せる範囲が異なるため、撮影するシーンや被写体との距離やロケーションの制約などに応じて適切なレンズを選びます。また、レンズの性能によって画面のシャープさが違い、レンズの開放F値によって暗所での撮影や背景をぼかした撮影のしやすさに違いが出てきます。撮影時には、適切に選んだレンズを使った上で表現したい映像によって絞りも決定します。

カメラは、撮影する内容に応じて、必要な解像度を持ち、必要なレンズが使え、必要な耐久性を持つものを選択することになります。

④音の良し悪し
音の良し悪しというと劇伴・BGMを思い浮かべるかもしれませんが、見た目以外で見落とされがちなのは録音音声で、普段は気にしていませんが屋外では車や飛行機の音、撮影に関係ない人の声、屋内ではエアコンの音などが鳴っており、録画した映像の音声を聞くと、こんなにうるさかったのかと驚くと思います。ストーリーや演技が素晴らしくても、ノイズが大きすぎたりセリフが聞き取りづらかったりすると急に素人の作品に感じられ、見続けるのが苦痛になります。

撮影時にはカメラとは別のレコーダーを使うのが理想ですが、小規模な撮影で音声もカメラに同時録音する場合でもマイクは外部マイクを使うといいと思います。カメラの内臓マイクを使うとカメラ自体の動作音も拾ってしまう他、カメラの位置はたいていアクターからそれなりに離れているためセリフも聞き取りづらくなると思います。セリフの収録は適宜ブームマイクやワイヤレスのラベリアマイクを使う必要があります。ブームマイクはカメラのフレームに入らないギリギリまでアクターの顔に近づけ、ラベリアマイクは服と擦れるとノイズが発生しますので、ノイズが出にくく、しかもカメラから見えないような取り付け方を工夫する必要があります。

そこまでやってもそのままでは録音した音声に様々なノイズが含まれるので、編集時にノイズリダクションをしたり不要なノイズをカットしたりする必要があります。