ニューヨークフィルムアカデミー卒業後にアメリカで参加した映像プロジェクト『Rising Sun』を紹介します。
私と同じ時期にニューヨークフィルムアカデミーに在席していた日本人から紹介された仕事で、ドキュメンタリーの再現ドラマパートのためのVFXその他を制作しました。
▶︎この人は日本帰国後も精力的に映画制作を続けており、私も時々お手伝いしています。
▶︎お手伝いの様子はこちらの投稿をご覧ください。
ストーリー上では雪の残る荒野を主要登場人物達が歩き、その殺風景な様子にがくぜんとするシーンですが、雪などない状態で撮影してしまったフッテージ(映像素材)があり、そこにVFXで雪を足したいという依頼でした。
幸い大きなカメラワークがなかったため、撮影時の背景に合うように静止画のCGで雪の残る風景を作り、人物をロトスコープしてカメラの動きをトラッキングして合成しました。
元の映像VFXによる合成後
元の映像
VFXによる合成後
元の映像VFXによる合成後ロトスコープとは、映像中の人物の背景を差し替える場合などに、1秒あたり通常24フレームとか30フレームでできている映像のフレームごとや数フレームごとに人物部分を囲ってマスクを描き、背景と分離させた人物部分をあとで別の背景に合成できるようにするものです。デジタルであるもののかなりアナログな合成方法で、地味で手間がかかる作業です。
実写映像をトレースしてアニメーションを制作する場合もロトスコープと言うようです。
トラッキングとは、映像撮影時にカメラが動いていたり逆に被写体が動いている場合に、合成するものをその動きに合わせることができるように動きを検出することです。基本的にはソフトウエアの機能で自動的にできますが、使うツールややり方によって結果の精度が変わるため、多少の試行錯誤が必要になります。
このプロジェクトでは他にも、登場人物の国をまたぐ移動を表現するために、地図上を線が伸びていくアニメーションも制作し、特に背景合成のVFXは評判が良かったのですが、残念ながらこのドキュメンタリーのプロジェクトはスポンサーの都合で中止となり、公開されていません。