かなり前の動画ですが2018年12月21日に投稿された、VTuber富士葵によるカバー曲「月光」の感想を書こうと思います。
富士葵は2017年12月8日に投稿を始め、歌に比重を置きつつも、バラエティテイストのちょっと変わった食レポなど、様々な企画の動画も多く投稿しているVTuberです。チャンネルには謎動画のカテゴリーも設けられています。
富士葵YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC3Ruo_5doyu514PesWGvCAg
手作り感覚の企画が多く、古き良きユーチューバーを感じさせます。よく笑い、しっかり者だけれどやや天然なボケ風味が魅力となっています。
デビュー時は素朴なデザインのアバターでしたが、その後クラウドファンディングにより刷新されました。さらに新衣装発表時には衣装だけでなく髪の表現などもやや更新され、その後はいくつかのデザイン(衣装)を使い分けているようです。
富士葵は歌唱力の高いVTuberのひとりで、歌のお姉さん的な古風で正統派の歌唱を特徴としています。
特に高いキーで歌い上げる歌唱は圧倒的です。声に伸びと響きと音程の安定感もあり、声そのものに表現力があるため、楽曲と一体になったような歌よりも、余計なエディットはせずにアカペラに近い状態で聞きたい歌い手です。
歌のお姉さん的と書きましたが、実際、「あおい’sきっず」という子供向けのYoutubeチャンネルも持っており、ドレミの歌などがアップされています。ただしここ2年ほどは全く更新されておらず、「遺棄しているというより今はやっていない」、とメインチャンネルの動画内で発言しています。
富士葵は歌唱力が高い反面、得意ではないことも顕著で、コミカルな企画ものの動画の一環で、「謎ダンス」あるいは「クソダサダンス」と命名されたダンス動画などもアップしています。
かなり前の動画内で半ば自虐的?に「100点満点の歌声から繰り出される60点ぐらいのダンス」「歌唱力の為に画力とダンスのセンスを犠牲にした」「ハイクオリティなカオス」などの評判コメントを紹介しています。
見返してやる、と言って披露しているダンスがまたコミカルなのが面白かったです。
その後も時々ダンスをネタにした動画を投稿しています。
さて、「月光」はシンガーソングライター鬼束ちひろさんの作詞・作曲・歌によるセカンドシングルで、推理ミステリーコメディドラマ「Trick」(2000)のエンディング主題歌になりヒットした、彼女の代表曲の一つです。
ピアノから始まるしっとりした曲調と彼女のややハスキーな声がマッチし、コミカルでミステリー調のドラマの内容といいバランスになっていました。
ただし絶望感の表現された歌詞の内容はドラマと直接的には関連がないように見えます。
I am God’s child
この腐敗した世界に堕とされた
How do I live on such a field?
こんなもののために生まれたんじゃない
という部分が繰り返される歌詞は、ことばの断片をそのままとらえると「神の子として生きづらい世界に生まれたが、何のためにこんなところに生まれたのか」という内容だと思います。
歌詞の中に月は出てこないため、この歌のタイトルがなぜ「月光」なのか解釈は難しいですが、夜、月を見ながら「自分は何のためにこんなところに生まれたのか、何のために生きているのか」と思っているという、時間とシチュエーションを表しているのかもしれません。
比較的ゆったりした曲調で歌のキーが高いため、富士葵の歌唱力が活きる曲だと思います。伸びやかで透き通った声が印象的です。
彼女のカバー曲動画ランキングの上位にあるようです。
2020年12月8日に投稿された3周年記念動画中で紹介された視聴者からのツイッターアンケートによる「好きなカバー動画」ランキングでは114動画(富士葵調べ)中「月光」は3位、2022年9月24日現在、彼女のYoutubeチャンネルの再生リストの「全カバー動画(人気順)」を見ると、表示されている139動画中7位となっています。
一般的に、他の人の曲をカバーして歌う場合カバーの域を出ていないと感じることが多いですが、この曲と富士葵の歌唱は相性がよく、オリジナルとは違った魅力があります。
富士葵の中の人は少なくとも「月光」をリアルタイムで聞いていた年代ではないと思いますが、新旧問わずいい曲が聞かれ、歌われ続けるのはネット時代の特徴かもしれません。
星の夜空に月が大きく表現されたイラストを背景にアニメ調の富士葵が歌う様子が基本で、動きの少ないシンプルな動画です。
夜空の手前、彼女のバックに最初は木のシルエットが見えており、窓の格子がオーバーラップしたと思うと木が消え、窓に明かりの灯ったビルのシルエットになります。
その後は時々窓の格子をはさみながら、がれきのようなもののシルエットや、崎(岬)の上で遠吠えをするオオカミ(コヨーテ?)とその横で歌う彼女のシルエットなどが現れます。
月は曲の最初では細く欠けた状態から、少しずつ満ちて丸くなっていきます。