VTuber(バーチャルYoutuber)宝鐘マリン(ほうしょうまりん)の、2021年8月11日に投稿されたオリジナル曲「Unison」が面白いと思いましたので、当ブログサイトのテーマとやや離れますが、楽曲、歌詞の内容、MVなどについて感じたことを書きたいと思います。
宝鐘マリンYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCCzUftO8KOVkV4wQG1vkUvg
宝鐘マリンはバーチャルYouTuberグループであるホロライブの3期生で、「海賊になって宝を探すのが夢」という設定のタレントで、歌がうまく、イラストもうまく、芸人的なセンスも光るタレントです。コミュニケーション能力が高く、テンポのよい会話も特徴となっています。
カバー株式会社の運営するVTuber事務所であるホロライブプロダクションの、女性バーチャルYouTuberグループのホロライブには、生身のアイドルグループのように〇〇期生としてそれぞれ5人を基本単位(ホロライブインドネシアは3人ずつ)とする複数のバーチャルYouTuberが所属して活動しています。
“Unison”は宝鐘マリンのデビュー2周年にあたる2021年8月11日に投稿されたオリジナル曲です。
作詞・作曲/Yunomiとなっています。
“Unison”の楽曲は、リッチー・ホウティンやジェフ・ミルズなどの楽曲に代表されるミニマルテクノ(1990年代に生まれたテクノのサブジャンル)に分類されるのではないかと思います。
ミニマルテクノは、反復を多用し大きな展開が少ない曲調で、私は音楽を聞くときメロディをうっとおしく感じることもあるため好きなジャンルの一つです。
ただ、ひとくちにミニマルテクノと言っても様々な曲調があり、リッチー・ホウティンとジェフ・ミルズの曲の印象も異なります。”Unison”の4つ打ちキックの乾いた曲調はむしろケンイシイのテクノ曲「エクストラ」(音楽1995年、MV1996年)を思い出させる印象で、さらに音色の選び方やシーケンスパターンやミックスのためだと思いますが、より解像感が高いというかクリアで現代風になっています。
ケンイシイはミニマルテクノの例とされることはないように見えますが、2019年にリリースした曲でジェフ・ミルズとコラボしています。
“Unison”は、リズム要素のそれぞれの音が異なるシーケンスパターンを持ち、左右のセンターや右寄り左寄りなど様々な場所に置かれているため複雑な印象になっていて、4つ打ちキックがそれらをまとめています。ベース音として入れているのか1つの音として入れているのかわかりませんが低音のシーケンスパターンもユニークです。
また、歌詞に合わせて水(泡)の音が使われていたり最後には波の音も使われているほか、低音の効果音やASMR的なささやきや吐息なども入り、遊び心あるミックスとなっています。水(泡)の音のバックのリズムトラックがスカスカになる部分が面白いです。
トレンドはわかりませんが、アイドルやタレントの歌としては、こういった曲調は比較的珍しいのではないかと思います。
“Unison”は楽曲はミニマルテクノ調なのですが、その上にアニメソングのような印象の歌が乗り、それがこの曲を特徴的にしています。
「アニメソングのような印象」はおそらく声の質と歌詞の内容、それから後半の歌によるところが大きく、実のところ出だしは韻を踏みつつラップ調となっています。ラップ調の歌がサビをはさんで後半になるにつれてメロディー感を増して盛り上がっていきます。
曲名はユニゾンですが、サビのハーモニーがいいです。歌のハモりとリズムトラックの掛け合わせがいい効果を出しています。
一見シンプルですが、リズム感や音感とともに練習が必要とされる歌だと思います。
「海賊船を買って海賊になり、宝を探すのが夢」という設定の宝鐘マリンにちなんだ内容の、航海がテーマとなった歌詞です。
断片的な歌詞の内容を理解すると、船の進水式で赤ワインのビンが割れずに海に落ちたり、船長を決めていなかったので多数決で決めようとするもみんな自分に投票してしまうといった出だしで、現代的でかっこいい曲に対して、コメディタッチのほんわかした内容が歌われます。このバランスもこの楽曲を魅力的にしていると思います。
ちなみに現代の進水式では通常シャンパンが使われますが、昔は赤ワインが使われた歴史もあるようです。
宝鐘マリンは普段自分のことを「船長」と呼びますが、この歌詞のストーリー中では仲間と一緒に出航はしたものの、必ずしも自分が船長ではない、ということかもしれません。
歌詞中、主人公はサイレンスという人物に自分を選んでとお願いします。サイレンスが何者かは明確には説明されません。ミスターサイレンスとも言っているので、男性であることがわかります。
その後船は座礁してしまい、(おそらくサイレンスに)修理をお願いします。
人生がしばしば航海に例えられるように、この曲は航海を扱った歌詞の内容ですが恋愛のメタファーかもしれませんね。歌詞の中に「熱中して!」という表現もあります。「最後の航海」と表現されているのが気になるところです。
アニメやイラストを使った”Unison”のMVは、本人が歌っている様子や、歌詞の内容に合わせた要素も盛り込みつつも、基本的には歌詞とは関係なく宝鐘マリンのアニメ調キャラクターイラストを曲に合わせて構成しています。
サビのハーモニーの部分も、それぞれ別の衣装を着た複数の宝鐘マリンが、重なっているところから左右に分かれ、歌詞ではなく曲に沿った内容となっています。
船が深海に沈んでしまうよと歌う部分も、泡のイメージが使われる前にパソコンのエラー画面などの複数の画像をランダムに構成しています。
MVの最初と最後は、目を開けたり閉じたりする誰かの一人称視点となっており、それがミスターサイレンスなのかは明確には表現されていないと思いますが、その視線の先に宝鐘マリンがいます。船が座礁してしまい、島に二人で流れ着いたということのようにも見えます。それは同時にまた、恋愛の暗喩なのかもしれません。
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