iPhoneで撮影された映画「アンセイン」(Unsane)

iPhoneで撮影された映画「アンセイン」(Unsane)

ここでは映画「アンセイン」(Unsane)とその撮影について紹介します。

アンセイン ~狂気の真実~(Unsane)(2018)
監督:スティーブン ソダーバーグ
ジャンル:サイコロジカルスリラー

アンセイン ~狂気の真実~ Prime Video

ストーリー

ストーカー被害の精神的後遺症を持つ女が、カウンセリングの後自分の意思とは関係なく精神病院に入院させられてしまいそのストーカーが職員として現れ、精神的極限状態の中なんとか脱出しようとする。

撮影

3台のiPhone 7 Plusで撮影されており、被写界深度(ピントの合う範囲)が深く背景も比較的クリアに見えているため、背景をぼかして表現するようなしっとりした空気感は感じられません。iPhone 7 Plusには被写界深度エフェクト(ポートレートモード)がありますが、「アンセイン」ではこの独特の乾いた見た目がストーリーに合っていると思います。

レンズ

Momentというメーカーのスマホ用交換式レンズ(18mm、60mm、魚眼レンズ)が使われており、広角で手前の人物やグラスなどをカメラ近くにおいて背景との前後感を強調する独特のアングルが見られます。

MOMENTウエブサイト
https://www.shopmoment.com/

カメラワーク

iPhoneは直接手持ちではなくジンバル(カメラを取り付け、撮影時のブレを抑える道具)又は三脚を使い、ドリーショットはジンバルを持ったまま車椅子のような車輪付き椅子に座って撮影したようです。後処理でスタビライズもしているかもしれませんが、かなり滑らかなショットになっています。

ドリーショットとはカメラが被写体に近づいたり遠ざかったり動く被写体を追う撮影、及びそうやって撮影された映像のことで、スタビライズとは映像のブレを補正する撮影時の機能又は後処理のことです。

また、前景に木の葉を配置して前後感を出すことによって、見た目が単調にならないようにすると同時に、主人公が陰から見られているような雰囲気が(実際にストーキングされているシーンではなくても)醸し出されています。

通常のカメラを使う撮影と同様のカメラワークをすることで、観客としてはドラマに意識が向くため、iPhoneで撮影したと知らなければ分からないと思います。独特の乾いた空気感も演出だと感じると思います。

一方、iPhoneを役者の身体に固定して役者がiPhoneを持たずに動きながら演じながら自撮り撮影をしたり、ロケーションの状況によっては大きなカメラでは撮影が困難と思われるような真フカンや真下からのアングルを使うなどの手法によって、iPhoneを用いることをドラマの演出に結びつけているように思います。

音声収録

一つ注意を向ける必要があるのは、撮影はiPhoneが使われていますが、セリフの録音には通常の映画撮影同様ブームマイクが使われていることです。これは棒の先にマイクをつけ、カメラに映らないように役者の口に近い場所にマイクをホールドして録音するものです。映画撮影では一般的で、音声をなるべくクリアに収録する上で重要です。映像が素晴らしくても、セリフが聞き取りづらかったり不要なノイズが多いなど音声が低品質だと、途端に素人っぽく感じられ見るのが苦痛になります。

監督

スティーブン ソダーバーグはアメリカの映画監督・脚本家・プロデューサーで、「セックスと嘘とビデオテープ」「トラフィック」「オーシャンズ」シリーズ、「ソラリス」「チェ」2部作ほか多数の映画を監督しています。未知のウイルスのパンデミックを描いた映画「コンテイジョン」(2011)も監督しています。

出典・リファレンス
https://youtu.be/FGgtHMqmNSM
https://www.imdb.com/title/tt7153766/technical?ref_=tt_dt_spec
https://www.inverse.com/article/42571-unsane-steven-soderbergh-shot-with-iphone-7-plus
https://support.apple.com/ja-jp/HT208118

 

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