サンフランシスコは景観的にも文化的にも多様かつ魅力的な都市で、多くの映画で舞台となっています。
景観としては、急な坂道、新旧スタイルの建物、ケーブルカー、路面電車、ゴールデン・ゲート・ブリッジ、霧など、様々な特徴・見どころがあり、非常に多くの映画で描かれています。また、様々な民族的バックグラウンドを持つ人がいて文化的にも多様で、それらが感じられる作品もあります。
網羅はできていないと思いますが、サンフランシスコが舞台になった映画をリストアップし、いくつか見たものについて簡単な説明を記載しました。(説明を記載した映画は以下のリストの1996年以降に集中しています)
リストの全てを見たわけではなく、認識が間違っているものもあるかもしれません。
サンフランシスコがメインの舞台となっている映画だけではなくサブ的な舞台として使われている映画を含みます。また、ストーリー上はサンフランシスコが舞台となっていても、実際のロケーションは異なる場合もあるかもしれません。
▶︎下記のリストのうち、説明を記載した映画について、ストーリー概要を含む解説はこちらの投稿をご覧ください。
「桑港」の原題は「San Francisco」です。漢字の「桑港」は「サンフランシスコ」と読むとのことです。
サンフランシスコをタイトルとし、サンフランシスコを舞台とした映画ですが、ゴールデンゲートブリッジやケーブルカーを連想する現在のサンフランシスコのイメージはありません。
それもそのはず、ゴールデンゲートブリッジの建設は1933-1937年とのことで、映画の舞台は1905年の大晦日から始まりますので、まだゴールデンゲートブリッジがなかった頃のサンフランシスコです。
ケーブルカーは1873年開業とのことですのですでに存在していますが、映画中ではケーブルカーか路面電車か不明確なものが一瞬見える程度です。映画冒頭でフェリービルディングの時計塔を想起する時計が映されますが、当時の写真を調べてみると、デザインが異なります。
映画が1905年の年末から始まるのには理由があります。1906年4月にサンフランシスコで大地震があり、この映画でも最後の方でストーリー上の大きな転換点になっています。
長く強い揺れによって建物が崩れた上に、消火栓が壊れて消火できず火災が広範囲に及んでしまったため建物を爆破していきます。
登場人物達の愛情やアイデンティティのストーリーとは関係なく起きた自然災害ですが、それ以前にはどうしようもなくもつれていた関係性が、積み上げてきたものと一緒に一度リセットされてしまいます。
その後復興させたのが現在のサンフランシスコだと思いますので、ここで描かれているのは、破壊と復興の前の我々の知らないサンフランシスコです。
最後、破壊されたサンフランシスコの街の風景から遷移して、現代に通じるサンフランシスコの街並みの風景が1カットだけ印象的に映されます。
映画が公開された1936年は、ゴールデンゲートブリッジの建設が佳境に入ったころではないかと思います。この映画に「San Francisco」というタイトルがついているのは、破壊と復興の前の当時の「サンフランシスコらしさ」も表現されているのかもしれませんが、登場人物達の気持ちや生活がリセットされる様子が、新しく生まれ変わるサンフランシスコの「時代の気分」にかかっているように思います。
時間や日々のルーティーンに厳しいイギリス紳士と、最近彼に召使いとして雇われたお調子者で女好きだが主人に忠実な男が、80日間の世界一周の旅に出る話です。
異国情緒たっぷりな世界中のそれぞれの場所を、登場人物達と一緒に旅をしているように楽しむことができます。
サンフランシスコにも立ち寄るのですが、少なくとも現在イメージするサンフランシスコらしさはほとんど描かれません。馬に引かれたケーブルカー風の乗り物が出てきますが、史実にもとづいているのか作られたイメージなのかわかりません。
この場所ではあまり歓迎されず馴染めず、コミカルな要素はあるもののこの楽しい映画の中では残念ながら唯一と言っていいほど、楽しい場所としては描かれていません。ロケによるリアルな異国情緒とアドベンチャーとコミカルさが魅力のこの映画にあって、それらの魅力が希薄です。
アメリカの映画のため、他の国を描くようには思い入れを持って描けなかったのかもしれません。
映画自体は気軽に楽しめるおすすめの映画です。
ユニオンスクエアのそばをケーブルカーが走る昔のサンフランシスコ市街地の様子が見られます。映画の公開は1963年で、その同時代の設定で描かれていると思います。
ただしその古いサンフランシスコ市街地の様子が描かれるのは冒頭のみで、ストーリーのほとんどはサンフランシスコ郊外のボデガ・ベイが舞台です。海沿いの道やこじんまりした港町など一般的なサンフランシスコ市街地のイメージとは異なるこれらの素朴な風景は、Google Mapで見ると、今もこの映画の公開された1963年とあまり変わっていないように見えます。
▶︎ユニオンスクエアについてはこちらの投稿をご覧ください。
▶︎ケーブルカーについてはこちらの投稿をごらんください。
冒頭、主人公の乗ったヘリコプターが、ゴールデンゲートブリッジ上空からフィッシャーマンズワーフそばのアクアティック湾を囲む現在のサンフランシスコ海事国立史跡公園(1988年設立)を通り、サンフランシスコの上空を飛びます。
舞台となった超高層ビルは架空のビルです。外観は実在のビルとマットペインティングによって表現されたようです。
ビルエントランスの外観はバンク・オブ・アメリカのビルが使われており、壁を伝うエレベーターが特徴的な屋内ロビーはハイアット リージェンシー ホテルが使われています。
坂道の多いサンフランシスコの街もロケーションとして使われており、電気工事を担当したビル社長の娘婿の住む家は、ベイカー・ストリート(Baker St.)とバレイヨ・ストリート(Vallejo St.)の角にある家がロケーションとして使われています。
▶︎ゴールデンゲートブリッジについてはこちらの投稿をご覧ください。
世界の様々な場所が出てきますが、映画の中盤ではサンフランシスコが舞台になっています。ゴールデンゲートブリッジのカットや、主人公達の乗る車が坂道を走るカットもあります。
ビル街も出てくるのですが、これは想像上のサンフランシスコのように見えます。「ヒューズビル」「USAビル」「SSホテル」「JRタワー」などのビルの名前がワイヤーフレームの画像や夜景のショットと共に出てきますが、それらはサンフランシスコには実在しないと思います。
サンフランシスコでのエピソードが行われる場所がサンフランシスコである必然性はストーリー上特になく、世界のあちこちが舞台になっているということを表現する一環でサンフランシスコが選ばれたのだろうと思います。おそらく現地でのリサーチロケはしておらず、写真を参考にある程度サンフランシスコらしさを出しつつ架空のサンフランシスコを描いているように感じます。
サンフランシスコが舞台です。ハイアングルの住宅街の風景の向こうにアルカトラズ島が見えるショット、ゴールデンゲートブリッジ越しにサンフランシスコの街並みが見えるショットなどがあり、サンフランシスコらしさを感じます。建物のロケーションの多くもサンフランシスコのようです。
キャサリン・トラメルの海沿いの別荘は、ストーリー中ではゴールデンゲートブリッジを挟んでサンフランシスコの対岸のエリアにあるように描かれていますが(別荘から車で帰るシーンで、ゴールデンゲートブリッジ越しにサンフランシスコの街並みが見えるショットがあるため)、実際のロケーションはサンフランシスコより南側のカーメルにあります。
ゴールデンゲートブリッジ越しのサンフランシスコ、サンフランシスコの街の様子やアルカトラズ島の空撮ほか島内の様子が描かれます。島内シーンの撮影は実際のアルカトラズ刑務所跡も使われているようです。
ケーブルカーがカーチェイスに巻き込まれてクラッシュするシーンがあります。実際の撮影ではバスが使われたようです。よく見るとタイヤが見えます。
▶︎アルカトラズ島についてはこちらの投稿をご覧ください。
▶︎ケーブルカーについてはこちらの投稿をごらんください。
サンフランシスコが舞台です。
坂道などサンフランシスコの街の様子やチャイナタウンと思われるシーン、ベイブリッジのそばと思われるシーンもありますが、全般的に夜のシーンが多く、あまりサンフランシスコらしさは表現されません。昼間のシーンも、主人公の孤独な人生やスリラー調のストーリーの雰囲気を現すように、冷たい(低い彩度で暗い)色調に描かれています。
主人公の住む邸宅の住所はブロードウェイ20-2-10と表現されます。サンフランシスコにブロードウェイという通りはありますが、架空の住所だと思います。
アルカトラズの全景の空撮や、中の様子も描かれています。ただし、実際にはドイツのスタジオで撮影されたようです。
プレシディオ緑地とテロップが入るシーンもあります。プレシディオはサンフランシスコのかつての軍駐屯地だった場所で、公園エリアです。
ゴールデンゲートブリッジ越しの薄暗いサンフランシスコ、サンフランシスコの夜景、朝焼けのゴールデンゲートブリッジの早送りなども映されます。
物語の前半で世界の様々な場所が出るほかは基本的に地球内部のシーンですが、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジのシーンもあります。地球の電磁場に穴があき、太陽風がゴールデンゲートブリッジを熱して破壊したあとサンフランシスコの街を襲います。サンフランシスコの破壊された街の様子はニュース番組の断片的な映像のみです。
▶︎ゴールデンゲートブリッジについてはこちらの投稿をご覧ください。
サンフランシスコ周辺の都市のシーンも含みつつ、サンフランシスコがメインの舞台です。1969年からのストーリーで、その当時のサンフランシスコの街や車、オフィスの様子が再現されていると思います。サンフランシスコ・クロニクルという実在する新聞社のシーンが多く登場します。
冒頭近くに、ドローン映像のようなカメラワークで、海(サンフランシスコ湾)からフェリービルディングに近づくショットがあります。
細長いピラミッド型の高層ビル、トランスアメリカ・ピラミッドの建築の様子の印象的なタイムラプス映像が使われています。
その他、ゴールデンゲートブリッジを真上から見る挿入ショットもあります。
▶︎フェリービルディングについてはこちらの投稿をご覧ください。
▶︎トランスアメリカ・ピラミッドを含む、サンフランシスコの建物についてはこちらの投稿をご覧ください。
カリフォルニアをかわきりに世界各国の様子が描かれますが、異変が始まった様子の一つとして、サンフランシスコの様子も描かれます。ベイブリッジ越しのサンフランシスコの空撮でビル群の中にフェリービルディングが見えたあと、人々が乗船中のフェリーが傾く様子が描かれます。
▶︎フェリービルディングについてはこちらの投稿をご覧ください。
サンフランシスコがメインの舞台です。
高い知能を持った子猿シーザーが、育て親の人間の研究員に連れられて、ゴールデンゲートブリッジを渡ってミュアウッズ国定公園へ行きます。ミュアウッズ国定公園はサンフランシスコ市外ですが、木の上から霧に埋もれたゴールデンゲートブリッジやサンフランシスコの街を見るシーンがあります。
そのシーザーが後半、猿達を先導して施設から逃げ出し、ツイン・ピークスからサンフランシスコの中心街を望み、その後市街地で暴れまわる様子も描かれます。そしてケーブルカーに乗り込み、ゴールデンゲートブリッジを渡って警官たちを倒し、シーザーが子供の頃から連れて行ってもらっていたミュアウッズ国定公園へ行く様子も描かれます。
実際にはツイン・ピークスからゴールデンゲートブリッジに行くにはサンフランシスコ市街地を経由すると遠回りなのですが、そこはストーリー上の都合だろうと思います。
▶︎ツイン・ピークスについてはこちらの投稿をご覧ください。
▶︎ケーブルカーについてはこちらの投稿をごらんください。
▶︎ゴールデンゲートブリッジについてはこちらの投稿をご覧ください。
西暦2259年のサンフランシスコに宇宙艦隊本部がある設定で時々街が見えますが、かなり未来的な都市にデザインされています。現代の実際のサンフランシスコの面影は、未来的ビル群の向こうにゴールデンゲートブリッジが見えることや、アルカトラズ島と思われる島、サンフランシスコ港からフェリービルディングが見える程度です。
フィリピン、日本、ハワイ、ラスベガスなど様々な場所が描かれますが、サンフランシスコも舞台となっています。
青年が14ヶ月ぶりにサンフランシスコの家に帰るシーンがありますが、テロップによってサンフランシスコとわかる程度で、特にサンフランシスコの特徴は描かれません。
後半にもサンフランシスコから人々が避難するシーンはありますが、避難のバスや車がゴールデンゲートブリッジで渋滞する様子が描かれるほかは特にサンフランシスコの特徴は描かれません。
ゴジラとムートーが戦い、街が破壊されますが、サンフランシスコのシーンは概ね夜で昼間のシーンも暗い青灰色のため、サンフランシスコらしさはあまり表現されていません。吊るされている提灯や瓦屋根の門によってチャイナタウンであることがわかる程度です。
▶︎サンフランシスコのチャイナタウンについてはこちらの投稿をご覧ください。
ロサンゼルスやサンフランシスコが舞台となっています。サンフランシスコの街やゴールデンゲートブリッジが出てきます。
ロサンゼルスとサンフランシスコが舞台となっており、サンフランシスコの空撮や街の様子も描かれます。建物のなかのシーンもありますが、実際のロケーションは不明です。大地震による、サンフランシスコの都市の崩壊やサンフランシスコを襲う巨大津波が描かれます。
ビルの間にゴールデンゲートブリッジが見えるシーンがありますが、実際には市街地のビル群とゴールデンゲートブリッジは離れており、そういう場所が存在するか不明です。イメージで合成したのではないかとも思いますが、単に私が知らないだけかもしれません。
CGアニメ映画です。メインとなる舞台は少女の頭の中ですが、少女の引越し先として、サンフランシスコは薄汚れて暗い都会で、アパートは狭く描かれています。
転送先はサンフランシスコです。サンフランシスコらしさは特に表現されませんが、ストーリー上、ゴールデンゲートブリッジを渡った先の丘に武器格納庫がある設定で、その周辺の風景が映されます。ゴールデンゲートブリッジでスクールバスを使ったアクションシーンがあります。
▶︎ゴールデンゲートブリッジについてはこちらの投稿をご覧ください。
主要な舞台はニューヨークですが、出張先としてサンフランシスコが出てきます。ゴールデンゲートブリッジの空撮の美しいアングルが見られます。
▶︎ゴールデンゲートブリッジについてはこちらの投稿をご覧ください。
夕焼けのゴールデンゲートブリッジ、坂道を登るケーブルカー、特徴的な建物などサンフランシスコの様子が描かれます。
フィルモア地区のジャズクラブのシーンがあるほか、地区の開発やそのために立ち退かされることに反対する黒人達のデモも描かれます。
フィルモアストリートはジャパンタウンに近く、このエリアは黒人が多く住み1950年代にはジャズが非常に盛んな地域だったようです。
ゴールデンゲートブリッジの対岸の丘に、架空の研究施設が作られています。また、坂の多いサンフランシスコでバイクに乗ったチェイスもします。
坂道などサンフランシスコの街の様子やアパートから見える街などが描かれています。このアパート自体はフィクション(架空の建物)のようですが、ロケーションとして使われた道からアパートに上がる木の階段は、実際にロシアンヒルのテイラー・ストリートにあります。劇中ではBarbary Laneという名称ですが、実際はMacondray Laneという名称です。
このlane(レーン)は日本でも使われる単語ですが、ここでは路地や小道の意味だと思います。家々の裏に実際に小道があります。
ロシアンヒルはその名の通り丘になっていて、Macondray Laneのあたりからは眺めがよく、コイトタワーなども見えます。
ストーリーとしては、自分の都合で夫や養女である娘を捨てて出ていき20数年ぶりに思いつきでかつてのコミュニティであるアパートにもどる主人公と、それを受け入れられないやはり自分の気持ちに正直な人々の話で、個人的にはどちらにも感情移入できず、1話しか見ていないのですが、LGBTのメッカともいえるサンフランシスコの一つの側面を見ることができると思います。