J・J・エイブラムスのプロデュースする映画『クローバーフィールド』シリーズのあらすじの紹介と感想を書こうと思います。これまでそれぞれ異なる切り口の映画リストの中の作品としてピックアップしていたものをまとめました。
『クローバーフィールド』シリーズはそれぞれ監督が異なり、舞台も登場人物も映画のテイストも異なりますが同じ世界観を共有して作られた映画です。
J・J・エイブラムスは、アメリカ出身の映画・ドラマのプロデューサー、監督、脚本家です。以下のような作品を手掛けています。私の独断と好みでピックアップしています。
映画
『アルマゲドン』(1998)脚本
『ミッション:インポッシブル3』(2006)脚本・監督
『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)プロデュース
『スター・トレック』(2009)監督・プロデュース
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)プロデュース
『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013)監督・プロデュース
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015)プロデュース
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)脚本・監督・プロデュース
『10 クローバーフィールド・レーン』(2016)プロデュース
『スター・トレック ビヨンド』(2016)プロデュース
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)製作総指揮
『クローバーフィールド・パラドックス』(2018)プロデュース
「ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)プロデュース
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)脚本・監督・プロデュース
テレビドラマ
『LOST』(2004−2010)製作総指揮・脚本・監督・音楽
『ウエストワールド』(2016-)製作総指揮
監督:マット・リーヴス
■ストーリー(あらすじ)
怪獣がニューヨークに出現して暴れまわり、昇進して日本へ行く前のサプライズパーティー中だった男とその知人たちが逃げ回る。
■特徴
ホームビデオの一人称視点で撮られた怪獣(巨大生物)のニューヨーク襲撃。
■映画の印象やVFXについて
パニックの中カメラを持ち続け撮影し続けているのはそもそも不自然なのですが、そこをツッコむのは野暮かもしれません。
物語上も、ホームビデオのカメラで撮影している人物が終始空気を読まず、自分の好奇心でカメラをまわし続け、人のプライバシーに踏み込み、他の人に言いふらし、逃げている最中も空気を読まない発言をしており、カメラの前の人のリアクションも含めてよく言えばある意味リアルですが、これは何らかのストーリーを楽しむ映画ではなく、あくまで、そのカメラを通して撮影された(という設定の)映像を体験する映画だと思います。
特筆すべきは、パニックの中ホームビデオで撮影されたという設定で作られているため全編に渡って手持ちカメラでほぼ手ブレしているのですが、崩れるビルや巨大生物などの背景や中盤出てくる小型のクリーチャーも、そのブレた映像に違和感なく合成されている点です。
通常、映画における都市の崩壊の表現は、空撮や遠景に崩れたビルが見えるショットが多いのですが、この映画では、実際に巨大生物が現れたニューヨークにいて体験したかのような映像として描かれています。
▶︎VFXで都市の破壊・崩壊が描かれた映画についてはこちらの投稿もご覧ください。
■プロモーション
自由の女神像の頭部が破壊されたショッキングなビジュアル、事件との関連を匂わせる架空の企業や環境保護団体のサイトを立ち上げたほか、YouTubeに架空のニュース映像を投稿するなど、謎めいたプロモーションで作品への好奇心を煽った、とのことです。(ウィキペディアより)
以下の動画もこれらのうちの一つのようです。
https://youtu.be/v5Lvl7FORI8?feature=shared
監督:ダン・トラクテンバーグ
■ストーリー(あらすじ)
運転していた車が交通事故を起こし見知らぬ地下シェルターで繋がれた状態で目覚めた女が、そこの住人の初老の男に、外は何者かに攻撃され有毒物質で汚染されているから出ては駄目だと言われるが疑問を抱き、なんとか逃げようとする。
■特徴
SFサスペンスの世界観で、地下シェルターでの「密室劇」
『クローバーフィールド/HAKAISHA』の通常の続編ではなく共通の世界観を持つ作品とのことです。前作ではマンハッタンの比較的広い範囲が舞台でしたが、今回は最初と最後に屋外のシーンがあるものの、ほぼ地下シェルター内での緊迫したやりとりが主体となっています。
SFサスペンスの世界観の中できっちり「密室劇」になっているのが見どころです。前作とストーリー上の直接のつながりはないようですが、日常の生活に前触れなく突然非日常の世界が持ち込まれ、パニックになる様子は共通していると思います。前作は動的なパニック、今作は静的なパニックです。
最後に共通する要素が出てきます。
▶︎密室劇・場面がほとんど変わらない映画についてはこちらの投稿もご覧ください。
監督:ジュリアス・オナー
■ストーリー(あらすじ)
エネルギーが枯渇する世界で、宇宙ステーションで新しいエネルギー装置の実験中に事故が起こり、奇妙でグロテスクなことが起き始め乗組員達が犠牲になる。
■特徴
宇宙ステーションを主な舞台としたSFホラー
宇宙ステーションで新しいエネルギー装置を起動し、成功したかに見えるものの爆発し重力異常も起きます。壁の中から叫び声が聞こえてこじ開けてみると、ケーブル類が絡まり刺さった見知らぬ女を発見し、助けますが、彼女はこのチームの一員だといいます。
前後して様々な奇妙なことが起き、パラレルワールドが交差したことを知ったあるクルーは、「これがパラドックスだ。多元的な2つの異なる現実が、同じ空間を奪い合う」と発言します。
パラレルワールドというと、同時に存在する別の可能性世界でお互いに見えないとか、別のパラレルワールドに「行く」という表現になることが多いかもしれませんが、ここでは「同じ空間を奪い合う」状態が描かれ、しかし、それをSF的に深堀りするよりも設定として使い、その影響で起きる事柄をSFホラー的な要素として描いています。
今作も最後に、他の『クローバーフィールド』シリーズとの共通点が描かれます。
▶︎パラレルワールドを扱った映画・ドラマ リストは、こちらの投稿をご覧ください。
同じ世界観を持つ複数の映画の展開はヒーローものや怪獣ものの映画で見られますが、『クローバーフィールド』シリーズがそれらと異なるのは、それぞれの直接的には接点のないストーリーがもっと大きなストーリーの一部であることをほのめかすように描かれている点です。
しかし今のところそれは明確なコンテンツ展開の手法としては行われておらず、ほのめかすに留まり、第一作の『クローバーフィールド/HAKAISHA』に併せて架空のニュース映像が投稿されたりしたのも映画のプロモーション目的に留まり、他の作品での「ほのめかし」との整合性は取られていないようにみえます。
映画のプロモーションで使われる動画投稿なども含めたメディアミックス作品として、徐々に事件の全体像が明らかになり、それぞれは関連性がないストーリーが実は一つの事件を発端としていることが明らかになっていく展開となれば面白いと思っています。