様々な国から来た人たちと一緒にプロジェクトを進めるのは、海外で映画制作をする魅力の一つです。映画留学であってもそれは変わりません。むしろ、有名映画監督でもないのに海外で様々な国から来た人たちと一緒に映画制作ができるのは、映画留学ならではです。
しかし、多様な性格の人と一緒にプロジェクトを進めるのはそれなりに心構えが必要だと思います。
語学留学も様々な国から来た人たちと毎日過ごしますが、基本的には先生の進行でテキストにそって椅子に座って授業を受けるだけですので、それぞれのクラスメートの性格などが自分に影響することはほとんどありませんが、一緒に映画を作るとなると学生映画であっても話は別です。むしろ学生映画の場合はプロフェッショナルではないクラスメート達と一緒に作るため、全てがビジネスライクにいくわけではありません。
映像制作は複数の人が関わりそれぞれの都合やエゴがぶつかりやすいため、それぞれの性格を理解しておく必要があります。日本にいても様々な性格の日本人がいますので、海外で様々な国籍のメンバーになってもさほど状況は変わりませんが、なんとなくそれぞれの国の性格の傾向はあるように思います。
白人系アメリカ人は、ここが自国であるせいかもしれませんが、リーダー気質というか物事を仕切ろうとする反面、比較的大ざっぱで、面倒なことはしない傾向があります。
授業が始まった初期に、撮影のためクラスメートを複数のグループに分ける際、アメリカ人クラスメートの一人が率先して仕切ってグループを決め、本人は自分のやりやすい人と組むようにしていたと思いますが、これでいいかとみんなにも確認し、こちらには別に異存はなくグループが決まりました。結果的に私はいいグループでした。
又、私は映画学校に入った後もまだ英語力が充分でなく通常のスピードで話す先生の説明を追いきれない場合もあり、そんな時には横から説明してくれることもありました。
別のアメリカ人クラスメートは、映画学校に入学する前にクリエイティブライティングを勉強したと言っており、私のプロジェクトで一緒のグループだった時などには、しばしば私の脚本の英語表現のチェックをしてもらい、私のアパートまで来て相談しながらブラッシュアップに協力してくれたこともありました。
一方、これは必ずしもアメリカ人に限ったことではないのですが、物事をはしょろうとする傾向があり、共同のプロジェクトでなるべく参加すべきことでも自分の都合優先で参加しないこともありました。
黒人のアメリカ人は優しく面倒見がいいと思います。一方、性格というよりアイデンティティの部分ですが、今も人種差別の歴史の影響を感じることがあります。
アメリカでは少なくとも表向きは人種差別をしてはいけない前提となって久しく、例えば子供向けアニメにも様々な人種が登場しており、それは実際の学校や身の周りの生活を反映していると同時に、番組制作上の教育的判断を表しているのだと思います。しかし、自分と違う者、よそから来た者を敬遠するメンタリティーはおそらく人間の根本的なもので、建前と本音の違いが存在する場合もあるのではないかと思います。
学校でも通常は、国籍も人種という面でも皆平等かつ対等で、それは別に無理してそう振る舞っているわけではなくごく自然にそうなっていると思いますが、ふとした時に、人種差別の影響を意識する場面に出会うことがあります。
NYFA(ニューヨークフィルムアカデミー)での2年間の最後の頃ですが、卒業後のキャリアに関することを考えるクラスがあり、ある時黒人の講師に対して黒人のクラスメートが、「黒人がこの業界で活躍していくことの難しさに不安があるがどう思うか」と質問をしました。たしかその時の答えは、黒人である自分もずっと仕事をしているし本人次第だ、というようなものだったと思いますが、黒人学生の質問から、そういった気持ちが黒人の中にあるということに改めて触れた事として印象に残っています。
中国人は日本人と似ている面も多いですが、比較的主張は強めだと感じます。又、信頼した人たちと家族的な付き合いをします。
家族的と言っても、皆一人で留学しているため家族ぐるみの付き合いがあるわけではありませんが、多くの中国人学生は、主要なプロジェクトの撮影の後などに、役者やクルーなど関わった人を誘って中国料理店で食事をするのが慣例のようになっていました。
様々な国から集まっていると、先の黒人の例以外にも、それぞれの国の歴史や政治状況を意識する場面があります。ある中国人クラスメートは、台湾人クラスメートと仲は良かったのですが、冗談で、台湾は中国だ、と言うこともありました。
台湾人も日本人と似ている面が多いですが、あまり自分を主張せず真面目だと思います。台湾人クラスメートは一人しかいませんでしたが、日本のアニメが好きな人で、卒業後日本に遊びにきました。
サウジアラビア人は情で動く傾向があり、同じサウジアラビア人同士など、同族、仲間で助け合います。それは学外でも同様で、ロサンゼルスエリアのサウジアラビア人同士が集まって食事しつつ時間を共にしたり、学生映画のロケーションとして自分の店を使わせるなど助けあっているように見えます。
サウジアラビア人クラスメートは何人かいましたが、皆温和で、色々と協力してくれました。日本のアニメが好きな人もいました。
性格的、感覚的に日本人と親和性が高いと思います。外見や言語を除けば日本人と驚くほど似ています。
インド人は、人によって違うのだろうと思いますが、私のクラスメートの若いインド人は、自己中心的な言動が多いと感じました。
しばしばインド人以外には分からない言葉を人に投げかけることがあり、かなり頻繁に使うため調べてみたら、相手を罵るようなかなり悪い言葉であることが分かりました。
また、本人が筋道を通して行うべきことをそうせずうまくいかなかった場合も、他人のせいにすることがしばしばありました。
しかし一方、インストラクターの一人はインド系アメリカ人ですが、対人能力が高く教えることに情熱を持って楽しんでいるようで、それがクラスにいい雰囲気をもたらしていました。
UAE人のクラスメートは、うろ覚えですがインド人の血が入っていると言っていたと記憶していますが、やはり、自己中心的な言動が多いと感じました。
私のプロジェクトで撮影場所の準備の一環で壁に複数の紙を貼る際に、貼る順番を伝えていなかったため貼り直す必要が出てしまい、それはこちらのミスなのですが、彼は貼替えの作業をボイコットしました。
逆に、彼に手伝いを頼まれて指定の日の指定の時間に指定の場所に行ったら誰もおらず、電話をしたら、予定を変更したことをこちらに伝えていなかったことがわかりました。
イタリア人は、人によって違いますが真面目さと女たらし?な部分が共存しているように感じました。あるイタリア人学生は学校では最も真面目な学生の一人でしたが、詮索しませんでしたが複数のガールフレンドがいるようでした。
上記のそれぞれの特徴を含め日本人にも様々な人がいますので結局のところ性格は人それぞれだろうとは思いますが、あえて国別に考えると、以上のような傾向があるように感じました。