発行された時期は異なりますが、共通点のあるマンガを紹介します。どちらも完璧ではない大人の登場人物と少女型のロボットの関係性が主軸となっています。それぞれ独特な味わいのあるマンガです。
著者:山田鐘人
上巻 2023年9月20日初版第1刷発行
下巻 2023年9月20日初版第1刷発行
隕石から感染が広まった病原体で人類がほぼ滅亡したあと、コミュ症でぼっちの博士と彼の作ったロボット少女が、生存者を探しながら暮らす
基本的には1ページごと概ね4〜6コマを単位として日々の断片が描かれています。エピソード間でストーリーが繋がっていくものや、複数ページにまたがるエピソードもあります。
少女ロボは頭についたパーツがかろうじてロボットっぽさを出しているほかは、人間同様普通に動き、しゃべり、夜はベッドで寝て、起きたら歯を磨きます。やや無表情ぎみですが、笑ったり驚いたりドヤ顔をしたりもします。
博士の言葉は基本的にはフキダシでは表現されず、読者は、少女ロボの「○○○○?」などと相手の言った内容を確認する表現を通して彼の発言を理解します。
ゆるいボケ・ツッコミの側面があり、また、少女ロボはしばしば博士を悪気なく罵りますが時々感謝の言葉をかけることもあり、親しい父娘のようでもあります。
若い頃からコミュ症で友達がいなかった博士にとって少女ロボは気持ちの拠り所になっており、彼女の「毎日が楽しい」「私は幸せですね」ということばを聞いて、彼は今自分が幸せであることに気づきます。
しかし、博士も病気に侵されており、少女ロボのためにも生存者探しに力が入ります。
悲しい結末をチラチラ感じながらもほのぼのとしたエピソードが続きますが、アメリカからのメッセージを受信して生存者の存在を知り、船を修理してニューヨークに向けて航海を始めます。
巻末のおまけページでアメリカに到着したことが示唆されますが、そこで物語(上・下巻の下巻)が終わりとなっています。
独特な味わいのあるマンガです。
著者:名島啓二
2013年3月15日第1刷発行
滅亡まであと数年のピタゴラ星から、観測隊のダメ隊長と無表情な少女型サポートメカが、20億光年先の地球が移住先としてふさわしいか調査をするため地球へ向けて旅をする
こちらは一話8ページが多いですが、ページ数が増減します。
少女型サポートメカ(ロボット)は頭についたパーツがかろうじてロボットっぽさを出しているほかは、人間同様普通に動き、しゃべります。彼女は宇宙船の舵輪を操作し、料理や掃除もします。
観測隊といっても隊長と少女ロボットの二人だけの旅で、熱血だがガサツで投げやりなダメ隊長と、性格に難があり無表情で時に攻撃的な少女ロボットが、日々ドタバタを繰り返しながら、旅の途中で様々な人やロボットに出会います。
船内のエピソードと船外のエピソードがあります。
船内では例えば、宇宙旅行中の事故で亡くなった人の幽霊が現れ、隊長には見えるが少女ロボットには見えないエピソードや、偏食が激しい隊長に、少女ロボットが野菜を食べさせようとするエピソードなどがあります。
船外では例えば、廃棄された宇宙船を探索したら元人間と主張する小型ロボットとひと悶着あったり、機械文明が発達していた星に立ち寄ったら崩壊していて警備ロボットと一戦交えるエピソードなどがあります。
少女ロボットは無表情で、堕落しがちな隊長のことを普段は冷静に罵りつつ、運動不足の隊長をけしかけて鬼ごっこをしたり、風呂に入っていない隊長を拘束してむりやり洗ったりします。一方彼に危険が迫ると即座にブーツに隠したナイフを持って反撃します。
こちらも独特な味わいのあるマンガです。
特に『ぼっち博士とロボット少女の絶望的ユートピア』の持つ味わいはマンガならではのものと感じ、また、少女ロボットが主要登場人物として出てくるストーリーは、日本的なもののように感じます。
マンガならでは
4〜6コマ単位のマンガの面白さを実写映像で表現するのは難しそうです。元の短いエピソード(ストーリー)をベースにして長い尺の動画にしてしまうと印象は変わると思いますし、短い尺でももちろん作れはすると思いますが、なかなかマンガで感じる味わいは出ないのではないかと思います。
私の知る範囲で共通点を感じる動画作品は、ディズニー・ジャパン製作の日本のフルCGアニメ『ファイアボール』シリーズです。
一話が2分の短い作品シリーズで、神殿のようなお屋敷で暮らすフリューゲル家のドロッセルお嬢様といういかにもロボットロボットしたデザインの少女ロボットと、大型で建築現場の重機のようなメカメカしい執事ロボットのテンポのよいボケ・ツッコミが中心となっています。
デザインを変えつついくつかのシリーズがあり、最初のシリーズは2008年、最近のシリーズは2020年にリリースされています。
日本的
日本には少なからず年少者を愛でるメンタリティがあり、年少の他者を愛でるだけでなく、自分の意識を年少者と同一化し、年少者としての自分を愛でたいと思うメンタリティも含まれているように感じます。
そのことと無関係ではないと思いますが、日本ではマンガやアニメの登場人物が設定年齢より若く描かれることが多いこと以前に、子供がターゲットの作品でなくても子供が主人公として描かれることが多いです。
私が知らないだけかもしれませんが、欧米の作品で子供が登場する場合は、冒険ものか、家族の中で守る対象として描かれることが多く、子供をターゲットとした作品を除くと子供が主人公の作品はあまり見当たりません。
当然、少女ロボットが主要登場人物の作品もほぼ見当たりません。
アメリカなどで大人の登場人物と少女ロボットの組み合わせの映像作品を作ると、おそらく日本とは違うテイストになりそうです。ホラーに寄せると『M3GANミーガン』 になり、いずれにしても家族ドラマになりそうな気がします。
▶︎『M3GANミーガン』についてはこちらの投稿をご覧ください。