視覚・聴覚障害者向け映画上映 バリアフリー版『サムライソードフィッシュ』『妻の電池切れ』

バリアフリー版『サムライソードフィッシュ』と『妻の電池切れ』

国際短編映画祭である「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2023」 (SSFF & ASIA 2023)のショートフィルム バリアフリー上映会として、洞内広樹さんの脚本・監督による『サムライソードフィッシュ』と八幡貴美さんの脚本・監督『妻の電池切れ』が上映され、見て来ました。

ショートフィルム バリアフリー上映会~ Cinema is Inclusive ~
https://shortshorts.org/2023/event/barrier-free/

それぞれSSFF & ASIAが東京都と製作したショートフィルムとのことで、東京が舞台となっています。MC(司会者)によると、SSFF & ASIAでバリアフリー版を手掛けるのは初めてとのことです。

上映後、監督の洞内広樹さんと八幡貴美さんがゲストとしてそれぞれ壇上に上がり、MCと簡単なトークがありました。このトーク部分では手話通訳、要約筆記がついていました。要約筆記はスクリーンに映されました。

バリアフリーの映画は、聴覚に障害がある人は、映像と字幕で見ることができ、視覚に障害がある人は、その場面を簡潔に説明する音声ガイド(ナレーション)を聞いて、場面を想像することができます。

私はこの、音声ガイドが映画の通常の音声に重ねられたバリアフリー版というものを初めて見ました。

バリアフリー上映の音声ガイド

音声ガイドは、各場面がどんな場面なのかを簡潔に説明します。

例えば、「木刀を高い位置で水平に構える」とか「四車線に面した通り 二人が数メートル離れて走っている」などのナレーションがセリフにかぶらない範囲で重ねられます。

他にも、回想やインサート(映像の挿入)や暗転が説明されたり、「荒々しい筆文字でタイトル○○」などタイトルの説明や、「全ての撮影は東京で行われました」などエンドロール中の記述の説明もあり、基本的に映画の最初から最後までの主要な内容が理解できるようになっています。

視覚に障害がなくても、目をつぶって見ることによって体験することができます。

音声ガイドはその場面を簡潔に表現し、冷たくならず、不必要に感情を乗せるわけでもなく、しかし時折微妙に場面の雰囲気を声に乗せており、さすがという印象です。

改めて認識する映像の持つ情報量

その一方で、限られた尺の中でその場面の様子のすべてを説明しきるのは不可能で、映像の持つ情報量は多いということも再認識させられました。

例えば、映像の持つ微妙な色合い、構図、場面(ロケーションや大道具)、置かれている物(小道具)や、役者の表情や仕草など、視覚では一瞬で見て把握し感じることができ、それが映画のトーンを作り、観客の感情に作用し、映画体験を作っています。

盲目のキャラクターが主人公の『サムライソードフィッシュ』

『サムライソードフィッシュ』はSFの要素を持っていますが主人公は盲目のキャラクターで、そこもうまく上映会の趣旨に合わせてありました。

それぞれの映画は上記リンクからたどり、通常版と音声ガイド版を見ることができます。